携帯によろしく 第十三章(8)

育子がからだをもとに戻すと、
一平は立ちひざで育子に近づき、
身体を抱き寄せ唇にキスしたのでした。
それからふたりはベッドの中央で向かい合ったまま、
立ちひざで抱き合ったのでした。

一平は唇を合わせたまま、ゆっくりと育子の背中に手を回したのです。
そしてブラジャーのホックをはずしたのでした。
育子は一平の行動に合わせるように、手の力を抜いたのです。
一平はブラジャーをゆっくりと育子の両腕から抜いたのでした。
そして唇を離すと育子を抱きかかえ、
身体を半分ひねり、ベッドの上に仰向けに寝かせたのです。
それからブラジャーを、
イスの上にたたんでおいてあるジャージの上に置いたのでした。

すると育子が小さな声で、
「一平ちゃん!?」
「小玉も消してくれる!?」
と言ったのです。
「うん!?」そう一平は答えると、
小指で灯りのリモコンスイッチを押したのでした。
すると部屋の中は真っ暗になったのです。

それからふたりは初めて身も心も通じ合えたのでした。
ふたりはそれから何度も愛し合ったのです。
そして、抱き合って眠ったのでした。

朝6時になると、パソコンの机の上に置いてある携帯の、
朝の目覚ましの音楽が鳴ったのです。

「もう6時かあー!?」
そう言って一平が目を開けると、
ベッドにはもう、育子はいませんでした。
育子は朝食の支度をしていたのです。

一平は急いでジャージに着替えると、
台所のテーブルのところに行ったのでした。
「育ちゃんおはよう!!?」
「もう起きたんだあー!??」
と一平が言ったのです。

「おはよう!!?」
「きのう洗濯物を干すの忘れたから!?」
「朝早く起きて!?」
「乾燥機(かんそうき)をセットしたの!?」
「ごめんね、忘れてて!!?」
と育子が言ったのです。すると一平が、
「話をしてて遅くなったから!?」
「洗濯したの!?俺も忘れてたよー!!?」
と笑って言ったのでした。

「もうすぐ、朝ご飯できるからねっ!!?」
「顔洗って歯を磨いてきてちょうだい!?」
と育子が言ったのです。すると、
「はーい!?」
と一平は答えると、トイレへと向かったのでした。

一平はトイレで用をたし、洗面所で顔を洗い歯を磨くと、
テーブルに来て、いつものイスに座ったのです。

「お味噌汁は、お豆腐とわかめにしたの!?」
「おご飯よそるから、お茶碗(ちゃわん)かしてちょうだい!?」
と育子が言うと、
一平は自分のテーブルの前に伏せてある一平の茶碗を持つと、
「はい!?」
と言って、育子に手渡したのでした。

育子は一平から茶碗を受け取ると、
「このぐらい食べれるでしょ!?」
そう育子は言って、
少し山盛りにご飯を茶碗に盛ったのでした。
そしてそれを一平に手渡したのです。

「いつもこんなに朝は食べないんだけど!?」
「きょうは、育ちゃんがいるから食べれそうだよー!?」
と一平がうれしそうに言うと、
「朝はちゃんと食べないとねっ!!?」
と育子もうれしそうに言ったのでした。

「今すぐお茶を入れるから!?」
と言って湯飲みにお茶をついて、
一平に育子が手渡したのです。
一平は湯飲みを受け取ると、
「ありがとう!?」
と言ったのでした。

「きょうは簡単にハムエッグにしたんだけど!?」
「一平ちゃんは、ハムエッグどっち派(は)!?」
「おソース、お醤油、そのまま!?」
と育子が訊(き)いたのです。その時一平は、
ハムエッグに添えられている千切りキャベツに、
ソースをかけようとして、ソースの容器に手を伸ばしたところでした。






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