携帯によろしく 第十四章(9)

「一平と俺はいいけどさあー!?」
「ちょっと待ってえー!?」
と言って泰三が、携帯の受話口を押さえ、
「たいらくんからだけど!」
「七時過ぎるってえー!?」
と、女の子三人に向かって言ったのです。

するとすぐ、
「わたしたちこれから行くところがあるんで!?」
と言うと、受け付けの子ふたりが顔を見合わせ、
「じゃあー!?すいませんが!?」
「失礼します!?」
と言ったのでした。

「それはいいけど!?」
「じゃあー!?気をつけて帰ってねっ!!?」
と泰三が言うと、
「二宮(にのみや)さん!ご馳走様でした!!?」
とふたりの子がほぼ同時に言ったのです。そして、
「じゃあー!?一平さん!?絵里ちゃん!?」
「お先にー!!?」
と言うと、ふたりは帰って行ったのでした。

「絵里ちゃんは!?」
と泰三が隣に座っている絵里に言うと、
「まだ六時だからぜんぜんだいじょうぶです!!?」
と言ったのです。すると、
「二宮さーん!!??」
と携帯からたいらくんの声が聞こえてきたのでした。

「ごめんごめん!!?」
「すっかり忘れてたよー!?」
「とにかく待ってるからさあー!?」
「来なよー!!?」
と泰三が言うと、
「わかりましたー!?」
「じゃあー!?行きまーす!!?」
「失礼しまーす!!?」
と言って、たいらくんが携帯を切ったのです。
泰三も携帯をたたみ、それをポケットにしまったのでした。

「松平さんもお忙しいから!?」
「定時でなんか終わらないと思ったんですけど!?」
「本人が、”少し遅れるかもしれないけど”来るって言ったので!?」
「彼女たち期待していたみたいなんですー!?」
と絵里が思わず言ったのでした。

「なんだあー!?そうだったのかあー!??」
「珍しくあの子達を誘ったらOKしたのは!!?」
「たいらくん目当てだったんだあー!?」
と泰三が笑いながら言ったのです。

「すいませんけど!?」
「このことは、松平さんには言わないでください!?」
「お願いしまーす!!?」
とあわててそう言った絵里でした。

「そんなことは気にしないでいいから!?」
「遠慮しないで飲んでよー!?」
「なっ!一平!!??」
とうれしそうに泰三が言うと、
「たいらくんをからかおうという、魂胆(こんたん)ですねー??!」
「ほどほどにしないと!絵里ちゃんの立場もありますから!?」
と一平もうれしそうに言ったのでした。

そしてすぐに大きな声で泰三が、
「女の子ふたり帰ったけどー!?」
「7時過ぎたら!?男がふたり来るからさー!?」
「おやじさん!席空けておいてよー頼むねえー!?」
と言ったのです。

するとすぐ、
「はいよー!!」
と威勢のいい返事が返ってきたのでした。

それから三人で楽しく話をしながら飲んで、
7時を15分ほど過ぎた頃、
ノコノコと和樹が店に入って来たのです。

「おやじさん!?泰三さんたち来てますー!??」
と店の主人に言うと、
「一番奥の座敷!!」
と答えるとすぐ、
「変なのがひとり来たよー!?泰三さん!!」
と大きな声で笑いながら言ったのでした。

「変なのって言い方はないよなあー??!」
「いくらなんでもさあー!?」
と言いながら店の奥へと歩いていった和樹でした。

「せんぱーい!終わりました!!」
と和樹が言うと、
「ごくろうさん!?」
「注文をしろよー!?さきー!!?」
と泰三が言ったのです。

「ごっつぁんでーす!!?」
とうれしそうに答えると和樹は、
「生(なま)の大に!」
「焼き鳥!タンにハツに砂肝に、あとネギマ!2本づつ!!?塩で!!」
「それと!ニラレバはやめて。おでんを見繕(みつくろ)って持ってきてー!!?」
と大きな声で、店の主人に向かって言ったのでした。

「はいよー!!」
「おーい!奥の席。先に生の大!!」
と、威勢のいい声が返って来たのでした。
和樹が一平の横の席に座るとじきに、生ビールの大ジョッキが、
「お待たせしましたあー!!?」と言って、
和樹の前に置かれたのでした。

「お疲れさんでーす!!?」
と言ってジョッキを上に持ち上げた和樹に、
「お疲れさーん!!?」と言って、
他の三人がグラスを合わせたのでした。

「お疲れさーん!は、お前だけだけど!!?」
と言って笑いながら一平が言ったのです。すると、
「まあー!?それはそうですけど!!?」
と言ってうれしそうに、
生ビールをジョッキ半分ほどを一気に飲んだ和樹でした。

「仕事の後(あと)のビールは格別ですねえー!?」
と言ってから、
「あれ!?たいらくんはー!??」
と和樹が言ったのです。






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