携帯によろしく 第一章(9)

育子が、
「このタワーの説明に、
”地上90mまで、ゆっくり回転しながら上昇していく”って書いてあったから!?」
と言ったので、
「90mかあー!そばで見ると、けっこう高いなあ!?」
と一平はうれしそうに言ったのです。
それから二人は、タワーに乗り込んだのです。
徐々にゆっくりと回転しながら上がっていきました。
上のほうに近づくと、真正面にランドマークタワーが見えたのでした。

「”みなとみらい”までけっこうあるんだあー!!?」
「小さく見えるもんなあー!?」
そう一平が言うと、
「”マリンタワー”と、どっちが高いのかしらねえー?!」
「わたしが初めて横浜に来たとき寄ったのが、
中華街と、マリンタワーなのよ!」
と、育子が言いました。
「デートの典型的パターンだよなあ?!」
「マリンタワーの営業は、去年でやめたみたいなんだ!!」
「ニュースでやってた!」
「そのとき高さも言ってたけど!忘れた!!?」
そう笑いながら言った一平でした。

「だけど、惜しいのよねえー!!?」
下に下がって行きだしたときに、
育子がそう言ったのです。
「えっ!なにが??!」
一平がそう言うと、
「マリンタワーもこのタワーも、水平線に沈む夕日が見られないの?!」
(あじゃあー!!!)
そう育子が言うと、
「当たり前さ!東海岸だから!?」
「西海岸じゃあなきゃ!水平線に沈む夕日は、見れないからね!!」
「そんなに見たいんなら、一山越して、
逗子か鎌倉の海岸に行けば見れるけど、行く?!」
と、一平が言ったのです。

「一平ちゃんごめん!。」
「感想を言っただけだから!気にしないで!!?」
と、育子はあわてて言ったのです。
「ならいいけど!?」
と、一平が言うと、
「上がっていくときはゆっくりに感じたけど、
下がりだしたら早く感じたわ!?」
「一平ちゃん!どおー??!」
と訊いたので、
「俺もそう感じたよ!」
「下がりだしたら意外と速いなあー!?」
そう言っているうちに下に着いたのでした。
二人は、シーパラダイスタワーから降りると、
ジェットコースターのあるほうに歩いて行きました。

「育ちゃん!けっこうならんでるなあー!?」
と、一平が言うと、
「でもこのくらいだったら、割と早く、順番が来るわよおー!?」
「早くならびましょう!」
と育子が言うと、
二人で手をつないだまま、
早足で歩いて列の最後尾に並んだのでした。

「これって、サーフコースターって名前なんだあー!?」
と一平が言うと、
育子が一平の耳元で、少し小さな声で言ったのです。
「ねえ!一平ちゃん見てあの子達!?」
「4人で来たのねきっと!!?」
そう言われた一平は、5、6人前にいた、
高校生らしき男女のペア2組を、見たのです。
同じような服装をしていて、
同じように2組とも、手をつないでいました。

一平はそれを見ると、少しひざを曲げ、
育子の耳元で、
「育ちゃん!高校生だね!?きっと!!」
と、少し小さな声で言うと、
「たぶんね!」
と一平のほうを向きうれしそうに言ったのでした。
育子は、つないでた手を離し、
体を斜めにすると、一平の右腕を両腕で抱えたのでした。

「育ちゃんどうしたの?!」
と、一平が訊くと、
「高校生じゃないから!?」
と、嬉しそうに言ったのです。
一平は、育子の目を見て、
「うん!わかってるよ!!?」
と、言ったのです。
一平は、そんな育子がいとおしく感じたのでした。

二人の後ろに並んでる人が、
「すいません!前につめてください?!!」
と言ったのです。
その声を聞いて、二人は同時に、
「すいません!」
と言い、前の列に早足でつめたのでした。






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