明日のことは過去のこと 第一巻 第三章(4)

ふたりとも2時間ほど眠ってしまいました。
神が眠りからさめると彼女はもう起きていました。
そしてかまどのところで火を熾していたのでした。
一生懸命やっているのですがなかなかうまくいきません。

神は横になってその様子を見ていました。
うまく火を熾したところで声をかけようと思ったのでした。
火は完全に消えていましたが、
奥の下のほうには少し種火があるのがわかっていました。
しかし、うまくいったらそのことは今は言わないでおこうと思っていました。

彼女は途中休みを入れながら一生懸命、火を熾していました。
だいぶ時間がかかっていたので奥の種火ももう消えるだろうと思ったので
声をかけようとしたら、
「できた!」と、大きな声で彼女が言いました。
かまどの火がまた燃えてきました。

神は今起きたような振りをして彼女に聞きました。
「どうしたんだい!?」
彼女が駆け寄ってきました。
「できたんです!。火を熾すことができたんです!。」
彼女は本当にうれしそうに言ったのでした。
そして、立ち上がった神に抱きついたのでした。

「よくできたね!。火を熾すのはコツがいてむずかしいんだよ!」
彼女はその言葉を聞いたとたんにうれしくて泣き出してしまいました。
神は、彼女の涙を口で吸い取ったのでした。
涙がほほから伝わり唇に達したときに涙と一緒に唇も吸ったのでした。

ふたりとも初めての体験でした。
彼女は、涙でぬれてる唇で神の唇を吸ったのでした。
お互いが顔を見合わせて言いました。
「しょっぱいね!」
そしてまた唇と唇を吸ったのでした。
これが地球上でのキスの始まりでした。

神のおなかが「グー」と、鳴りました。
それを聞いた彼女は、笑って言いました。
「ご飯にしましょう!。小川で顔を洗ってきてください!」
「わかりました!。奥様!」そう答えた神でした。

神が小川から戻ってくると彼女がニコニコしながら言いました。
「きのうとった芋をすって焼いてみました。」
「くだものは教わったように熟したものをとって来ました。」
「どうぞ、食べてみてください!」
「ありがとう!」
神はそう言うと、芋から食べ始めました。
「おいしいよ!」と、ニコニコしながら食べたのでした。

二人で食事をした後に砂浜に行き貝を採る練習をしました。
足でゴソゴソ砂をかくと、小さな貝は簡単に取れました。
そのときに小さな蟹も出てきたので捕まえてみました。
簡単にとれたので彼女は楽しそうでした。
いったん家に戻りました。

大きな海老や蟹をとるモリの作り方を教えたのでした。
やわらかめの石と硬い石とをこすり合わせて徐々に作っていくのでした。
実際にやって見せました。
彼女も試しましたが時間がかかるので神が作っておいたものを使いました。
乾燥させておいたあんまり太くない竹にそれをツルで巻きつけたのでした。
作ったモリと、ヤギの皮でできた袋を持ってふたりで家を出ました。

こんどは岬のほうに砂浜を歩いて行きました。
途中のところの石があるところでは少し大きな石をどかすと、
小魚や小さな海老やさっきよりも大きな蟹がいました。
だんだんと石が岩に変わりそれにつれて、蟹や海老が大きいものに変わっていきました。

きのう、彼女は蟹や海老が逃げるのが早いのを見ていたので、
自分がモリでつけるか不安でした。
「逃げ足が速いんで、わたしに突けるでしょうか?!」
「練習すれば突けるようになります。きっと!」
「火を熾すことができるようになったのですから、大丈夫です!。」
最初神がお手本を見せました。

蟹はいっぱいいたのですぐ突くことができましたが、海老がなかなか見つかりません、
やっと暗い岩陰にいるのを見つけて突くことができました。
彼女は、いっぱいいる蟹でモリを突く練習をしましたが、うまくいきません。
潮の流れと光線の関係で狙ってもうまく当たりません。
何度も失敗を繰り返しましたがやっと突くことができました。

「あんなにいるのですぐ突けるかと思ったのですが、思うようにいきませんでした。」
「よかった!」
そう言うと彼女はうれしそうに笑ったのです。
日はもうかなり傾いていたので帰ることにしました。

二人は家に着くと、すぐに食事の準備にとりかかりました。
神はすぐに火を熾して石を熱する準備をしました。
彼女は、くだものをとりに行きました。
石が熱くなるまでのあいだに、芋を二人であしたの分までとりに行きました。
戻ってくると石は熱くなっていてちょうどいい感じでした。
ふたりで楽しく食べ終わったあと、きのうと同じように夕日を見に行きました。

夕日を見ながら神は小さな声で言いました。
「きょうで最後か!」
「え!?」彼女は聞き返しました。
「二人だけで夕日が見られるのが!あしたは帰るから!」
「そうですね!」「でも、帰っても一緒にいられるから!」
彼女はうれしそうに言いました。

その言葉を聞いたとたんに神は彼女を抱き寄せました。
彼女は神の胸に顔をうずめました。そして言いました。
「しあわせです!」
神は彼女の髪をなでながら言いました。
「そうだね!」涙があふれていました。


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