明日のことは過去のこと 第三巻 第一章(5)

神の頭の中ではすでに、ほとんどの設計は済んでいたのでした。
図面として表すのに時間が必要でした。
そして、製造するに当たり、
彼らのことばで細かい注意書きを入れるのに、
船団で勤務する者が、ぜひ必要でした。
コンピュータを使った翻訳では、微妙な表現の補助入力が必要で、
そのぶん時間がかかり、神の負担が大きくなり、
精密な部品の設計に、支障をきたす恐れがあったからでした。

神は、宇宙船内の案内を終わると、医療室で、
医療器械の治療技術の練習をしている、ナアムのところに、
レンゲと一緒に行ったのでした。
ふたりは黙ってナアムの練習を見つめていたのです。
そしてしばらく見つめていると、時間がきたらしく、
ナアムの手が止まり、医療ロボットのスイッチを切ったのでした。

「お疲れ様でした。」そう神が言うと、
「ありがとうございました!。
ではまた、あした来る時間の前に連絡を入れますので!。」
「きょうはこれから、医療器械の製造の進み具合の確認と、
船団長招待の食事に向かいますが、支度のほうはよろしいでしょうか?!。」
と、ナアムが言ったのです。

「はい!。コンピュータのスイッチを入れれば、
この宇宙船の防御システムが作動しますから!。」
「もちろん、私たちが乗った宇宙船が出たあとですが!。」
神はそう言うと、ニコッとしたのでした。

ナアムは、神にお辞儀をすると、「では、出かけましょう!。」
と言い、乗ってきた宇宙船に向かったのでした。
「では、先に乗っていますから!。」
そうレンゲは言うと、お辞儀をし、ナアムの後を歩いて行ったのです。
神はコンピュータのスイッチを入れるとすぐに、
そのあとを追いかけて歩いて行きました。

3人は宇宙船に乗り込むと、船団の母船を目ざして出発したのです。
母船に入ると最初の頃とは違い、船体の検査と乗務員の検査は、
ごく簡単なものになっていたのです。
船団長のハーンが出迎えに来ていました。
「お待ちしていました!。」
「先に医療器械の製造の進み具合を見ますか?!。」
とハーンが訊くと、
「そうですね!。ナアムには疲れてるところを申し訳ないのですが?!。」
そう神が答えると、

「神!。ナアムは若いから問題ありませんよ!。」
そう笑いながらハーンが言いました。
「そうですね!。」神も笑いながらそう言いました。
「船団長もご一緒に行きませんか?!。」
そう神が言うと、
「はい!。そう言ってくれると思いました!。」
「喜んでお供しましょう!。」
「レンゲはどうするね?!。」
と、船団長が気を利かせて言ったのです。

「いいんですか?!。」そうレンゲが言うと、
「もちろん!。神もきっと良いと言ってくれるでしょうから!?。」
そうハーンが言うと神も、
「見ておいたほうがよいでしょう!。」
「お休みのところをすみませんが!?。」
と、笑みを浮かべてそう言ったのです。

「では皆さん!。行きましょうか?!。」
そう神は言うと、再びナアムの宇宙船に乗り込んだのでした。
つづいてナアムとハーンと、そしてレンゲが乗り込みました。
4人を乗せた宇宙船は、船団が必要とする、
いろいろな機械や部品などを製造する、専用の宇宙船へと向かったのです。
4人は着くとすぐに、医療器械の製造工程のところに行ったのでした。
行くとすぐに、
「神の宇宙船にある、医療器械とほとんど同じ形ですね?!。」
と、レンゲが言いました。

そのことばを聞いた神が、
「そうです!。基本設計は、
私の管理する宇宙船にある、医療器械と同じですから!。」
「でもこちらのほうが、数倍性能がよいはずです!。」
「より細かな遺伝子治療もできるものですから、
皆さんの寿命も延びますよ!。」
と、言ったのです。

ハーンは、流刑者たちを地球に送り込むために、
テレパシー技の検査と削除、それに記憶能力を落とさずに記憶を削除し、
そしてその検査が主の機械だと思っていたのでした。

「神!。この医療器械は、寿命も延ばせるのですか?!。」
ハーンはびっくりして思わず訊いたのです。
「はい!。私と以前暮らしていた補助任務者ふたりは、
今ある医療器械を改良して遺伝子治療ができるようにし、
寿命を延ばしましたが限度がありました。」
「限られた部品を集めて作ったので!。」
「その頃、この医療器械があれば、今でもまだ、
彼らと一緒に暮らしていたでしょう!。」
そう神は答えたのでした。


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