明日のことは過去のこと 第一巻 第一章 (2)

さっそく妻たちに命じて、長老は男を、家の中に入れさせました。
そして男を、毛皮の上に仰向けに寝かせました。
秘伝の薬を水で薄めさせて、ほんの少しづつ時間をかけて与えていきました。
最初調合した薬は、すごく強すぎたので、気絶してしまったのでした。
長老は、妻たちに命令して、三日三晩交代で、
薄めた薬を、与え続けさせたのでした。

その看護のおかげで、少しは体を動かすことができるようにになりましたが、
しびれがからだ全体にあり、思うようには動かせません。
神によって男は、その土地に合った、言語能力を埋め込まれていたのです。
男はしゃべろうとするのですが、言葉として聞き取れません。

さらに三日三晩、妻たちは交代で、薬を少しづつ与え続けたのでした。
言葉のほうは、ゆっくり話せば聞き取れるようになりました。
しかし、体のほうは、まだしびれがあり、
手足は少しづつ動かせるようになりましたが、
力が入らずに、立ち上がることはできません。

もうさらに三日三晩、妻たちは交代で、薬を与え続けました。
そうすると、言葉のほうは、普通にしゃべれるようになりましたが、
手、足はまだ、しびれがあり、手を借りなければひとりで立ち上がれません。
長老は、ひとつ山向こうに、温泉が出ているのを知っていました。
そこに連れて行くことにしました。
しかしそこは、隣村の縄張りでした。
村と村との掟がありました。
長老どうしでしか、話し合うことができない掟でした。

隣村に入るには、貢物を、隣村に持っていかなければなりません。
ふだんは隣村同士が、交流してはいけない掟でした。
貧しい村の長老は、娘をひとり差し出さなければなりません。
裕福な村の長老は、猪や、鹿などを1匹差し出しました。
しかし、相手の長老に、娘を差し出さなければだめだと言われれば、
差し出さなければならない、掟でした。

貢物や、供え物を与えるときには、お互い仮面をかぶって行うのが掟でした。
どちらも、相手の顔を見ないようにしたのでした。
これもすべて神(宇宙人)の指図でした。

この村どうしは裕福な村どうしだったので、
猪1頭を貢物として、差し出せばよいことになりました。
村と村の境は、ほとんどの場合、大きな川で境を決めていました。
ようやく温泉にたどり着くことができました。
最初男を運んできた若者が、同じように運んで連れてきました。
7日ほど経つと男はしびれがなくなり、自分ひとりで歩けるようになりました。

そのあいだに、長老はこの男に村と村の掟や、
村の中の掟などすべてを、教えたのでした。
そして長老の仕事は、神は絶対的なものであり、
すべてを知っている存在であると言うことを教え、
神に逆らわなければ長老として、
村人たちを操ることができるのだと、教えました。
そしてわれわれ長老だけが、神の言葉を聞けるのだとも、教えました。

そして長老がすべてを教えたところで、
神がテレパシーを使って男に言いました。
「お前の名は、ギーザである!。」
「神に逆らえば、またあの頭が割れるような苦しみを与える。いいな!」
男はびっくりしました。誰もいないのに声が聞こえてきたのです。

男は口で言いました。
「わたしの名前はギーザですか?」
すると神はこう答えました。
「わたしと話をするときは、決して声を出してはいけない」
「考えるだけでわたしは、わかってしまうからな!」
「神と話していることを村人に聞かれてはならない!」
「村人には、神からのお告げがあったといえばよい!」
「神に逆らえばまたあの苦しみが待っているぞ!」

それを聞いた男は、心の中でつぶやきました。
「解りました。必ず守りますから、あの痛みは、お許しください。」
「必ず守りますから、お許しください。」
神は言いました。
「解ったようだな!」そして言いました。
「今の長老と村に戻ったら、今度はお前が長老になるのだ!。」

そして今の長老にも言いました。
「村へ戻ったら、村人たちに言いなさい!。」
「神のお告げで、わたしは、仙人になる修行をしなければならない!。」
「奥深い山に入って行く。」と!。

それを聞いた今の長老は神に訊きました。
「奥深い山に入ってからわたしは、どうするのですか?」
神は、答えました。
「心配しなくてもよい!。すばらしいところに連れて行く!。」
長老は心の中で言いました。
「はっ、はー」「すべては、神のなすがままに!」


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