携帯によろしく 第十一章(6)

びっくりした一平は、
「お母さまの具合はどうなんですか?!」
「さっき電話があったようですが!??」
と言って、菊枝のことを訊いたのでした。

「すいません!?申し遅れました!!?」
「母は具合がまだよくないので、部屋で食事をとるそうです!?」
と小百合が言うと、
少し大きめのお盆に食事を載せ、台所からナツさんが出て来ると、
廊下を奥の部屋のほうへ、歩いて行ったのでした。

一平は「ごちそうさまでした!!?」
と言って会釈をしてから、
「小百合さん!?軽はずみなことを言ってはだめですよ!?」
「あしたはお見合いなのですから!?」
「俺はもう帰らなければ!!?」
と言ったのです。

「ええー??!」
「もうお帰りになるんですかあー?!」
と小百合ががっかりしたように言うと、
「お母さまを見てあげてください!?」
「俺はタクシーで帰りますから!?」
と一平は言って、立ち上がったのでした。

「小百合さんにふさわしい人が必ずいますから!?」
「あしたのお見合いのお相手が、そうかもしれませんよ!?」
と一平が言うと、
「そんなあー!?」
「一平さんにそんなこと言われるとは思っていませんでしたわっ!!?」
と小百合が半べそをかいて言うと立ち上がったのです。

「一平さんはわたくしのことをお嫌いですの??!」
と小百合が涙を流し言うと、
「好き嫌いの次元の問題ではありません!?」
「あなたは、この家の跡継ぎなのですから!?」
「ふさわしい方を選ばなければなりません!!?」
と一平は、少し強い言い方で言ったのでした。

ナツさんが奥の部屋から戻って来たのです。
すると小百合がちょうど、食堂から出て早足で廊下を歩いて、
ナツさんとすれ違ったのでした。そのとき、
「小百合さん!?どうなさいました!??」
とナツさんが言ったのですが何も答えず、
そのまま自分の部屋へ向かい、階段を上がって行ったのでした。

一平が食堂から出てくると、
ちょうどナツさんと出会ったのです。
「小百合さんと今すれ違ったのですが!?」
「何かあったのですか?!」
と心配そうにナツさんが言うと、
「いいえ!?俺がタクシーで帰ると言っただけです!!?」
「すいませんが、タクシーを呼んでいただきたいんですけど!??」
と一平は言ったのでした。

「おばさまの具合が悪いのに!?」
「小百合さんに送ってもらうわけには行きませんから!?」
と一平が言うと、
「そうですか?!」
「わかりました!ではすぐに!!?」
とナツさんは言い、
廊下のところの電話台から、
タクシー会社へ電話してタクシーを呼んだのでした。

「20分ほどで来るそうです!?」
とナツさんが言うと、
「ありがとうございました!!?」
「きょうは本当においしかったです!?」
「ごちそうさまでした!!?」
と一平は言って、お辞儀をしたのです。

「炊き込みご飯の用意はもうできていますので!?」
「おひとりなので、三合にしときました!!?」
「余りましたら!?ラップに包んで冷凍しとけば!?」
「1日か2日なら少し味は落ちますが!?」
「電子レンジでチンすれば食べれますので!!?」
とナツさんが言ったのでした。

「あと!?ジャーを持っていくときに斜めにしますと!?」
「中のスープがこぼれますので、気をつけてくださいね!!?」
とナツさんが言ったのです。
「わかりました!気をつけます!?」
と一平が言うと、
「ジャーはこちらにあります!!?」
と言うとナツさんは、台所に入って行ったのでした。

すぐ後(あと)を一平がついて行ったのです。
そして一平はジャーを平衡を保ちながら持つと、
「門のところまで行って、タクシーを待ちますから!?」
「これで失礼いたします!?」
と言うとジャーを持って玄関まで歩いて行ったのでした。

ジャーを玄関のところにいったん置き、
スリッパを脱ぎ、靴に履きかえると、
「ゆっくり歩いていけば、ちょうどタクシーも来るでしょうから!?」
「では!?奥様と小百合さんによろしくお伝えください!?」
「ジャーをお借りしていきます!!?」
と言ってお辞儀をした一平でした。

「今門を開けますので!?」
「出られましたら!?インターホーンでお知らせください!!?」
「門を閉めますので!よろしくお願いします!!?」
とナツさんは言うと、お辞儀をしたのでした。
「わかりました!!?」
と一平は答え、ジャーを持ち玄関を出たのです。
そしてゆっくりと歩いて行くともうすでに門が開いていました。

門を出るとインターホーンを押し、
「ナツさん!?」
「門を出たので閉めてください!!?」
と一平が言うと、
「はい!ではお休みなさいませ!!?」
「失礼いたします!!?」
とナツさんが言うと同時に門が、自動で閉まっていったのでした。
 






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