携帯によろしく 第十四章(10)

和樹が頼んだ焼き鳥とおでんを店員が持って来た時に、
ちょうど泰三の携帯が鳴ったのでした。

「もしもしー!?」
と泰三が言うと、
「すいませーん!?」
「今乗り換えの駅なので、あと15分ぐらいでそちらに行きますので!!?」
と言うたいらくんの声でした。

「少し前に和樹が来たから、ちょうどいいからさあー!?」
「じゃあー!?待ってるから!?」
「奥の座敷にいるから!?」
と泰三が言うと、
「すいませーん!?電車が来たので!!?」
と言って電話が切れたのです。
すると泰三は、携帯をたたみポケットにしまったのでした。

「今こっちに向かってるってえー!?」
「15分ぐらいかかるってさあー!??」
と泰三がみんなに向かって言ったのでした。

「忙しいんですねえー!?たいらくん?!」
と和樹が一口ビールを飲み終え言うと、
「一旦、会社に車を返さなけりゃならないから!?」
「その分遅くなるんだよー!?」
と一平が言ったのです。

「飲酒運転はまずいっすもんねえー!??」
「会社の車だしー!!?」
と和樹は言ってすぐ、
「もちろん!自分の車でも飲酒運転は絶対ダメでーす!!?」
とあわてて付け加えて言った和樹でした。

「今!突っ込まれると思ったんだろう!??」
と泰三がうれしそうに言うと、
「わかりましたあー!?」
「酒の肴(さかな)にされないように!!?」
と言って笑ってごまかした和樹でした。

「受付の女の子たちはもう帰ったんですねっ!」
と和樹が言うと、
「とっくに帰ったよー!?」
「お前が来るって言ったら!?」
「すぐに帰ったぞー!?」
「何かしたんじゃあー!?ないのかあー!??」
と結構赤い顔をして泰三が、ものすごくうれしそうに言ったのです。

「デートに誘ったことがあるんですよー!?」
と和樹が言うと、
「どっちだあー!??」
とうれしそうに一平が訊いたのでした。

「両方誘ったんですよー!?」
「同じ日じゃないけどー!?」
と和樹が答えると、
「バッカだなあー!?」
「片方に断られて!すぐもう片方を誘えば!?」
「断られるに決まってるじゃんかよー!?」
「あのふたり!”つうつう”なんだから!?」
と泰三が言ったのです。

「”つうつう”ってえー??!」
と和樹が言うと、
「ひとりに言えば!?」
「すぐそのことがもうひとりにも話が通じてるってこと!」
と一平が言ったのでした。

「やっぱーせんぱいは!いろいろよく知ってるんですねえー!?」
と感心したように和樹が言うと、
「ちょっと知らないこと多過(おおす)ぎますよー!?」
「山田さん!!?」
と思わず絵里が言ったのでした。

「絵里ちゃん!言ってやって!言ってやってえー!?」
「遠慮せずに!!?」
と、うれしそうに泰三が言ったのです。そして、
「俺もさあー!?」
「こういう部下を持って幸せだよー!?」
と言ってすぐ、
「違う違う!!」
「不幸(ふしあわ)せだよー!?」
と、笑いながら言った泰三でした。

みんなで楽しく話をしながら飲んでいると、
しばらくして店の主人が大きな声で、
「泰三さん!?すいませんが相席(あいせき)お願いしまーす!!?」
と言ったのです。
「いいですよー!?」
と泰三は答えると、
「かずきー!?相席だってからあー!?」
と和樹に向かって言ったのです。

すぐに和樹は、隣の席まではみ出して置いている皿を、
自分の前に寄せたのでした。
和樹の隣に座ると思っていたのです。
するとだいぶ酔っている客が絵里の隣に座ったのでした。
店員が、「ノムさん、こっち!!」
と言ったのですが、どっかりと座ってしまったのでした。

それを見ていた和樹と一平が、
「絵里ちゃん!?替わるよー!??」
とほぼ同時に言ったのです。すると絵里は、
「だいじょうぶですから!?気を使わないでください!!?」
と言ったのでした。

「ほんとにー!?」
と一平が言うと、
「ええー!?だいじょうぶですから!?」と言った絵里でした。
するとすぐに店員が、
「すいません!?よろしくお願いしまーす!?」
と言って、
今座ったお客の飲んでいたものを持っきて、置いていったのでした。

カウンターが2席空いていたのですが、
三人連れの客が来たので、
カウンターからこっちの座敷の席に移って来たのです。
それからすぐにたいらくんが来たのでした。

「すいませーん!?」
「遅れてしまいまして!!?」
と言ってお辞儀をしたのです。すると泰三が、
「とにかく上がって座りなよー!?」
「何飲むー!??」
と言ったのです。すると絵里の隣の客が、
「誰だあー!?ノムーって!!?」
「俺の名前を軽がるしく言うヤツはー!??」
と急に大きな声で言ったのです。

「すいません!?名前読んだわけじゃないんですけど!?」
「成り行きで!!?」
と、泰三があわてて弁解をしたのです。すると、
「そうか!名前読んだわけじゃないのかあー!??」
と酔った口調で言うと、グイッ!と一口コップ酒を飲んだのでした。






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