携帯によろしく 第一章(7)

「待ってよ!一平ちゃん!!?」と育子は言うと、
急いでショルダーバッグを肩に掛け、
一平のあとを追いかけたのでした。
レジの前にいる一平の耳元で、小さな声で、
「トイレに行ってくる!」
と言って、トイレに行ったのでした。
一平は、そのことばを聞き、自分の配慮のなさを、
自覚したのでした。

育子がトイレから戻ってくると、
「ごめん!気が付かなくて!!」
と言った一平でした。すると、
「わたしこそごめんね!?」
「待たせて!」と言った育子でした。
二人は、喫茶店ルミネを出ると、駅へと歩いて向かったのです。
新宿の駅から渋谷の駅までは、電車で行ったのです。

「電車代はわたしが出すから!?」と言って、
育子が大人二人分の切符を買ったのでした。
ふたりは、渋谷の駅から、東横線で横浜まで行き、
横浜から京浜東北線に乗り換え、新杉田の駅で降り、
そこからモノレールのような乗り物に乗り、
八景島の駅に降りたのでした。
渋谷の駅から1時間半ほどかかったのでした。

駅から歩いて橋を渡ると、八景島に着いたのです。
「ここで有名なのは、”クリオネ”と、”シロイルカ”ね!。」
育子がそう言うと、
「クリオネって流氷の下に住む生き物なんだよね!」
「小さくて、立ち泳ぎをするんだ!!」
と、一平が言うと、
「よく知ってるわね!?」
「わたしは、前に来た時に知ったのよ!」
「そんな生物がいるのなんて知らなかったの!?」
「なんか小さな宇宙人って感じだったわ!」
そう育子が言ったのでした。

橋を渡るとすぐのところに、大きなメリーゴーランドがあり、
その周りには、オープンマーケットがありました。

「ねえ!?一平ちゃん!おなかすかない?!」
そう育子が言うと、
「今何時だあー?!」と一平は言うと、
自分の腕時計を見たのです。
「もうすぐ1時だよ!」
「どうりで腹がすいたと思った!!」
そう言うと、育子が、
「もう少し歩けば、大きな店のあるところに出るけど!?」
「とりあえずここで、何か食べましょうよ!」
と言うと、一平のおなかが”グーッ”と、鳴ったのでした。

(”チョキ”や”パー”とは、鳴りませんでした。)
(けっして!おなかが”チョキ”や”パー”と鳴ったことを、
想像しないでください!ませ!!)

「えへへ!!」と、思わず笑ってしまった一平でした。
「ごめんなさいね!」
「わたしは、ピザトーストを食べたけど、
一平ちゃんは、一口食べただけだから!?」
と、すまなそうにそう言った育子でした。
そこで、ホットドックと、たこ焼きと、
フレッシュジュース(たぶんそんな名前かな?!)
を買い、二人で食べながら、ゆっくり歩いて行ったのです。

アクアミュージアムに着くと、
「電車代。君が払ってくれたから、ここは俺が払うよ!」
そう言って、一平は二人分のチケットを買ったのです。
「さっきもお金出してもらったのに!い、い、の?!」
と育子が言うと、
「さっきのは金額的にどうってことないけど!」
「ここはちょっと高いなあ!?」
と、少し笑いながら言いました。
そして、建物の中に入ったのです。

建物の中に、大きな水槽や、
アクアチューブという、
エスカレーターに乗って、水中散歩気分を味わえるものがありました。
それからイルカのショーも二人で見ました。
二人とも打ち解けて、楽しく過ごしたのです。

一平は、
「君のこと。なんて呼べばいいのかなあー??!」
と、育子に訊いたのです。
「わたしのこと?!」
「みんなは、”いく”とか”いくちゃん”とか言うけど!?」
と育子が言うと、
「そーだよなあー!?」
「”山形さん”じゃあー!。会社の関係みたいだもんな!」
と、一平は言ったのです。

「じゃあ!?”育ちゃん”で”いく”!」
「なんちゃって!!?」
と一平が言うと、
「おもしろーい!!」
と言って、育子は笑ったのでした。






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