4.4 教職員教育の事例:東京都

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東京都立学校事務職員等研修規則

趣旨第一条 この規則は、地方公務員法第三十九条の規定に基づき、都立学校の事務職員等の識見を高め、勤務能率の発揮及び増進を図るために、東京都教育委員会が任命権者として行う研修に関し、必要な事項を定めるものとする。

研修の区分、実施機関及び内容第四条 研修の区分は、次のとおりとする。

一 委員会研修  二 職場研修

 委員会研修は、東京都教育委員会教育長以下「教育長」という。が各都立学校に所属する事務職員等を対象に、職員として職務執行上必要な事項のうち、主として各都立学校間に共通するものに関して行うものとし、その種目は、おおむね次のとおりとする。

一 新任研修  二 現任研修  三 監督者研修  四 管理者研修

五 専門研修  六 実務研修  七 派遣研修

3 職場研修は、都立学校の長が当該都立学校に所属する事務職員等を対象に、当該都立学校の業務遂行上直接必要な事項に関して行うものとし、その種別は、次のとおりとする。

一 一校の校長限りで実施する研修

二 二校以上の校長が共同して実施する研修

三 校長が委員会の認定した研修団体の実施する研修に所属事務職員等を受講させて行うもの

研修計画第五条 教育長は、委員会の承認を得て、研修に関する基本計画を策定するとともに、毎年度、委員会研修に関する実施計画を作成する。

3 校長は、毎四半期、職場研修に関する実施計画を作成する。

研修の助言等第六条 教育長は、職場研修に関して、校長に対し、必要な助言又は指導を行うことができる。

問題点は前述した東京都職員研修規則と同様である。混乱している。

しかし、後述する東京都教職員研修に比べると定石に従っている。一つの法規で教育課程全体を定めているという点である。

ただし、教育職員研修と事務職員研修を別の規則で定めているのはおかしい。就業規則や給与規則と同じように、一つの規則として定めるべきだ。

東京都教職員研修センター

■必修研修

東京都若手教員育成研修1年次初任者研修

東京都若手教員育成研修2年次研修

東京都若手教員育成研修3年次研修【平成24年度より実施】

新規採用者(幼稚園・養護・栄養・実習助手・寄宿舎指導員)研修

期限付任用教員任用時研修

都立学校3年次研修

都立学校4年次授業観察

10年経験者研修

■階層研修

教育管理職研修

教育管理職候補者研修

人事考課評価者訓練

主幹教諭研修

主任教諭任用等研修

教育行政研修

主任教諭任用時研修

都立学校主任研修(教務・生活指導・進路指導)

教育行政研修の案内

■教科等研修

国語音楽道徳  社会、地理歴史、公民図画工作、美術特別活動 算数、数学 保健体育 総合的な学習の時間

理科家庭、技術・家庭家庭分野 農業 生活技術・家庭技術分野 工業  外国語英語 商業 外国語活動小学校 情報

■教育課題研修

人権教育進路指導・キャリア教育 心の教育読書活動 福祉・ボランティア 島しょ・へき地教育

保健室経営ものづくり教育  生活指導情報教育  生き物飼育栽培技術  環境教育特別支援教育

健康教育学校教育相談 国際理解教育 中国等帰国児童・生徒教育、外国人児童・生徒教育 JSLカリキュラム

これらの情報は受講ガイドブックから拾ったものである。つまり執行資料である。

教育委員長や教育長が制定した内規としての資料は見つからない。

教育公務員特例法が存在することも、教育委員会が教育規則(教育課程)を定めることをやりづらくしている。

東京都教職員研修センター資料「平成23年度研修案内」

主幹教諭研修

ねらい 主幹教諭に昇任した者を対象に、主幹教諭制度や事案決定等についての講義・演習を行い、校長・副校長の補佐、調整、人材育成、指導・監督などの主幹教諭の職務に必要な資質・能力の向上を図る。

内容

・主幹教諭の役割

・OJTの推進体制

・文書実務

・指導要録の管理徹底

・学校問題への対応力の向上T  

主幹教諭スキルアップ研修

ねらい 主幹教諭2年目の者を対象に、主幹教諭として求められる職責である組織的な学校運営と人材育成の能力を高めていくために、組織的な経営等を学び、ミドルリーダーとして必要な資質・能力の向上や意識の高揚を図る。

内容

・組織マネジメント

・主幹教諭としての資質・能力の向上

・学校の問題への対応力の向上U  

「ねらい」の書き方が、目的と内容概要とを書こうとしているが、整理しきれていない。教育長がチェックできるレベルになっていない。到達目標が書かれていない。

内容は異なる主題を扱う講座(科目、課目)に相当する単位なのに、名称を羅列しているだけである。この単位に、目的・内容概要及び到達目標が必要である。

到達目標が定義されていなければ、修了試験の根拠があいまいになり、実施報告書をまとめるのが難しくなる。

到達目標などの書き方は学校よりも民間企業の方が進んでいる。学校分野の教育専門家は到達目標などの現代教育学を知らないのだろう。

根拠になる職務明細書を人事部門が規定しているかどうか不明である。

  地方自治・新時代における人材育成基本方針策定指針について(平成9年)

 平成8年度の地方行政運営研究会第13次公務能率研究部会における研究成果や先進的な事例等を踏まえ、各地方公共団体が基本方針を策定するに当たっての指針として、別紙「地方自治・新時代における人材育成基本方針策定指針」を作成しましたので通知します。

I 本指針の趣旨  II 策定に当たっての総括的な留意事項

III 策定に当たっての個別の留意・検討事項

1 人材育成の目的の明確化  2 学習的風土づくり等の総合的取組の推進

1)職場の学習的風土づくり−人を育てる職場環境−

職場診断表による診断  学習・研修成果の発表の場の提供  職員提案制度の実施

2)系統だった人材育成の確立−人を育てる人事管理−

経歴管理システムの確立  庁内公募制の導入  挑戦加点制度

3)仕事を進める過程の工夫・活用−人を育てる仕事の進め方−

目標による管理  QCサークル活動等小集団活動の活用  出前講演・出前トーク

3 職員研修の充実、多様化

1)自己啓発  (2職場研修

管理監督者の啓発  職場研修マニュアル等の作成・活用  職場研修推進運動の展開

3)職場外研修

研修所研修等  派遣研修  広域での共同研修

(4 職種、階層等に応じた研修

保健福祉関係専門職員の研修  議会事務局等職員の研修  研修担当職員の研修

4 人材育成推進体制の整備等

(1人材育成推進体制の整備

管理監督者  人材育成担当部門

(2都道府県と市町村との連携

既存の法規や教育論を十分に調査せずに作った指針のように思える。

法規体系の整備をせずに追加したので、全国の教育委員会に基本方針を作文させるという、余分な仕事を増やしている。

議会事務局等職員の研修は、法律・条例の乱れをなくすように強化して欲しい。

人材育成推進体制の整備としては、現代教育学・教育体系開発(ISD)ぐらいは知っておいて欲しい。

また、「東京都の教育大学」に相当する東京学芸大学に対して、学部カリキュラムを史料・実践体験中心から、理論・方法論のバランスのとれた現代的な内容に改善するように、要求すべきだ。

  地方行政運営研究会第18次公務能率研究部会構成員等名簿

・吉田弘正((学自治医科大学理事長)<座長>

・稲継裕昭(大阪市立大学大学院法学研究科教授)

・柿島喜重(愛知県豊田市総務部人事課長)(平成15年3月31日まで)

 福嶋兼光(愛知県豊田市総務部人事課長)(平成15年4月1日から)

・加藤敏彦(北海道札幌市総務局職員部人事課長)(平成15年3月31日まで)

 板垣昭彦(北海道札幌市総務局職員部人事課長)(平成15年4月1日から)

・阪口克己(武田薬品工業(株)人事部シニアマネジャー)

・塚本勇(栃木県益子町助役)

・辻琢也(政策研究大学院大学政策研究科教授)

・中川原米俊(東京都総務局人事部制度企画課長)

・宮崎正寿(高崎経済大学地域政策学部教授)

  13次分科会の委員等名簿が見つからないので代わりに18次のものを掲載した。

到達目標の書き方など、  現代教育学を知っていそうな委員はいない。有識者を集めても、知識には限界があるということだ。職員による勉強に期待したい。

役所や民間会社の人事課長は、ふだんから研究して学会発表しているぐらいの人でないと、研究部会員としてよくないのではないか。

 役人側も学会で発表しつつ、優れた発表をしている有識者を見つけるべきだ。

東京都教員人材育成基本方針(21ページ、平成20年)

ISO9001品質保証体系を受審する時には、「わざわざ新たなルールやマニュアルを作ることなく、既存の規則類を手直しする程度で準備するのがよい」とお勧めされる。人材育成方針はわざわざ新たに作らされた資料といえる。

国家公務員法の場合は、計画(職員教育規則)を樹立して、それが実施されるようにせよ、と規定している。職員教育規則とは主に教育課程(主な講座編成を含む)である。基本方針のような、法規以外の資料を作れと言っているのではない。また、方針を提供するだけで、実施監督をしないようなことは統治にはありえない。

教育基本方針や年度研修基本計画は、例規集に載らない文書である。

これ以上の論評をする必要のない資料である。法規上や統治上の存在理由がないのである。

平成22年度研修基本計画(東京都)

本研修基本計画は、「東京都職員人材育成基本方針」(平成18年3月策定)及び「研修基本方針」(平成18 年3月改定)を踏まえ、総務局人事部及び各局研修機関が実施する、平成22年度研修の基本的な考え方、重点事項等を示すものである。  

前述の施策の結果として、全国の都道府県が作文させられた資料集に関する情報である。

法規上の「計画」は上位規則という意味なのに、年度計画と誤解する例は多い。

年度計画のことは誤解がないように表現すれば「教育日程」などである。現実には職員教育規則(主に教育課程)が存在しないために、職員教育規則を導き出す考え方である教育方針が存在したり、年度計画資料の中に教育規則や教育方針に相当することが毎年作文されたりする。継続性がないし、労力の無駄でもある。

OJTガイドライン(東京都教育委員会、40ページ、平成20年)

OJTに関する世間での誤解の典型を資料にしたものである。グローバル標準の「構造的OJT」と全く違っている。

例えば、OJTに対して計画、実施、評価、改善というPDCAを定めているが、OJTの計画とは、規則を樹立することを意味しているのであって、個人ごとに計画書を作るという意味ではない。そういうことは現場の能率を低下させる。

OJTは生産管理又は労務管理の配下であって、人事教育の配下ではない。

校長・副校長等育成指針(東京都教育委員会、33ページ、平成20年)

校長研修は以前から存在していた。既存の研修規則(教育課程)をどう改定するか、実施監督上の問題分析(成績や受講率)、改善策としての指導要領の見直しなどの地道な取り組みこそが、統治者の責任である。

経営能力の向上が一つの課題であるが、今まで述べたように法規体系が経営の定石をはずれている。この状態で経営論の教育ができるだろうか。

東京都教職員研修センター:東京教師道場

 2年間を3期に分けて研修を実施し、「授業力」を伸ばします

把握・点検期:

自己の授業力を把握し、授業改善のPDCAサイクルの確立を目指す段階

発展・充実期:

授業力の飛躍的な向上に向け、徹底的に研さんを積む段階

学校における授業力向上の取組について理解するとともに、自己の授業力を評価し、改善できる。

教科等の専門性を生かした授業を実践することができる。

自立・完成期:他の教員の指導的役割を担うことができる資質・能力を磨く段階

自己の授業力を把握し、課題と目標を明確に出来る。

「授業力」を構成する要素を理解し、授業実践に生かす。

他の教員の指導的役割を担う教員として活躍します。

通常の教職員教育課程と重複する。既存の教育課程を改善することに集中すべきである。

教育学部卒業生に欠けているのは現代的な教育理論や教育方法論である。他学部の教職科目履修者はなおさらである。授業力が下手な理由は、表面的には実践力が足りないわけだが、根本原因は実践ではなくて理論や方法論の不足なのである。

指導教員や教育学者は旧来の教育で育って、旧来の教員教育をしてきた人たちである。

5年以降というのは教室実践力養成には遅すぎる。教室実践は4年未満、5年以降は指導要領などと区別すべきだ。

元になっている授業力6要素が、旧来の文献からの継続性がない。例えば、国際的なibstpi標準などとの関係が不明である。民間企業の教育論より遅れているようだ。

  公開されている指導案の書式は、不必要に複雑であり、到達目標を単元ごとに展開していくことが分かりにくい。また、実務書式として普及させづらい。法規のような箇条書きで十分である。形式よりも内容が大切だ。

前項のような厳しい指摘は、企業の教育ワークショップでは当たり前である。ライバル企業同士でも、とことん改善案を出し合うのである。世界で勝つためだ。

この程度の改善を企業では研究とは言わない。業務改善である。

自己を見直すよりも、客観的な資料を見直すべきである。現実に使っている教育課程規準、教育課程、指導要領規準、指導要領、授業ビデオ、試験出題規準、試験結果成績を分析して、改善することこそが、すぐれた教育になるであろう。

試験出題や試験結果成績のワークショップも、企業や塾の集まりでは厳しい。

制度が複雑になり、資料体系が複雑になる。シンプル・イズ・ベストだ。

東京都教職員研修センター:東京教師養成塾

東京教師養成塾は、高い志をもった教員を学生の段階から養成し、将来リーダーとなる教員を育成します。

目指す教師像

○社会の変化や子供・保護者の願いを的確に捉え、実践的指導力や企画力を高める教師

○幅広い教養を身に付け、総合的な見地から課題解決に当たり、学校教育を創造する教師

○地域や社会貢献の活動に取り組み、自らの視野を広げ、子供に夢や感動を与え、将来への展望を切り開く教師

育成する資質・能力

○実践的な指導力・柔軟な対応力、組織の一員としての自覚や企画力

○社会の課題を的確に捉え、様々な知識を融合して実践的に課題を解決する力

○教師としての使命感、社会に貢献する志、社会人としての責任ある態度

 入塾資格は、面接やレポート程度であり、学力試験はない。

平成24年度東京都公立学校教員採用候補者選考実施要綱に基づく特別選考の受験対象とする予定である。

東京教師道場の学生版のような似た雰囲気がする。

教育課程・講座の書式の定石に沿っていないが、「目指す教師像」は参考のためのイメージなら、もっと事例的の方がよい。「育成する資質・能力」は課程全体の到達目標かも知れないが、修了判定に結びついているのか。

実践的な力、課題解決力、使命感などは、新入教員には重要ではないと思われる。先輩が残した指導要領に従って、誠実に授業を体験すればよい。

講座単位には内容・概要、到達目標、修了試験の情報がない。

タレントや社長などによる講義が多いが、講義内容の根拠(エビデンス)は不明である。

内容は教育学部教育や卒後研修と変わりばえしない。センターの業務を増やす。

特別選考の細部は不明だが、卒塾生を優遇する措置だと推測される。しかし、卒塾生が優秀であるなら、一般枠で競争させるべきではないか。人事制度と教育とを区別すべきである。

民間企業では採用の機会均等や内定者研修の禁止などが厳しく言われている。法務監察課の意見を聴くべきではないか。入塾時に学力試験がないというのも、一般採用に比べて心配である。

  就職活動は労働市場における対等な縁組である。教育を受けないと採用上不利になるとしたら学生の弱みを突いているという要素は否定できない。

 採用後の要所で、リーダー候補の選抜試験をする程度が妥当である。

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