明日のことは過去のこと 第一巻 第三章(3)

神は、彼女をいとおしく、かわいくてしょうがありませんでした。
やさしく、時間をかけて接したのでした。
彼女も、心から愛されていることを感じていました。
この晩ふたりは、何度も愛し合いました。
心身ともに夫婦となったのでした。
そしてふたりとも心地よい眠りについたのでした。

彼女が朝目覚めると、
神はもう起きていて、かまどのところで何かやっているようでした。
家の近くには小川が流れていました。
それは山の中腹の湧き水が源流でした。

「おはようございます。もう起きていたんですか?」
「おはよう!」
「朝ごはんのしたくをしましたから食べましょう!」
「はい、その前に小川で顔を洗ってきます。」
「そうですね。そうしてください」

彼女はそう言ってはみたものの、宇宙船で使っていたタオルや歯ブラシ、
シャンプー、石鹸など何もないことに気がついたのでした。
そして、自分が裸であることも、それから急に恥ずかしくなってしまいました。
神は忙しそうに動いていました。
それを見ると、声をかけずに小川へ向かったのでした。

彼女は、小川につくと水に手を入れてみました。
あまりに冷たかったのですぐ手を水から上げました。
彼女は「もっと地球のことを勉強しとけばよかった」と思いました。
補助任務者としての能力を高めようと必死だったので、
その他のことは浅い知識しか得ていませんでした。
とりあえず顔と手足を洗い、日なたで少し乾かして戻りました。

神は彼女が戻ると言いました。
「だいぶ時間がかかったけどどうかしたの?」
「いいえ、どうもしません。タオルがないので洗ったあと日なたで乾かしていたんです。」
「タオルがないかあ。そうだね!」
「宇宙船と同じに行動しようとしても無理なんです」
「この地球はまだちゃんとした文明が育っていません。」
「人間も植物も動物もすべてが進化の途中なのです」
そう言って彼女に近づき、彼女を抱きしめて言いました。

「地球で暮らす限り地球人として行動しなければなりません」
「母星から来た人間として行動してはだめなのです。」
「道具や機械やセンサーがあれば簡単にできるのに、と思ってはだめなのです。」
「いま私達は、この時代に生きる地球人なのです!」

神はこの言葉を言うと彼女ががく然となることは予測していました。
この後どうなるかわかりませんが、しかしあえて言ったのでした。
「え!」そう言うと彼女は座り込んでしまいました。
神は膝まづき彼女の両肩に手を添えて顔を見つめて言いました。

「どうしたんだい急に座り込んで?!」
「私は記憶を失った後、皆さんにはげませれて、一生懸命勉強して
補助任務者として二人の方々と同じくらいに、
宇宙船の機械、コンピュータの操作や修理ができるようになりました。」
「でもこの地球では何にもわからないし、できません」
「今までやってきたことは何の役にも立ちません!。」
彼女はぽろぽろと大粒の涙をこぼしながら言いました。

彼女を抱き寄せて言いました。
「どんな人でも、知っている事より知らないことの方が多いんだよ。」
「ましてやあなたは、いままでの記憶をすべて失ってしまったから、余計そう思うかもしれない」
「知らないこと、わからないことがあったらひとつひとつ、憶えていけばいいんだ!。」
「経験しなければ、わからないことも多いいんだよ!」
神はやさしくそう言うと、彼女の顔に唇を当て流れてくる涙を吸い取ったのでした。

彼女は、びっくりして泣くのをやめたのでした。
そして神は、微笑みながら言いました。
「あなたの涙はしょっぱかった」
彼女は笑みを浮かべて抱きついたのでした。
「強く抱きしめてください!。」
彼女は目をつぶり心のそこから愛を感じたのでした。
二人は抱き合ったままゆっくりと横になりました。
彼女はずっと目を閉じたまま、神のなすがままに心も身体もすべてをゆだねたのでした。


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