本来コーヒー紅茶などをお出しして、御もてなししなければいけませんが、
インターネットの都合上それができません。
ご自分で好きなものを適当に用意していただき、
キーボードなどの上にこぼさぬよう注意して、
ときどき飲みながらでもお読みくださいませ。 m(_ _)m
一平はベッドの横に置いてあるイスに座ったのです。
「ユー目を覚ませて!!?」
「こっちの世界に戻ってこなくちゃあーだめだよ!!?」
と言ったのでした。
その時小さなヘッドホンをユーがしているのが見えたのです。
「小百合さん!?このヘッドホンは??!」
と一平が訊くと、
「うちの父の知り合いのお医者様が!?」
「意識がない人に手足を刺激したり!?」
「耳から音楽や知り合いの言葉を聞かせて刺激すると!!?」
「意識が戻る症例が有るからと言われたので!!?」
「先生の許可を得て、音楽を聞かせているんです!。」
と小百合が答えたのでした。
「ユーの場合は、ケガをしているので!!?」
「手足への刺激は許可されませんでした!!?」
「”もし悪化しても責任は負えません”という条件で!?」
「音を聞かせる許可は得ました!!?」
と小百合が付け加えて言ったのです。
「では!?母が待ってますので、一平さんよろしくお願いいたします!?」
と言い会釈すると急ぎ足で、病室を出て行った小百合でした。
「はい!!?」
と答えた一平でしたが、
以前同じような話を聞いた事があったのを思い出したのです。
それは、一平の父が入院していた病院での話でした。
知り合いのいない場所で、脳内出血で倒れた青年が、
倒れてから1時間以上経って病院に運ばれ、
いつ亡くなってもおかしくない意識のない状態でいたのが、
家族と彼女の献身的な看護と、家族の声や友人の声を聞かせて、
2ヶ月以上経ったある日、突然意識が戻ったという話でした。
そのことを一平は思い出したのです。
その病院の医師たちも、若いから可能性があるとの意見で、
治療を進めていったとのことです。
青年は徐々に回復し、リハビリもできるようになり、
1年後には、仕事に復帰できる状態まで回復したとの話でした。
「ユーも若いから!?がんばるんだぞ!!?」
「絶対負けるんじゃあーないぞ!!?」
「俺の声を録音して聞かせるから!?」
と一平はユーに力強く、
涙を流しながら、語りかけたのでした。
そして一平はユーに自分の声を聞かせてやりたいと思い始めたのです。
そう思うと、いてもたっても居られなくなったのでした。
菊枝と小百合が病室に戻ってくると、
一平はイスから立ち上がったのです。
「すいません!?ユーに俺の声を聞かせてやりたいんですが!??」
「いいでしょうかあー??!」
と菊枝に言ったのでした。
「ええ!?もちろんかまいませんが!?」
と菊枝が言うと、
「今から部屋まで戻って録音して来ますので!!?」
「1時間か1時間半したらまた戻ってきますので!!?」
「すいません!?じゃあーしばらく失礼します!!?」
と言って会釈したのです。
「一平さん!?そんなに急がなくても!??」
と菊枝が言うと、
「ユーになんにもできないし!!?」
「俺にはそのぐらいのことしかできないので!!?」
と一平が言ったのでした。
「一平さん!??」
「では私が送って差し上げますから!??」
と小百合が言うと、
「小百合さん!?タクシーがありますから!??」
「気を使わないでください!?」
と一平は言ったのでした。
「そんなあー!??」
と言って小百合がなみだ目になると、
菊枝が察して、
「一平さん!?小百合と一平さん!?」
「ふたりの声をユーに聞かせてもらえますか?!」
と菊枝が言ったのです。
「すいません!!?」
「自分のことしか考えていなくて!!?」
「小百合さん!?ごめんねっ!!?」
と言い、一平は小百合に向って頭を下げたのでした。
「そうですね!!ふたりの声を聞かせてやれば!?」
「ユーも喜びますねっ!!?」
「じゃあー!?いっしょに行ってもらえますか??!」
「小百合さん!??」
と一平が言うと、
「ええ!?もちろんです!!?」
と、小百合はうれしそうに答えたのです。
「すみませんがおば様!?」
「小百合さんとお車をお借りしてよろしいでしょうか??!」
と一平が言うと、
「ええ!?もちろんいいですとも!?」
「ただし!お夕食をいっしょにいただくという条件で!!?」
と菊枝が言ったのでした。
「承知いたしました!!?」
「ところで今気がついたのですが!?」
「マイクがなかったので、途中で買っていかなくてはなりませんでした!!?」
「うっかりしていました!。」
「ごめんなさい!??」
と言って少し照れながら、頭をかいた一平でした。
「まあー!?一平さんったら!??」
「マイクがなければ録音できませんわよねえー!??」
と、小百合が笑みを浮かべ言ったのでした。
「ではおばさま!?2時間ぐらいで戻ってきますので!?」
「そのあいだおひとりですが、よろしくお願いいたします!!?」
と言って菊枝に向って、お辞儀をした一平でした。
「ふたりとも、そんなに急がなくてもいいですから!?」
「気をつけて行ってらしてねっ!??」
と菊枝が言ったのです。