携帯によろしく 第十一章(10)

「ではこれで!?」と言うとヒデさんは、
運転席で会釈すると、車は白石家に戻って行ったのです。
一平とナツさんは、いっしょに玄関まで行き、
エレベーターに乗ると7階で降りたのでした。
いつものようにナースステーションであいさつを済ませ、
病室に入ったのです。

「これ、お見舞いの花ですけど!?」
と言ってナツさんに手渡すと、
「いつもありがとうございます!」
「奥様と小百合さんから聞いております!?」
「さっそく替えてまいりますので!?」
「そのあいだよろしくお願いいたします!!?」
と言うとナツさんは、大きめの手提げバッグを腕に通し、
花瓶と花束を持って、
病室を出て行ったのでした。

「はい!?」と答えた一平は、
折りたたみのイスを持って来て開き、
ベッドの横に置き、そこに座ったのでした。
少しして、小さくドアをノックしたあと、
「失礼しまーす!?」
と言って看護師が病室へ入って来たのです。

[CD替えられます?!」
と看護師が一平に向かって言うと、
「あっ!?うちの方がいたときのほうが、いいかなと思ったんですけど!??」
「それは別にいいんですか?!」
と一平が言ったのでした。

「先生からは、入室を許可された方が来たら!?」
「すぐに伺うように言われていたものですから!?」
「どうしましょうか?!」
と看護師が困ったようすで、一平に訊いたのでした。

「そうですか?!」
「では何度もこちらへ足を運ぶのは面倒でしょうから!?」
「替えましょう!?」
と一平は言うと、イスから立ち上がり、
優のヘッドホンを取ると、自分がヘッドホンをして、
リモートコントロールのところをいじって、
操作の仕方を試したのでした。

操作方法を理解した一平は、
「じゃあー!?替えてみましょう!?」
と言って、引き出しから”声を録音したCD”を取り出し、
「では替えますけど!?準備はいいですか?!」
と看護師に訊いたのでした。

「ちょっと待ってください!?」
と言うと看護師はノートパソコンをたたき、
「はいどうぞ!?」
と言ったのです。

一平はCDを入れ替えセットすると、
「替えました!!?」
と看護師に向かって言ったのでした。
「はい!!」と看護師は答えると、
パソコンをたたき、
「では、もしまた替えるようでしたら!?」
「あちらのインターホーンでお呼びください!!?」
と言ったのです。

「はい!わかりました!!?」
「ご苦労様でした。」
と一平が言うと、
「では失礼します!!?」
と言って看護師は会釈すると、病室から出て行ったのでした。

一平は交換したCDを引き出しにしまうと、
またイスに座ったのでした。
それからしばらくすると、
ナツさんが病室に戻って来たのです。

ナツさんは、
「失礼します!?」
と言って入って来ると、
一平がきょう持ってきた花束を挿(さ)した花瓶を置くと、
折りたたみのイスを一平が座っている向かえ側にひろげたのです。
イスに大きめの手提げバッグを置くとまたすぐに、
部屋を出て行ったのでした。

すぐにナツさんはまた、
「失礼します!?」
と言って病室に入って来たのです。
最初持ってきた花瓶の半分ほどの大きさの花瓶に、
花が挿してあり、それを持って来たのでした。

「一平さんが花束を持って来ると!?」
「きのうの花束を捨てるのはまだもったいないと思いまして!?」
「少し小さめの花瓶を持って来たんですよ!?」
「選んで、元気そうな花を挿しました!!?」
とナツさんがうれしそうに言ったのでした。

「そうですか?!」
「ありがとうございます!?」
「優がこういう状態なので!?」
「花しかお見舞いの品が浮かばなくて!?」
と一平が言ったのです。
「ねえー!?こんな状態で!?」
「優さんがふびんで!!?」
と言うと優の顔を見て、ナツさんが涙をこぼしたのでした。






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