本来コーヒー紅茶などをお出しして、御もてなししなければいけませんが、
インターネットの都合上それができません。
ご自分で好きなものを適当に用意していただき、
キーボードなどの上にこぼさぬよう注意して、
ときどき飲みながらでもお読みくださいませ。 m(_ _)m
一平は、歩いて駅まで向かったのです。
いつもだったら、駅までは自転車で行くのですが、
なぜかきょうは、歩いて行ったのです。
そしていつもだったら、ここから新宿ぐらいの距離なら、
自転車で行くのですが、
なぜかきょうは、電車で行ったのです。
高田馬場の駅から電車に乗り、新宿まではすぐでした。
一平は、電車に乗っている短いあいだに、
いろんなことを考えたのです。
「もし、あの子が未成年者だったらどうしよう!?」
「もし、美人だったらどうしよう!?」
「もし、ブスだったらどうしよう!?」
「もし、高い宝石の勧誘だったらどうしよう!?」
「もし、一緒に男がいて、”俺の女に手を出すな!”
なんて言われたらどうしよう!?」
などと、余計なことを考えていたのでした。
新宿の駅に着くと、歩いて喫茶店のルミネまで行くあいだじゅう、
いろんなことを考えたのでした。
「あの子、今暇だって言ってたけど、ほんとかな?!」
「”あんたでもいいや”って言ってたけど、どういう意味かな?!」
「なぜ、ヨーコって子のとこに掛け直さないんだろう?!」
「電話の声だけで俺の顔がわかるのかな?!」
「ルミネに着いたらどうしようかな?!」
「あ!そうだ!!山本一平ですけど、
誰かから伝言ないですかって、ウエートレスに訊けばいいのか?!!」
などと考えてる、けっこうおバカな一平でした。
交差点にさしかかると、横断歩道の信号機が、
点滅しだしたので、急いで渡ろうとしたら、
携帯が鳴ったのでした。
「もしもし!」と言うと、
「一平ちゃん!元気!!」
「今どこ?!」
と、間違い電話の女性が言ったので、
「あのさー!?君、なれなれしいね!」
「一度も会ったことがないのに!!」
と言うと、
「気にしない!気にしない!!」
「で!今どこなの?!」
と訊いたのです。
「そっちに向かってるところだよ!」
「今、ルミネの手前の交差点!!」
「もうすぐそっちに着くよ!」
と、一平が言うと、
「けっこう行動が早いじゃん!」
「来ないかと思った!!」
「ところで今何時?!」
「時計持ってる??!」
と、間違い電話の女性が訊いたので、
「ちょっと待って!?」と言って、
左手で持っていた携帯電話を、右手に持ち替えて、
左手を高く突き上げて、袖をどかせて、
左の腕にはめている時計を見たのでした。
「もうすぐ10時半だよ!」
と言うと、
「ありがとう!!?」
「じゃあ!待ってるから!?」
そう言うと、すぐに電話を切ったのでした。
「もしもしー!?」と言ったあと、
「なんてヤツだ!!?」
と、言いましたが、
ルミネに行ってから、どういうふうにすれば、
自分だとわかるか訊こうとしたのですが、
電話を先に切られてしまったので、
困ってしまった一平ちゃんでした。
とにかく”待ってるから”と言われたので、
交差点の横断歩道を渡り、
喫茶店ルミネに入った一平でした。
店に入ると、少し奥にウエートレスが見えたので、
誰かから伝言がないか訊こうとして、
奥のほうに歩いて行こうとしたら、
店の窓際の席のところから、
「一平ちゃん!?こっち!こっち!!?」
と、手を振る女性がいたのです。
一平はびっくりして、
自分で自分を指差して、小さな声で、
「おれ!?」
と言ったのです。
おバカな一平は、
なぜ自分が一平だとわかったのかわかりませんでした。
とにかく窓際の席へと歩いて行ったのでした。