学校統治の問題点は、大きくは法律偏重であることと、規則制定・実施監督の不足であった。
立法 | 行政 | 司法 |
国会 立法→
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教育審議会 ↓答申 |
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←起案 文部科学省 ↓法律 ↑実施監督× |
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教育委員会 ↓規則× ↑実施監督× |
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学校 |
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この資料で再三指摘してきたことは複雑なように見えて、中学生でも分かるようなことである。 | |
まず、教育再生会議などの審議会が答申すると、文部科学省が法律改正を起案する。 | |
国会が法律改正を可決すると、改正された法律を教育委員会向けに発行する。 | |
教育委員会は教育の中核の規則を制定しないので、学校が新たに強化された法律条文の執行に追われる。 | |
教育委員会や文部科学省は実施監督を徹底しないので、執行状況があまり改善されない。 | |
何年かすると教育審議会が法律の強化を答申する。 |
立法→行政→司法という横の流れではなく、L字型の流れに注意が必要である。 普通なら悪いことをすると、司法が活動して処罰する。しかし、良いことをさせる法律は、司法機能には頼れない。行政プロセスがトップダウンに法律を規則にして、実施監督をするという形にならないと、うまくいったという保証はできない。この程度のことは中学生でも分かることである。
執行について文部科学省や教育委員会が責任を取らなければならない。責任を取るといっても精神論ではない。教育委員会が規則を適切に制定し、その執行状況を実施監督することが責任を取るということだ。文部科学省は、教育委員会が「規則を制定しているか。実施監督をしているか」を実施監督することが責任を取ることである。現状の教育統治は、教育審議会を源泉にして、法律条文が学校へ次から次へと流れこんでいく。教育審議会は言いっぱなし、国会は立法のしっぱなしである。学校の仕事は増えるばかりで、教育はさっぱり改善されない。
L字型のプロセスのサイクルが回るようになれば、法律条文が増えることを防ぐことができる。今までうまくいかなかった学校教育の改善が確実に進むことになる。審議会、国会、文部科学省も楽をすることができる。
最後に、第1章で述べた結論に戻ろう。単純に教育委員会制度を変えても、効果は得られない。改善を提案している筆者がそう言うのだから、率直な予想である。次のような地道な改善を提案する。
第1段階の施策 実施報告書の承認
■提案1−1 県教育委員会の議案として、年度ごとに教育課程実施報告書を承認する。
■提案1−2 県教育委員会の議案として、年度ごとに職員研修実施報告書を承認する。
■提案1−3 県教育委員会の議案として、年度ごとに人事報告書を承認する。
■提案1−4 市教育委員会の議案として、年度ごとの教育課程実施報告書を承認する。
第2段階の施策 規則の制定
■提案2−1 県教育委員会が教育課程標準を制定し、毎年議案として取り上げる。
■提案2−2 市教育委員会が標準指導要領を制定し、毎年議案として取り上げる。
■提案2−3 県教育委員会が教職員研修規則を制定し、毎年議案として取り上げる。
■提案2−4 県教育委員会が教員免許規則を制定し、毎年議案として取り上げる。
第3段階の施策 規則・細則・研修科目の見直し
■提案3−4 市教育委員会による指導要領改善講習会
■提案3−5 市教育委員会による指導要領事例集の発行
第4段階の施策 根本的な規則の改正
■提案4−1 教育委員会を教育庁役員会へ変更
■提案4−2 市立学校と県立学校の区別をやめて公立学校に統一する。