明日のことは過去のこと 第一巻 第二章(3)

彼女が目覚めた最初の日は10分起きていました。
次の日は20分。次は30分。と、
10分づつ増やして6日間そうしました。
次の6日間は20分づつ増やしていきました。
次の6日間は30分づつ増やしました。

起きているときはいつも神と補助任務者二人が話をして、
昔のことを本当にあったように話したのでした。
神は起きてるあいだじゅう彼女のからだをどこかしら、
愛情を込めてマッサージをしていたのでした。
彼女が口にするものを液体から流動食そして地球で取れた野菜、
果物に変えていきました。

次の6日間から、徐々に自分でからだを、
ベッドの上で、動かすようになりました。
そして30分づつ、起きてる時間を増やしていったのでした。
次の6日間は、歩く練習をしはじめました。
最初の日は5分。次の日は10分。と、
5分づつ歩く時間を、増やしていきました。

地球でとれた物を、彼女は好き嫌いなく食べました。
次の6日間も歩く時間を、1日5分づつ増やしていきました。
それからは、毎日1時間づつ歩くようになりました。
必ず誰かが付き添いながら、話をしたのでした。

かんたんな機械の操作の仕方なども、徐々に教えていきました。
2ヶ月過ぎてからは、歩く時間を2時間に増やしました。
3ヶ月過ぎると、3時間に増やしました。
それからは、6日過ぎるごとに、1時間づつ増やしていきました。
4ヶ月半ばを過ぎる頃には、みんなと同じように歩くようになりました。

そしていろんなものを憶えさす量も、少しづつ増やしていきました。
6ヶ月が過ぎると知識だけではなく、実体験をして技術も憶えていきました。
1年を過ぎる頃になると、彼女はみんなの期待どおりに、
宇宙船内のすべてを、ひととおり理解したのでした。

ときどき、いままで神たちが住んでいた、
古い宇宙船にも、行くようになりました。
どのくらい新しい宇宙船が、進歩しているか、
その内容を、勉強しに行ったのでした。
そのときはいつも誰かひとりついて、
いろいろな事について説明や解説をしました。

古い宇宙船は、新しい宇宙船に比べて、一回り小さかったのでした。
2年を過ぎる頃になると、基本的なことはすべて理解しました。
3年を過ぎた頃には十分な知識と、技術を持った補助任務者として、
任せられるまでになりました。

彼女は、宇宙船内はすべて理解してましたが、
1つの部屋だけは、入ったことがありませんでした。
彼たちの説明によると、その部屋は、母星の自然を再現してあり、
あまり大きくはならない動物、植物がいるということでした。
すべてコンピューター管理されていて、
私達は何にもしなくてもよい所だということでした。

母星の自然のことは、
スクリーンで映像を見たり、データを見たりしていましたが、
本物を知りませんでしたので、入ってみたかったのでした。
ずっとそう思っていましたが、なかなか言い出せませんでした。

彼女は3年も6ヶ月ほど過ぎた、仕事にもなれた頃、
思いきって、神に訊いてみました。
「管理者、母星の自然を再現している部屋に、
1度入ってみたいのですが、許可してもらえないでしょうか?。、」
神は答えました。

「あなたは記憶にないかもしれませんが、約108年半ほど前に、
7人の補助任務者が母星に戻ってから、たいへん忙しくなりました。」
「私達は一生懸命7人分をこなしました。なれるのに1年かかりました。」
「慣れてきて少し余裕ができたときに、みんなで誓ったのです。」
「これから先、交替要員が送られてくるのはいつになるかわかりません。」
「母星を思い出すのは止めましょう。」
「この部屋にはもう入らないことにしましょうと!。」

彼女は申し訳なさそうな顔をして聞いていました。
神は続けて言いました。

「あなたには記憶がなくなって、酷かもしれませんが、
100年以上待ち続けているのです。」
「彼ら二人はもう歳です。いつまで生きられるかわかりません!。」
「彼らもきっと、あの部屋には入りたいと思います。」
「しかし母星のことは忘れようとしているのです。」
「ですから、同じように母星のことは、忘れてください。」
「わたしたちのふるさとは、母星ではなく、もうこの地球なのです。」

彼女はそのことを聞いて、涙を流して神に、抱きついたのでした。
「申し訳ありません。私は、記憶がなくなって憶えていませんが、
あなた方3人は鮮明に記憶しているのですね。」
そう言ったあと、「申し訳ありません。」と何度も涙声で繰り返すのでした。
「いいんだよ。」「いいんだ!。」と言って、
彼女を強く抱きしめたのでした。


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