明日のことは過去のこと 第一巻 第一章(8)

まずすべての長老たちの年齢と存命見込み年齢を計算しました。
計算の誤差は、プラス、マイナス10%程度でした。
しかし地球上では、神と言えども直接手術などはできない決まりでした。

宇宙船に連れてくれば問題はありませんでしたが、
遺伝子の修復まではできましたが、新しい遺伝子を作り、
それを埋め込むほどの、医療設備はありませんでした。
存命見込み年齢の多い者を、
長老たちを束ねる”王 ”という者にしたのでした。
神の下に王を作ったのでした。

神は長老たちに言いました。
「長老よ、お前たちを束ねる王というものが存在する。」
「神の下に王がいて、その下にお前たち長老がいるのだ!。」
「長老のお前が死ねば村人たちは、王の支配下になる。」
「村人たちによく言い聞かせるのだ。いいな!。」
「神が王に長老が死ねば村すべてを与えることを知らせるのだ!。」
「そして王に従うことを!。」

一番存命見込み年齢の多い者はギーザでした。
こちらに送られてきたときは100歳でしたので、いまは150歳です。
存命見込み年齢は約250歳という予測でした。
他にも200歳以上を超えるものが4人いました。
その者たちを王として地球上に誕生させたのでした。
長老が死ぬたびにその村を王の支配下にしたのでした。

王は長老に代わって村人たちの中から知恵があり村人たちから尊敬され、
信頼できるものを選ばせたのです。
その人間を村長と呼ばせました。

村長は、その親族が代々受け継ぐようにしたのでした。
それは、最初の頃はうまくいっていたのですが、代が何代もなると、
能力が村人から落ちると思われる者でもなれることに、
不満を言う者がでてきました。
問題のないそのまま受け入れている村もありましたが、
その数はどんどん少なくなっていきました。

村の中での権力争いが、頻繁に起こってきたのでした。
そのたびに王の命令で、王の支配下の村人たちが行って、
争いを止めさせていたのでした。
王の支配下の村が増えてくればくるほど、争いの数も多くなってきたのでした。

神は迷いましたが王に命じて、体の大きい腕力のある者を各村々から、
集めさせて王直属の軍隊を作らせたのでした。
力で人々を抑えれば必ずいつかはまた不平不満が出てきて、
争いが起きることを知っていたのですが、母星から送られてくる者を待つには、
時間が必要でしたので、苦渋の決断をしました。

神はそれから神を補佐して、
データの収集や機械の修理など細かなことをやってくれている、
二人の補助任務者の、延命のための、治療をしていました。
生命に関わるような突然変異遺伝子の検査を、
毎日するのが日課になっていました。

そしてそれを見つけると、ただちに突然変異遺伝子の抹消をして、
治療していたのです。
神ひとりの力だけでは、宇宙船の機能の維持や地球のデータ分析、
地球人の管理などいろいろなことを掌握できなかったからでした。
7人の補助任務者が母星へ戻ってから100年が経ちました。
彼ら二人はすでに650歳になっていました。

そして神も彼らも彼ら自身の体力の衰えだけでなく、
能力の低下を、認識し始めていました。
神に彼ら二人は提案を言ったのでした。

「管理者。われわれもいつまで生きてられるかわかりません。」
「われわれはもう歳です。あなたはまだ若い!。」
「母星から送られてくる者が、いつになるかわかりません。」
「われわれが生きているあいだに、あなたの子孫をつくってほしいのです。」
「あなたが気に入った、地球人の女をここに連れてきて、
子供を産ませ、育てるのです。」
「わたしたちがその子を教育して、
われわれが持っているすべての能力、知識を与えたいのです。」

彼らにとってこの提案は苦渋の決断であり、
母星の法律に触れることでした。
犯罪者になることを決意しての提案でした。

神は言いました。
「ありがとうございます。」
「私もそのことは、考えていました。」
「わたしたち全員が死んでしまったら、
母星から送られてきた者の処遇を、処理できないからです。」
「しかしながら、医者として突然変異の危険があることを認識しています。」
「これは、子孫のことを考えると、とても重要なことです。」
「そして子供ができても、その子供に、
わたしたちのような能力がそなわった者が現れるかは、未知数です。」

神は、さらに続けて言いました。
「わたしたちは、何万年もかけて進化してきました。」
「進化の過程ではそれが一番重要です。それは時間です。」
「時間をかけて進化することにより、
肉体的、精神的、突然変異の危険をかなり抑えることができます。」
「あと10年待ってください。」

その言葉を聞くと片方の補助任務者が声を詰まらせながら言いました。
「あなたの苦しみはわかりました。待ちましょう。」
もうひとりも涙をためて、うなずくのでした。


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