明日のことは過去のこと 第一巻 第三章(8)

彼女のおなかの中の子供たちは、順調に育っていきました。
かなりおなかが大きくなってきたので、彼女は発育状態を知りたがったのです。
この医療器械では、彼女には数値でしかわからないと言っておいたのですが、
それにも限度がありました。
神は考えたあげく映像を修正して、彼女に見せることにしました。

元気のよい三つ子の映像を見せたのでした。
「どうりで暴れると思いました。」
「三つ子だったのですね!」
彼女はうれしそうに言いました。

彼女が子供を出産する時期が来ました。
自然分娩ではなく、帝王切開で取り上げたのでした。
彼女が医療室に入ってからすでに三日が経ちました。
医療の知識があるのは、神ひとりでしたのですべてをひとりでおこなったのでした。
神は、子供たちのテレパシーわざを使える遺伝子を削除したのです。
しかしこの医療器械では、すべてを削除することはできませんでした。
細かな作業だったので、ひじょうに時間がかかりました。

ひとりにつき6時間前後かかりました。
ひとりが終わると、食事と仮眠で3時間ほどの休憩を入れました。
そして再び手術をしたのでした。
その繰り返しをして、6人全員が終わったのが3日目の夜7時を過ぎていました。
休んではいられませんでした。
6人の子供たちに免疫力の増加する薬と抵抗力の増加する薬をあたえたのでした。
この薬が全身の細胞にいきわたるのに3時間ほどかかります。
神は、そのあいだ仮眠をとったのでした。
起きるとすぐに6人の中の5人を円盤型宇宙船へ乗せ地球へ向かったのでした。

5人の王のそれぞれの神殿に生まれたばかりの男の子を置いてきたのでした。
それから神はテレパシーわざを使い、
ギーザたち5人の王に対して子供を授けることを告げたのでした。
「王よ!。お前の後継者の男の子を授ける!」
「その子は、神殿においてある!」
「大事に育て、立派な王にせよ!」
彼たちはそれぞれが言いました。
「ハッ、ハアー!」
それぞれの王たちは、妻たちに命じ村人全員を集めさせました。
その中から力のある若者を指名して、村人たちに言いました。

「神のお告げがあった!」
「神殿に、男の子がいる。その子が私の後継者になるのだ!」
「これから迎えにいく!」そう言うと、たいまつのしたくをさせ、
王自らが先頭になり、たいまつを持ち若者を従え神殿に向かったのでした。
山を登り神殿に着きました。
王は、ひざまずき男の子を抱きかかえると言いました。
「神よ!この子を立派な王に育てます!」
男の子を若者に手渡し預け、再び先頭で山をゆっくり下ったのでした。

神が地球から戻っても彼女はまだ寝むっていました。
しばらくすると彼女が目をさましました。
神を見るとすぐに言いました。
「赤ちゃんはどこですか?」
「ここにいますよ!」そう言うとひとつのカプセルを見せました。
大きなカプセルの真ん中に小さな赤ん坊がひとりいました。
「あとふたりはどこですか?」
「残念ですが死んでしまいました。」
「この医療器械では、この子の命と、あなたの命を助けるのが精一杯でした。」
神はそう言うと補助任務者二人を呼んだのでした。

ふたりが医療室に来ました。
「彼女は助かったのですか?」
ふたりともいっしょに神に訊いたのです。
彼女は驚きました。そして神に訊いたのでした。
「何が起きたというのですか説明してください。お願いします。」
「わかりました。説明しましょう」
神はそう言うと話を始めました。

「あなたがおなかが痛くなりました。
それは出産の前兆に起こることでしたので時期的に問題はありませんでした。」
「しかしあなたの場合は違っていたのでした」
「体内にいる赤ん坊はへその緒を通じて栄養を得ています。」
「ところが元気がよくておなかの中を動き回っているうちにへその緒が、
ふたりの赤ちゃんどうし、絡み合ってしまったのです。」
「しかも複雑に絡み合って、しかも首にもまかさっていました。」
「それはあなたの命にも危険が及ぶものでした。」

「私は医者として決断しました。」
「あなたの命と、ひとりの赤ん坊の命を助けると!」
「二日に及ぶ手術をおこないました。」
「そして二人の赤ん坊は残念でしたが、
あなたの命と、ひとりの赤ん坊の命を助けることができました。」
「この医療器械ではそれが精一杯の処置でした。」
神が疲れきった表情で話したので、彼女も涙ぐんで言いました。

「私は、眠っていたので何にもわかりませんでした。」
「あなたが苦渋の決断をしたのはよくわかりました。」
そう言うと大きな声で泣いたのでした。
彼女の泣き声を聞いた神と補助任務者のふたりも、一緒に大きな声で泣いたのでした。
彼たち3人は、彼女にうそを言い申し訳ないと思い、泣いたのでした。


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