携帯によろしく 第十章(6)

一平がシートベルトをしようとしたときに、
「一平さん!?ドライブお好きなんですよねえー!??」
「もしよかったら運転なさいませんか?!」
「きょうはお飲みになっていませんから?!!」
と小百合が運転席で、シートベルトをせずに言ったのでした。

「えっ!??」
と、シートベルトを右手でつかんでる状態で、一平が言ったのです。
「ここからだったら病院まで少しの距離だから!?」
「慣れていない車でも、ゆっくり行けばだいじょうぶかな??!」
と言ってその気になって一平は、
右手で持っていたシートベルトを離したのでした。

それを見た小百合はすぐ車を降り、
車の周りをまわり助手席のドアのところに来たのです。
躊躇(ちゅうちょ)していた一平でしたが、
小百合が助手席のドアを開けると、
「じゃー!?病院まで運転させてください!!?」
とうれしそうに小百合に言ったのでした。

「ええ!?遠慮せずに!!?」
と笑みを浮かべ小百合が言ったのです。
すぐに一平は車から降りると、
「すいませんこれお願いします!?」
と言って小百合に花束を渡したのでした。そして、
ぐるっとまわり、運転席のドアを開け、シートに座ったのです。

小百合から操作の説明を聞くと、
「わかりました!!?」
「最近、会社の車しか運転しいていないから!?」
「緊張するなー??!」
と言って、うれしそうに小百合の顔を見たのでした。

「運転歴長いんですか?!」
と小百合が言うと、
「大学入ってすぐ取ったので!!?」
「9年ぐらい経ちますかねえー??!」
と答えた一平でした。

「そうですかー!?」
「じゃあー!?もうベテランでいらっしゃいますねえー!?」
と小百合がうれしそうに言うと、
「いやー!?そんなことはないですよー!??」
とうれしそうに言った一平でした。

それからふたりはシートベルトをすると、
車はゆっくり走り出したのです。

「いやー!??ぜんぜん違いますねー!??」
「まあー!?会社の車と比較すること自体、変ですけどね!!?」
「やっぱりパワーが違いますねー!??」
「アクセル踏み込んだ感覚がまるで違いますよー!??」
「うーん!!?」
と、うれしそうに言った一平でした。

しばらく走ると一平は、
何気なく、オートマチックレバーに、軽く左手を添えたのでした。
するとその手の上に小百合が、やさしく右手を乗せたのです。
一平は前を向いたまま、すぐに手のひらを返して、
小百合の指と軽く絡ませたのでした。

交差点で信号機が赤になると、
小百合は一平の手をするりと抜け、
右手を、ひざの上に置いてあるバッグのところに持っていったのです。
そして一平がまた手のひらを返し、
オートマチックレバーの上に手を添え、車が走り出すと、
小百合はまた一平の手の上に右手を乗せたのでした。
また一平は手のひらを返し、小百合の指と絡ませたのです。

一平がウインカーを出すと、
小百合はすぐに手をバッグの上に持っていったのでした。
小百合は、まっすぐに走っている時、運転の邪魔をしない時だけ、
一平の手の上に自分の手を乗せたのです。
そして車は渋滞もなく、すぐに病院に着いたのでした。

車を駐車場に止めると一平は、
小百合から花束を受け取り、
ふたりは並んで病院へ入って行ったのです。
いつものようにエレベーターに乗り7階まで行き、
ナースステーションに寄ってから、
病室に入ったのでした。

小百合の母の菊枝がベッドの横のイスに座っていたのでしたが、
ふたりが入ってくると、すぐに立ち上がったのでした。そして、
「一平さん!お休みなのに来ていただきまして!?」
「ありがとうございます!。」
と言って菊枝が、お辞儀をしたのでした。

「いいえ!?とんでもありません!!?」
「何もできないのですが!?」
「寄らせてもらいました!!?」
と言って、一平もお辞儀をしたのです。そして、
「いつも同じパターンで申しわけありませんが!?」
「お花を飾っていただきたく、持ってきました!!?」
と言って菊枝に花束を渡したのでした。

「いつもありがとうございます!!?」
「では小百合さん!?さっそっくお花を替えましょう!?」
と菊枝が言うと、
「では花瓶を持っていきますので!!?」
と言って、花瓶が置いてあるところに行った、小百合でした。

「先に行っていますから!?」
と言うと菊枝は、ドアを開け病室を出て行ったのです。
「お母さま!?すぐ行きますから!??」
と小百合は答えたのでした。






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