携帯によろしく 第十章(5)

すると小百合は、目を開けたのでした。
一平の顔を見ると、大粒の涙があふれ出てきたのです。
そして涙がほほを伝わり、唇のところまで流れたのでした。
「目を閉じて!?」
そう一平が言うと、
小百合は素直に目を閉じたのです。

一平は流れ落ちていく涙を、唇で吸い取ったのです。
そして自分の唇を小百合の唇に重ねたのでした。
すると一平の脳裏に、育子の顔が浮かんだのです。
すぐに唇を離した一平でした。

「ごめん!?小百合さん!??」
と一平が言うと、
「いいえ!?いいんです!!?」
「わたしこそすみません!!?」
と言って、恥ずかしそうなしぐさをした小百合でした。

「すみません一平さん!?お化粧を直したいんですが!??」
と小百合が言うと、
「洗面所はあそこですので!!?」
と言って指さして、
「カーテン閉まりますから!??」
そう一平は言うと、カーテンのところに歩いて行ったのでした。

小百合はすぐにバッグを持って、洗面所に歩いて行ったのです。
風呂場のほうに寄せてあるカーテンを、
一平が洗面所のほうに持ってくると、
「そこにあるタオル使ってください!?」
「お湯の量は、レバーで調整できますので!!?」
「じゃー閉めまーす!!?」
と言って一平はすぐ、
洗面台の横に花束を置いてあるのに気がついたのです。

「すいません小百合さん!?」
「そこの花束を渡してもらえますか?!」
と一平が言うと、
「いつもすいません!?」
と言って小百合は、花束を一平に手渡したのです。
花束を受け取ると一平は、きっちりとカーテンを閉めたのでした。

一平は、花束を台所の流し台のところに置いたのでした。
それからテーブルのところに戻って来て、イスに座ったのです。
そして、「ふーっ!??」と一息つくと、
ジュースを一口飲んだのでした。

”小百合さんもさびしいんだよなきっと!!?”
”いろいろ人間関係もあるし、お金持ちもたいへんだあー!??”
と一平が考えていると、
洗面所で小百合が、
「一平さん何か言いました??!」
と言ったのです。

「いいえ!?別に何も?!」
「時間は気にしないでください!?」
「ゆっくりお化粧直してくださいねっ!!?」
と少し大きな声で言った一平でした。すると、
「ありがとうございます!!?」
と答えた小百合でした。

しばらく待っていると、小百合がカーテンを開け、
「一平さん!?」
「このカーテン!?向こうまで戻します?!」
と小百合が言ったのです。
「そのままでいいですよ!?別に気にしないでください!!?」
と一平は答えたのでした。

小百合がバッグを持って、
台所のテーブルのところに戻って来たのです。
「小百合さんは本当におきれいですねえー!?」
「お化粧落ちても、とてもおきれいですけど!?」
「お化粧するともっときれいですねえー!!?」
と、小百合が化粧した顔を見てイスから立ち上がり、
バカ正直につい言ってしまった一平でした。

「化けるのがうまいんですね!きっと!!?」
と笑みを浮かべ、そう言った小百合でした。
「いいえー!?ほんとのことを言ったんですよー!!?」
「ものすごくきれいだから!!?」
とまじめな顔をして言った一平でした。

「ではもう、参りましょうかー??!」
と小百合が言うと、
「そうですね!!?」
「これ以上いっしょにここにいると!?」
と言ってすぐに、
「いいえ!なんでもありません!!?」
「じゃー!?病院へ行きますかー!??」
と一平は言ったのでした。

一平は戸締りの確認をしたのです。
小百合が先に玄関に行き靴を履くと、
一平は流し台に置いてある花束を持ち、
玄関に行ったのでした。
そしてふたりは、一平の部屋から出たのです。

ふたりはエレベーターに乗り1階まで降り、
マンションから出ると、
小百合の車が置いてある来客用の駐車場に行き、
車に乗り込んだのでした。






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