明日のことは過去のこと 第一巻 第一章(4)

今までの長老が去り、新しい長老ができたので、
お祝いをすることになりました。
村人たちは川や海へ、魚や貝を取りに行きました。
山へ行き、木の実や、芋などを採りに行く者もいました。
若者たちの多くは、狩に行きました。

そのあいだに新しい長老は、神に捧げ物をする神殿に向かいました。
各村には、山奥に必ず一つの神殿がありました。
そこに行けるのは、長老と、長老が許可した者だけでした。

新しい長老のギーザが薬を作る道具をすべて持って神殿に行きました。
着くと神の声が聞こえました。
「いいか、わたしの言うとおりに、薬を作るのだ!。」
「この薬を飲まなければ、長老として認められない。」
「長老としての資格を得る薬だ。いいな!。」
「はっ、はあー。承知しました。」新長老ギーザが答えました。

そして神が言ったとおりの薬草を採ってきて、
言われたとおりに調合して、薬を作りました。
それからその薬を、飲み干しました。

神は言いました。
「あすの朝、赤い血の混じった小便がでる。」
「これは、お前が長老となった証のものだ!病気ではないから心配するな!。」
「この儀式のことは、お前に後継者ができても話してはならない。いいな!。」
「はっ、はあー!。」「わかりました!。」
そういえば、この儀式のことだけは、前の長老から聞いていませんでした。

「これから長老として、威厳を持って勤めるのだぞ!。」
「いつも見守っているからな!。」
「宴のしたくが始まるから、戻りなさい!。」そう言われると
「はっ、はあー」と言ったあとすぐに、村に戻って行きました。

日が少し傾いてきたときにギーザは、村に着きました。
村では宴のしたくが始まりました。
男も女も、自分がとってきたものを、調理していました。
村ではすべて、煮るか、焼くか、干すかしたものを食べていました。
生で食べるのは、果物だけでした。
それが村のしきたりで、昔から伝わったものでした。
火は、長老の妻たちが交代で、消えないように番をするのが、村の掟でした。

朝早く村の妻たちがその火をもらいに来るときに、
貢物を持ってきましたが、
その家によって持ってくるものは、代々決められていました。
獣の肉を持っていくのは、若者の役目でしたが、取れたときに、
一番最初に長老のところに持っていくのが、掟でした。
長老が好きなところを取り、そのあとにみんなで分けるのでした。

夕日が沈む頃から宴が始まります。
一番最初に、最年長者の男が、長老のところに貢物を持って行きます。
以下、だんだんと順番に年齢がさがっていきます。
小さい子供や赤ん坊は、親が貢物を持って一緒に行き、
長老の前に置いていきます。
必ず、大きな声で名前を言います。

病気やけがのものは、
その身内または親族が、代わりに貢物を持っていきます。
そのとき必ず、本人の名前を言い、理由を述べなければなりません。
男が全員終わると、今度は、女の番です。
やはり最年長者の女が最初に貢物を持っていきます。
最年長者とは、あくまでも貢物を持って歩いて運べる者を言います。
代理のものは赤ん坊のあとになります。
村人全員が貢物を持っていくのが掟です。

こんどは、新しい長老の妻を選びます。
前の長老の妻の中から、必ず一人は、選ばなければなりません。
長老の妻のしきたりなどを、いろいろ教えなければならないからです。
5人以上で、同じ家族から一人と決まっています。これも掟です。
気にいったからといって、姉妹をむかい入れることはできないのです。

そして、新しい長老の妻として、
受け入れられなかった前の長老の妻は、全員、
神へのいけにえとして、差し出されるのでした。

新しい長老ギーザは、前の長老の妻2人を選びました。
残りの3人は、神へのいけにえとなります。
3人が泣き叫ぶ中、
男たちが取り押さえて、竹でできたタンカのようなものに仰向けに寝かせ、
両手両足広げて、手首足首を竹にくくりつけて縛りました。

そして新長老は、3人の鼻の穴に薬を急いで塗っていきました。
すると、3人ともすぐに静かになりました。
それは、眠り薬のようでした。

それが終わると、新妻を選びます。
彼は4人選びました。
長老に好かれなければ、
いけにえとなってしまうということを、見せるためでもありました。

新長老は、体格のよい若者12人を選びました。
山の神殿まで、3人の前の長老の妻たちを運ぶのです。
新長老がたいまつを持って、一番前を歩きます。
若者4人に1本のたいまつがわたされ、それを交代で持って登っていきました。
山道なのでかなり時間がかかりましたが着きました。
神殿の前に3人を置くとまた鼻の穴に薬を塗りました。

新長老は、言いました。
「みんな、急いで戻るぞ!」
「ハッ、ハアー」と若者たちが答えました。
そして山道を足早に戻っていきました。


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