2.分析

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 調査した後に発表をする.発表の素材は調査した成果である.
 調査の手段には,観察,文献調査,体験などがある.これらの調査には視覚や聴覚を使う.
2.1 調査
■写真の構図
 調査の時の取材の撮影では構図に気を配る.その写真や動画を発表媒体の中に使う.

被写体を画面一杯にする. 人物は腹を中心にする.
座っているならテーブルを入れる. 向いている方,動く方を広くする.

■実物の入手

 調査の時に物品を入手したり,研究や発表のために模型を作ったりすることがある.
 例えば,フロッピーディスクを理解させるために,分解した実物を見せる.

■複製権の取引
 発表の時には既存の文面や画像や音を利用することがある.
 多くの著作物は複製して利益を得ることを目的にしているので,前向きに契約交渉をしよう.
2.2 発表標準
 発表の行事ごとの発表の時間などの基準を,主催者に最初に確かめる.
■発表時間と演説速度の標準
 普通の学会の発表時間は20分間である.正味の発表が15分間,質疑応答が5分間ぐらいである.

演説の速度を発表時間や原稿の行数にあてはめると次のようになる.
  発表   300文字×15分,30桁×150行,約4行×40話題
■画面数と話題配分の標準
 話題の数が約40ならスライドへの配分の案として5〜8話題が適当である.

画面数 10 20 40
話題数 40 20 10

 6画面の場合の時間や話題の具体的な配分を次に示す.

  時間 文字数 話題数
画面1 0.5分間  5行/ 150字 1話題(所属,氏名,主題)
画面2 2.5分間 25行/ 750字 2話題(概要)をやや詳しく
画面3 3分間 30行/ 900字 7話題
画面4 3分間 30行/ 900字  7話題
画面5 3分間 30行/ 900字   7話題
画面6 3分間 30行/ 900字 7話題
質疑応答 5分間 15行/ 450字 3話題(司会に時間がかかる)

■話題の演説量の標準
 一つの画面の演説の量は次のようである.6画面→7話題→4文という階層バランスである.

開始 1行(標題の説明文)
話題1 4行(話題文,補足文1,補足文2,補足文3)
話題2 4行(話題文,補足文1,補足文2,補足文3)
話題3 4行(話題文,補足文1,補足文2,補足文3)
話題4 4行(話題文,補足文1,補足文2,補足文3)
話題5 4行(話題文,補足文1,補足文2,補足文3)
話題6 4行(話題文,補足文1,補足文2,補足文3)
話題7 4行(話題文,補足文1,補足文2,補足文3)
終了 1行(次の画面へのつなぎの語り)

■質疑応答の量の標準
 質疑応答の会話量の詳細は典型的には次のようである.

質問1(2行) 回答3行(話題文,補足文1,補足文2,補足文3)
質問2(2行) 回答3行(話題文,補足文1,補足文2,補足文3)
質問3(2行) 回答3行(話題文,補足文1,補足文2,補足文3)

2.3 話題の分析
■分析と設計
 調査結果を分解して,発表条件を確かめて,発表する話題を決定する.
 粗筋は一度に完成するのではなく,発表工程全体で次のように改訂していく.

分析の結果 話題をおおざっぱに洗い出した状態.分類をすることもある.
設計の前半 分析の結果を2階層ぐらいに分類して重み付けした状態.
設計の結果 形式の調整と量の調整をした状態.スライド作成を開始できる.
練習の結果 作成や練習を終えて,最終的なスライドに合わせて直した状態.

 洗い出しや改訂を簡単にするために,粗筋を取り扱うのに次の手段を使う.

話題ごとの表現 カード,付箋紙
粗筋全体の表現 白板,A4判程度の紙,模造紙,手帳の白紙ページ
電子道具 アウトラインプロセッサ,テキストエディタ,電子手帳

■話題の洗い出し
 すでに資料や頭の中にある素材を書き出す.
 例:「ノバト高校のコンピュータ活用」という主題の調査結果の話題の洗出し

所在地 四年制職業高校 生徒数 5万ドル/年 最初2年は28台ずつ  校内回線工事 ソフト増強 教師講習会 図書室・美術室 新型PC増強  旧PCは一般教室へ 演習室名は職業科目 タッチタイピング タイプライタ  作文技法 ワープロ DBソフト スプレッドシート 新聞作成 DTP  広告制作 店舗設計 AutoCAD 建築設計 機械設計 美術教室 図書室  図書検索 調べ物 理科室 四方が展示壁 教室は科目単位 OHP主体  OHPをワープロで スペルチェック VTR LD CD-ROM 電子メール 

 話題は多めに洗い出す.行き詰まったら次のような問いかけで洗い出しを徹底する.

当たり前のことを洗い出す. 例:コンピュータの機種   
専門的に調べた山場は何か. 例:カリキュラムの日米の差異
既存の話題を見て連想する. 例:作文技法→レポート宿題  
部分や上位概念を連想する. 例:図書室→貸出し管理
失敗から上手さへ連想する. 例:違法複製→複製許可 
うんちくから実用情報へ. 例:光回線→光回線工事 
前置きから本論へ連想する. 例:教師の不慣れ→教師講習会 

■経過は不要,結果は何か
 分析は調査の成果を洗い出す作業である.研究や視察は既に終わっている.視聴者には研究の過程や視察の経路は必要ない.経過などの前置きなしでも分かりやすい伝達はできる.
 ×外国視察ツアーは毎年2回実施してきた.

 ×サンフランシスコの旅行業者にコンピュータ導入の先進校を推薦してもらった.

 ×サンフランシスコのホテルに宿泊して,ツアー20名がマイクロバスでノバト高校へ移動した.

 ×図書室,美術教室,コンピュータ演習室,職業演習室,特殊教室,理科教室の順に案内された.

 ×校長先生,商業科目の先生,教育委員会の人,各科目の教諭,生徒が説明してくれた.

 ×ノバト高校はマルチメディアの就職先が多い地区にある.

 以上のようなことではなくて「終わった時点では要するに何が得られたのか?」だけを発表すればよい.経過を長々と発表するのは,時間の観念がないか,表現能力がないか,成果を識別していないか,成果が乏しいなどのことが多い.

2.4 発表の形態の選択
■演説
 発表者が話しだけを視聴者へ伝える発表である.演説作文や練習が必要である.
■各種の視聴覚発表

聴覚媒体 演説,音声テープ,音声ディスク
視覚媒体 模造紙,ポスター,ボード,パンフレット,透明シート,35mmスライド
視聴覚媒体 ビデオテープ,ビデオディスク,コンピュータスライド

■デモンストレーション
 実際の物品や行動を見せる発表である.実物や動きを伝えるのに効果的である.
 実物の入手・設置や行動の練習が必要である一方で,媒体を準備する必要はない.

■見学・仮想見学
 見学は視聴者を案内して実物を見せる発表である.仮想見学は遠隔通信による見学である.
 歩行時間の見積を含めた演説原稿作成などの準備が必要である.
君島浩のISD研究室.2001.2.10, 2002,1.12.[ 戻る ] [ ホーム ] [ 上へ ] [ 進む ]