明日のことは過去のこと 第一巻 第一章(3)

長老は、妻5人と若者4人を先に、村へ帰らせたのでした。
そして村にはすぐ帰らないで、薬草のある場所を、
次の長老になる男のギーザに教えました。
それから村に帰って、こと細かく薬草を使っての薬の作り方を教えました。
100日かけてすべてを教えたのでした。
教えてるあいだに、村人が病気やけがをしたときには、
ギーザが長老が見守る中、薬を調合して手当てをしたのでした。

長老は、ギーザにすべてを教え終わると、
101日目の朝、神の声を村人たちに告げました。
「わたしは、これから神のお告げにより、
仙人になる修行をしなければならない」
「山深く入って行く」
「神のお告げでこのギーザが新しい長老だ。みなの者わかったな!」
そう言うと、
「ハッ、ハー」
と、村人たち全員が言いました。
長老はひとりで、山の奥へ入っていきました。

長老が山奥に入ると、神の声が聞こえました。
「お前は、よく長老の役目を果たした。」
「大きな杉の木の向こうに、木の生えていない草だけの土地がある」
「そこに来るのだ!。いいな!」
「はっ、はー」長老が答えました。

長老が行けども行けども杉の木にはたどり着きません。
太陽が真上に来たので、焼いた芋や干し肉、干し貝などの
保存できる食べ物を村から持ってきていたので、その一部を食べました。

そして休んでいるところに1羽のカラスが飛んできて、
うるさく「カー、カー、カー」と鳴きました。
その声があんまりうるさいんで長老はカラスに向かって言いました。
「カラス。なぜそんなに鳴くんだ!」

すると驚いたことにカラスが答えました。
「カラスのかってでしょー!」
長老は、びっくりしました。
そうでしょう、カラスがしゃべったのですから。
カラスは、そう言うと杉の木に向かって飛んで行きました。
実は、神のいたずらでした。

しばらく歩くと熱くなってきて、のどが渇いてきました。
しかしこの近くには、小川もありませんし、湧き水もありません。
やぎの皮に入れといた水は、小さい穴が開いていたらしく、
先ほど休んだときには、すでにほとんどありませんでした。

長老が「もう少し先に行けば、湧き水があるかもしれない。」
そう思った瞬間でした。
晴れていて雲もないのに天から雨が降ってきました。
しかも長老のところを中心に半径2メートルほどの範囲だけです。
やぎの皮でできた水筒を大きく広げて水を入れようとしました。
そして同時に大きく口を広げて水を口に入れたのでした。
長老は心の中で叫びました。
「神様。ありがとうございます!。」
雨は5分ほどでやみました。

長老は、歩き続けました。
夕日が空全体をおおう頃にようやく、大きな杉の木にたどり着きました。
その杉の木の向こうには、木の生えていない広場のような場所が、
100メートルほど広がっていました。
その先はまた木が生えていました。
「神が言った場所はここだ!」そうつぶやく長老でした。

そしてまもなく、その広場の上に、黒い大きな影が現れました。
するとすぐにその影が、大きな物体に変わりました。
幅が30mぐらいで高さが12mぐらいの円盤のような形のものでした。
その物体は、草がはえてるところから5mぐらい上に浮かんでいました。

神の声が聞こえました。
「この物体の下に来るのだ!」
そう言われると、すぐに歩いていきました。
下に着くと、オレンジ色の光線が出て、
長老は中に吸い込まれるように、入って行きました。

そして長老が円盤の中に入ると
テレパシーで、「わ、た、し、が、神、だ!」
といいながら、近づいてくる者がいました。
その顔を見て長老はびっくりしました。
すべてが人間と同じ形をしていたからです。

長老は思わず訊ねました。
「あなたは、ほんとうに神なのですか?。」
「そうだ!。人間は神に似せて作られたのだ!。」
長老は、能力の違いがはっきりとわかっていたので、
素直に受け入れたのでした。

神は続けて言いました。
「これからお前を豊かな土地に連れて行く。」
そしてすぐに、こう言いました。
「着いたからここで降ろす!。」
あっという間に、短い草の上に立っていました。

「ここにいる者たちは、みんなお前と同じに長老を、無事やり終えた者たちだ」
「この惑星の中で、これほど豊かな土地は他にはない!。」
「のんびりと暮らすがよい!さらばじゃ!。」
そう聞き終えたとたんに、
円盤が黒い影になり、その影もスーッと消えてしまいました。


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