明日のことは過去のこと 第一巻 第三章 (2)

神が海から戻ってきました。
袋の中には海水が入っていました。そして大きな貝と海老、蟹がいました。
彼女は、作ったわらじのような物をさっそく見せました。
「できました!。」
「すごくよくできたね!。初めてなのに私よりうまいよ!」
そう言うと彼女をやさしく抱きしめました。
「ほんとうですか?」
「ほんとうだよ!」
そう神が言うと彼女は「ニコッ」と笑いました。

神が海に行っている間じゅう、かまどに火を燃やしていました。
石で作った板状の上に少し大きめの丸い石を敷き詰めておきました。
貝は先に取り出しておきました。
その石がものすごく熱くなっていたのでした。
それを海水と海老、蟹の入った袋に、割った竹をスプーンのように使って、
半分ほど次々に投げ込んだのでした。
「ジュー。ジュー。ジュー。」という音がしました。
海老や、蟹がしばらくすると、一気に赤くなり茹で上がりました。

とってきた貝は、熱くなっている石の上においておきました。
二枚貝は、しばらくすると口を開けたので身を出しました。
巻き貝は、竹の串を刺してくるくると身をとり出したのでした。
しかし貝は毒のあるものや菌をもったものがいるので、
毒や菌をはかるセンサーをもっていなかったので食べるつもりはありませんでした。
貝殻がほしかったのです。
大きな2枚貝は何かを煮るときや皿の代わりに使いたかったのです。
大きな巻貝は、コップの代わりや、水筒の代わりに使いたかったのでした。

神は、わらじのような物を彼女にはかせると海に連れて行きました。
二人で手をつないで海に入っていきました。
遠浅の海を少し沖まで行きサンゴのあるところに連れて行くと、
顔を水の中につけて、目を開けるように言いました。
彼女は言われるままにしました。
水の中で目を開けるとサンゴの周りには色とりどりの小さい魚が、
たくさんの群れをつくり泳いでいました。

「なんて、きれいなんでしょう」そう思いました。
息の続く限り見ていました。そして顔を上げて言いました。
「ここは、景色もきれいで海の中もきれいなんですね!」
「海の水はしょっぱいんですね!」
彼女ははじめて実際の海を知ったのでした。記憶を消されてから!。

「気に入ってくれた?」
「もちろんです。!」そう言ったあと、
ふたりは抱き合ったのでした。

二人は、手をつないで浜に戻りました。
海岸沿いに行くと岩がだんだんと多くなり岬にでます。
岩が多くなったところにはたくさんの海老や蟹が生息していました。
岩や岩についている貝などで足を切らないようにわらじのような物を作ったのでした。
神がときどき水の中に顔を入れて何かを探しているようでした。

手を振り彼女を呼びました。
そして彼女に水の中に顔を入れるように言ったのでした。
岩の隙間からのぞくと海老や蟹が5,6匹いるのが見えました。
彼女がのぞいてしばらくすると1匹もいなくなってしまいました。

彼女が顔を上げたので「見えた?」そう訊くと、
「水に顔を入れたときには、
5,6匹見えたんですが、しばらくするとみんないなくなりました。」
そう答えると、
「逃げ足が速いからね!」
「食べられちゃいけないと思って逃げたんだよ!、きっと!!」
そう笑いながら神は答えました。
彼女も「そうですね!」と、笑いながら言いました。
日もだいぶ傾いてきたので家に戻ることにしました。

とって来ておいた蟹と海老と芋で、少し早めの夕食をとりました。
くだものも少し食べました。
二人で夕食のあとかたづけをしているころになると、空が徐々に赤く染まってきました。
そしてかたづけが終わる頃には、夕日がオレンジ色に輝きました。
ふたりで浜に夕日を見に行きました。

彼女が言いました。
「これが夕日というものなんですね!。」
「なんて!、きれいなんでしょう!」
神は笑いながら言いました。
「きょうは、「なんて!、きれいなんでしょう!」連発だね!」
彼女は言いました。
「だって、ほんとうなんですよ!」
「わたしにとって、初めての体験ばかりなんですもの!」

夕日が沈みはじめた頃に神は言いました。
「完全に沈んでしまうと足元が危ないから、もう家へ帰ろう」
彼女はうっとり夕日を見ていましたが、
神にそう言われると素直に従い手をつないで家へ帰りました。

家の入り口に着くといきなり彼女を抱きかかえました。
抱きかかえたまま家の中に入りました。
そして彼女を仰向けに寝かせると言いました。
「あなたを心から愛してます」
彼女も言いました。
「私もあなたを心から愛しています。しあわせです!」
夕日が海に沈むように、彼女の身体の中に神自身を沈めたのでした。


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