携帯によろしく 第一章(10)

いよいよ順番が来ました。
係員からの説明を聞き、いざコースターへと乗り込んだのです。
「このショルダーバッグ、この網に入れたただけで大丈夫かしら?!」
育子は心配そうに言いました。

「係員がそう言ってるんだから大丈夫だよ!!」
「もし心配なら、俺のほうの網に入れて、肩ひもを俺が持っててやるよ!」
「それなら安心だろ!?」
そう一平は言うと、育子からショルダーバッグを受け取り、
自分の前の網に入れ、肩ひもを手首に巻きつけました。
「これならいいだろ!?」
と一平が言うと、
「ありがとう!一平ちゃん!!」
と、育子がうれしそうに言いました。

上からアームが降りたので、
「このアームがあると、スリルが半減しちゃうよおー!」
と一平は、こしゃくなことを言ったのです。
いいえ!。そう、ほざいたのでした。
「そーかなあー?!」
「私はアームがあったほうが安心だわ!」
と、育子はそう素直に言ったのです。
サーフコースターは、少しづつ上に上がっていきました。
「これはいいや!」
と、一平は言いながら、上下左右を見ながら、
「アームが邪魔なんだよな!!」
と言ったのでした。(またしてもそう、ほざいたのです!。)

いっぽう育子は、少し緊張していました。
一平はすごくと言うより、異常にうれしそうでした。
育子のほうを見て、
「だいじょうぶ!?」
と言うと育子は、緊張しながらも少し笑顔で、
「わたしはだいじょうぶ!」
「ショルダーバッグ。お願いね!?」
と、言ったとたんに猛スピードで落下してったのでした。

短い時間でしたが、迫力と、スリルを味わうことができました。
時間的には、3分ほどでしたが、けっこう凝っていて、
一平も満足したのです。

降りると、二人が並んでいたときよりも、
列の人数が増えていました。
あたり一面を夕日が照らし出していたのです。
「夜に乗る人も多いのかなあー?!」
「夜。来ようか?!」
と一平が言うと、
「暖かくはなったけど!まだ夜は、寒いわよ!!?」
と、育子が言ったのでした。

「少し腹が減ってきたなあー!?」
「育ちゃん!おいしいお店、知ってるの??!」
と一平が訊くと、
「ごめん!前来たとき、簡単な食事はしたけど、
ちゃんとした夕食は食べてないの?!!」
「どこがいいか、わからないから?!」
と言うと、前を歩いているさっきの高校生の2組のペアに
早足で近づくと、
「ねえ?君たち!」
「この八景島で、おいしいお薦めのお店って知らない?!」
と訊いたのです。

その子達は一瞬びっくりした様子でしたが、
育子が少し笑みを浮かべて訊いてきたので、
4人の中のひとりの男の子が、
「僕たちは、初めてなんです!」
「でも前もって調べたら、バイキングがむこうのレストランの
2階でやっているんで、そこにしようかなって!!?」
「なっ!?」と言うと、
3人が「うん!」と言ったのでした。

「きみたち!高校生?!」
と育子が訊くと、
「はい!」と4人が答えたのでした。
「いいわねえ!?若いって!」
「ありがとう!!?」
と育子は、笑顔でそう言ったのでした。
男の子が「じゃあ!。」と言うと、
頭をぺこっと下げました。
そして、4人でレストランのある方向に、歩いていったのです。

「ねえ!?一平ちゃん!」
「むこうのレストランにバイキングがあるんだって!!?」
と、育子が言うと、
「パンフレットを見たら”海上レストラン”っていうのがあるよ!」
「そっちにする?!」
と一平が言うと、すぐに、
「たかそおー!!?」
「いいわよ!?バイキングで!ねっ!!」
と育子が言ったのです。

「とにかく!レストランがあるほうに、行ってみましょうよ!?」
と育子が言うと、両手で一平の腕を取り、
高校生たちのあとを追いかけるように、
歩いていったのでした。
「海上レストランってのは向こうなんだけど!!?」
と反対方向を見て言ったのですが、
そのことばを無視して、
一平の腕を引っ張って、歩いて行く育子でした。






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