携帯によろしく 第十章(8)

そしてふたりは、病室を出ると、エレベーターに乗り、
1階まで降りたのでした。
そして歩いて駐車場まで行ったのです。

「一平さん!?鍵をお渡ししますわ!??」
と小百合が言うと、
「いいえ!?小百合さんが運転してください!?」
と一平が言ったのでした。
「なぜですの?!」
と小百合が言うと、
「小百合さんの車ですから!??」
「1回運転すれば満足です!!?」
と一平が答えたのです。

「わかりましたわ!?では!?」
と言うと小百合は、運転席に乗り込んだのです。
そしてバッグをシートの左に置くと、シートベルトをしたのでした。
一平が助手席に乗りシートベルトをすると、
車は駐車場を出たのです。
途中、パソコンショップに寄り、録音用にマイクを買うと、
一平のマンションに向ったのでした。

少し走ると一平のマンションに着いたのです。
車を来客用の駐車場に入れ、車を降りると、
そこから歩いてエレベーターまで行き、
ふたりはエレベーターに乗り、3階で降りたのでした。
そして、一平の部屋に入ったのです。

一平が先に上がり、
「先に空気を入れ替えますから!!?」
「小百合さん!?」
「イスに座って待っていてください!!?」
と言うと、
「はい!!?」
と小百合は答え、スリッパに履き替えると、
一平に言われたとおり、一旦(いったん)イスに腰掛けたのでした。

一平は、台所の窓を手始めに、部屋のカーテンと窓を開けたのです。
ふと小百合は、台所の流し台のところの洗い桶に、
コップがそのままつけてあったのが目に入ったのです。
イスから立ち上がると、流しのところに行き、
ブラウスの袖をたくし上げ、スポンジに洗剤をつけ洗い、
すすぎ終わると、水切り桶にコップを入れたのでした。

テーブルのところに戻った一平は、
「すいません!?お待たせしました!!?」
と言うとすぐ、
「小百合さん!?俺が後(あと)でやりますから!?」
と言ったのですが、
「もう終わりました!!?」
と言って小百合は笑みを浮かべ、一平のほうを振り向いたのです。

「このタオル使っていいですか?!」
と小百合が言うと、
「もちろんいいですけど!!?」
「すみません!?ありがとうございました!!?」
と一平が言ったのでした。

小百合はタオルで手を拭きブラウスの袖を下ろすと、
テーブルのところに来て、
「わたしこそすみませんでした!!?」
「気がつかなくて!?」
と言って会釈をしたのです。

一平は小百合に近づくと、
「小百合さん!!?」
と言って、力(ちから)いっぱい抱きしめたのでした。
このとき一平は、ふたりの女性を同時に、
愛し始めていたことに気がついたのです。

それからふたりはしばらく抱き合っていたのでした。
一平が力を緩めると、
ふたりはお互いを見つめ合ったのです。
そのとき誰かがこちらを見ているような気がした一平は、
「窓を閉めてきます!!?」
と言ってからだを離すと、台所の窓を閉めに行ったのでした。

「えっ??!」
と思わず小百合が言ったのです。
一平は窓を閉め終わると、
ドアをロックしていないことに気づき、
玄関に行きドアを開け、左右の通路を見てから、ロックしたのでした。

「どうかなさいました??!」
と、一平の行動を見て小百合が訊ねると、
「誰かに見られていたような気がしたんですよー??!」
「外には誰もいませんでした!!?」
「気のせいかもしれませんけど!??」
と一平は答えたのです。

「そうですかー??!」
「わたしも先週から!?」
「誰かに見られているような感じがしていましたけど!?」
「気のせいだと思っていましたの!??」
と小百合からそんな言葉が出たのでした。

まさかそんな言葉が出ると予想をしてなかった一平は、
「そうですかー??」
「先週からですかー??!」
と、不安げに言ったのでした。






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