明日のことは過去のこと 第一巻 第二章(4)

神は、彼女がこの宇宙船に来て、その姿を見て以来、
初恋の人に似ていたかもしれませんが、好意的でした。
そしていとおしく、徐々に彼女に惹かれていくのを感じていました。
いっぽう彼女も、最初は医者として、
尊敬のまなざしで見ていましたが、それが彼に対して好意的になり、
それが愛情に変わっていったのを、感じていました。

犯罪者の彼女を、愛してしまっている自分と、
地球の管理者としての、自分の立場とのあいだにたって、
神は苦悩していました。
彼はときどき、緊急脱出用の宇宙船の前に立って、
考え事をすることがありました。

神と彼女が抱き合ってから、二人の愛が膨らんでいきました。
神は、彼女との愛をはぐくんでいるあいだも、
これから先、管理者として、
どういう対応の仕方をすればよいか、考えていました。

宇宙船のデータにある、母星の法律に追加文を書いたところもあり、
削除したものもありました。
古い宇宙船に、たびたび行くようになりました。
緊急脱出用の宇宙船の中に入って二人の補助任務者と、
何時間もいることも多くなりました。

神は、彼女に訊かれる前に言ったのでした。
「新しい宇宙船の緊急脱出用宇宙船に、不具合な箇所が見つかりました。」
「新しい宇宙船の部品を使って、直さなければなりません。」
「古い宇宙船の部品をその補充として使うのですが、
技術的に難しいところが多くあるので、
時間がたいへん多く必要です。」
「あなたの負担が多くなりますが、協力してください。」
「お願いします。」

「あなたのためなら喜んで協力します。」
彼女はうれしそうに答えました。

二人の補助任務者に、神が作った設計プランを見せ、
彼らにはすべて本当のことを、話したのでした。
彼らは、びっくりして神に聞きました。

「あなたはほんとうにそれでよいのですか?」
「あなたたちにはたいへん申し訳ありませんが、この先のことを考えると、
それが一番よい方法ではないかとの、結論に達しました。」
「われわれは、もうこの先短いのでかまいません。」
「本当のことは彼女には話していません。ご協力をお願いします。」
「もちろん全面的に協力いたします。」二人が答えました。

「彼女は、何にも知らないほうがよいと思います。」とひとりが言うと、
「わたしもそう思います。それのほうが幸せでしょう。」
もうひとりも答えました。
「ありがとうございます。たいへんですが、よろしくお願いします。」
三人で手を取り合ったのでした。

彼ら三人で、新しい制御装置を作っていくことになりました。
そのあいだ彼女の負担は非常に多くなりましたが、
彼らの、「ありがとう。」「助かるよ!」と言う言葉に励まされて、
がんばっていました。
神もそれまで以上に彼女に愛情を注いだのでした。

新しい制御装置には新しい宇宙船の部品を惜しみなくつぎ込んだので、
新しい宇宙船の機能自体は、古い宇宙船の機能に近づいてしまいましたので、
彼女の負担も、どんどん多くなっていきました。
3ヶ月が過ぎ、6ヶ月が過ぎる頃になると装置は完成しました。

探査用の宇宙船に載せて、機能のテストをしなければなりません。
小惑星郡のところまで行き機能のテストをしました。
もうひとつの宇宙船に神が乗り、
地球に行き、機能がうまく働くか検査をしたのでした。

地球のあらゆる場所に行き、機能が正常に働くか検査をしたのでした。
三日かけて検査をしましたが、
磁場の関係で、機能が届きにくいところがありましたが、
おおむね正常に働きました。

こんどは、小惑星郡のいろいろな場所で、テストをしました。
10日かけて、小惑星郡のいろいろな場所から地球へ送信して、
機能が正常に働くか検査をしたのでした。
問題点が見つかりました。
何か所かで、送信できない場所が見つかったのでした。
改良しなければなりませんでした。

3人で意見交換して、どのような方法が一番よいか、検討したのでした。
神が設計を変更して、改良した装置を、みんなで作りました。
小さなコンピュータ制御の移動できる、増幅装置も作りました。
小惑星郡の中に紛らわせたのでした。
数は最初50個作りました。
それで十分でしたが、先のことも考えもう50個作りました。
問題なくすべての小惑星郡の場所から装置が働くのを確認できました。


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