携帯によろしく 第十一章(7)

少しのあいだ待っていると、タクシーが来たのです。
一平が手を上げると、タクシーは止まり、
助手席の窓を開け、
「白石さんからの電話の方ですか?!」
とタクシーの運転手が言ったのです。

「そうですけど!!?」
と一平が答えると、すぐに後ろのドアが開いたのでした。
一平はジャーのバランスを保ち、
ゆっくりと後ろの席に乗り込んだのでした。

不審に思った運転手が、
「お客さん!?それなんですか?!」
バックミラー越しに、訊いたのです。すぐに、
「これジャーですよー!?」
「炊き込みご飯をセットしてもらったんで!!?」
「ジャーごと借りてきたんです!!?」
と一平が答えたのでした。

「そうですかあー!??」
と安心したように運転手は言うと、
「どちらまで!??」
と言ったのでした。

「高田馬場まで!?」
「環七から早稲田通りを通ってください!!?」
と一平が言うと、
「わかりました!!?」
と言うと運転手はサイドブレーキを降ろし、
出発したのでした。

「お客さん!!?」
「誰か後ろで手を広げて振っていましたけど!!?」
「いいんですかあー?!このまま行って!!?」
と運転手が言うと、
「はい!!?」
と後ろを振り向かずに言った一平でした。

小百合がナツさんから話を聞き、急いで走って門まで出て来たのですが、
ちょうどタクシーが出発したあとだったのです。
一生懸命手を振ったのですが、
タクシーは止まりませんでした。
小百合はがっかりして、家に戻ったのです。

一平は自分に心の中で、
”これでいいんだ!これで!!”
と思ったのでした。
そのとき一平は、抱(かか)えていたジャーを強く抱(だ)きしめていたのです。

タクシーは環七通りを通り、早稲田通りに入り、
一平の指示通りに行き、マンションに着いたのです。
一平はポケットから財布を出し、タクシー料金を払うと、
ゆっくりとジャーのバランスを保ち、
タクシーを降りたのでした。

ゆっくり歩いてマンションに入るとエレベーターに乗り、
3階まで行き降りると、またゆっくり歩いて玄関のドアを開け、
いったん入り口のフロアーのところにジャーを置くと、
ドアをロックし、靴を脱ぎスリッパに履き替え、
ジャーをテーブルの上に置いたのでした。
そして水道の蛇口をひねり、水をジャーと出したのでした。(ダジャレ!くだらん)
いいえ!蛇口などひねりません!!。

ジャーのコードを引っ張り出し、コンセントに差し込み、
ナツさんの説明どおりにタイマーをセットすると、
洗面所に行き、手を洗い顔を洗うと、
テーブルのところに戻り、いつものイスに座ったのでした。

「疲れたなあー!!?」
と一平は言うと、手を上に上げ、
「あああー!!??」と大きな声を出し、
大きなあくびをしたのでした。

「そういえばあー!?風呂掃除をしたけど!?」
「タイマーセットしてあったかなあー??!」
と言うと、一平は風呂場に向かったです。
タイマー表示のところを見ると、10時にセットしてあったのでした。
「まだ1時間以上あるなあー!??」
と言うと、風呂場からパソコンの部屋へ行き、
ジャージに着替えたのです。

一平は着替え終わると、パソコンのところへ行き、
イスに座り、パソコンのスイッチを入れると、
ベッドの上で仰向けになり、手を広げ大の字になり、
大きなあくびをしたのでした。
すると携帯がブルブルしたのです。
育子からのテレビ電話でした。

「もしもしー!?」
「今終わったのー!?」
と育子が言うと、
「お疲れさん!!?」
「育ちゃんあしたも出るんだろう??!」
と一平が言ったのです。

「そうなの!?」
「でも月曜日も出るかもしれないのー!??」
「あしたにならなければはっきりわからないから!?」
「あしたまた電話しまーす!!?」
「わたしのこと愛してるー??!」
と育子が言うと、
「もちろん愛してるよー!??」
と言って唇を画面に近づけると、
育子もすぐに唇を画面に近づけたのです。

一平が「チュッ!?」と言うと、
育子も「チュッ!?」と言ったのでした。






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