携帯によろしく 第十章(4)

「すいません!?コースターないんで!!?」
「そのままですが!?」
と言って一平は、
コップに注いだジュースを小百合の前に置いたのです。
「わたしこそすみません!?」
「急にお寄りして!??」
と言うと、軽く会釈した小百合でした。

会話が途切れたので一平は、
「あしたお見合いですね!!?」
「いい方だといいですねー!?」
と言ったのです。

「あんまり気乗りしていませんの!?」
「父がむかしからお世話になっている方のご紹介なので!!?」
「父は、”お前がいやなら無理にしなくてもいいんだぞ!!?”」
「そう言ってくれたんですが!?」
と言うと、ひと呼吸おいたのです。そして、
「一平さんジュースいただきたいのですが!!?」
「よろしいでしょうか?!」
と小百合が言ったのでした。

「俺が先、口つけなくちゃー!?」
「小百合さんも飲みにくいですよねえー!??」
と言って、ジュースをコップ半分ほど飲んだのです。
そのあとすぐ、
「いただきます!?」
と小百合言い、ジュースを一口飲んだのでした。

「小百合さん!?ご趣味はなんですか?!」
と一平が訊くと、
「今、茶道と華道それにお料理を習っていますので!?」
「今は、趣味といえばそれでしょうか?!」
と小百合が言うと、
「なるほどねっ!!?」
と妙に納得した一平でした。

「一平さんのご趣味はなんですか?!」
と小百合が訊くと、
「趣味ですかー!??」
「そうだなー!??」
と言ってから少し考えた一平でした。

「去年ぐらいまでは、学生時代の友人と映画に行ったり!?」
「ドライブ行ったり、ボーリングやビリヤードしたり!?」
「麻雀やったりしていましたけど!??」
「それって趣味っていえるかどうかわかりませんけどねっ!!?」
「そういえば最近!?」
「仕事関係の人たちとの付き合いのほうが、多いかなあー??!」
と一平は言ったのです。

少し間をおき、
「先週だったかなあー??!」
「みんな都合が悪くなって、映画に行かなかったんですよー!??」
「やっぱり、みんなも仕事関係の付き合いがー!?」
「多くなってるのかもしれませんねえー!??」
と、一平は言ったのでした。

「ユーがああなってから!?」
「お友だちからのお誘いもありませんわ!?」
「気を使ってくれていると思うんですけど!??」
「ユーが意識を取り戻してくれれば!??」
と言って、少し涙ぐんだのです。
そして小百合は、隣のイスに置いてあるバッグから、
ハンカチを取り出したのでした。

一平は立ち上がりぐるっとテーブルを回り、
小百合のそばに行ったのです。そして、
「ユーがわたしたちの世界に戻ってくることを、願っていましょう!!?」
「時間がかかるかもしれませんが!?」
「そういう時が訪れると信じてねっ!!?」
と一平は涙をいっぱい溜め、そう言ったのでした。

座って、涙を拭きながらそのことばを聞いていた小百合が、
一平を見上げると、大粒の涙が出ていたのでした。
それを見た小百合はイスを引きゆっくり立ち上がると、
「一平さん!!?」
と言って、ゆっくり抱きついたのです。

一平は小百合を、強く抱きしめたのでした。
ふたりは涙を流しながら、
しばらくのあいだ強く抱き合っていたのです。

「小百合さん!??」
と言って、一平が抱きしめていた力を緩めると、
小百合も力を緩めたのでした。
そして一平と小百合はお互い、
涙をいっぱい溜めている顔を見つめ合ったのです。

「涙で!小百合さんの顔がよく見えないよー!??」
と一平が言うと、
「もっと近づけば、見えるかもしれませんわ??!」
と小百合が言ったのです。

一平は小百合を抱き寄せ、顔を近づけたのでした。
すると小百合が、ゆっくり目を閉じたのです。
「いいの?!」
と一平が言うと、
目を閉じたまま小百合は、軽くうなずいたのでした。
一平は、遠慮がちに軽くおでこにキスしたのです。






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