2.4 日本の会社の法律に学ぶ

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2.4.1 厳密に理解しようとすれば厳密に理解できる会社法

 会社の経験のない人が会社のことを知るには、会社法を読むとよい。会社経営が、教育庁や教育局の経営にも似るはずだからである。会社とは何かの定義は次の三つの条文で分かる。後で紹介する教育委員会の法律とは異なり、論理的な混乱がない。

会社法

(趣旨)第一条  会社の設立、組織、運営及び管理については、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。

(業務の執行)第三百四十八条  取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社の業務を執行する。

(取締役会の権限等)第三百六十二条  取締役会は、すべての取締役で組織する。

2  取締役会は、次に掲げる職務を行う。

一  取締役会設置会社の業務執行の決定

二  取締役の職務の執行の監督

 この会社法は、会社の設立、組織、運営及び管理を定義しており、詳しさはともかくとして、会社のすべてを定義しているのである。

 取締役は会社の業務を執行するのであるから、取締役専任者を意味しているのではない。抽象的な法人としての会社の代表を意味している。個人商店主は、資本家であり、取締役であり、執行役員であり、執行する社員を一人で兼ねる。個人商店主であっても、会社登記するなら取締役を名乗らなければならない。

 取締役会は、具体的な取締役たちの会議作業のことを意味しているのではない。大規模な会社を経営するために、会社の業務執行を分担する概念的集団である。代表取締役は会社全体に責任を持ち、取締役全員合わせるとやはり会社全体に責任を持つ。

 取締役会方式は、上下の階層化の方式でもある。取締役会は会社の定義を担当し、取締役配下の社員(中間管理職を含む)は業務執行を担当する。なお、取締役が執行役員を兼務してもよいし、執行役員を区別して取締役が定義に専念してもよい。

とりあえず取締役がすべての業務に責任を持つが、自分がやるとは限らない。個人商店などは自分ですべての業務を執行する。

取締役会は会議のことではない。業務を配下に委譲するための上部部分の意味である。

 業務は仕事の総称であるが、取締役や取締役会のための定義(会社規則等)を起案する仕事を区別する場合は事務という。戦略企画などというのは事務である。事務とそれ以外を区別するために、日常業務という言葉も使われる。会社の本社機構は、取締役会のために事務をすることが必須であることが多い。ただし、全社のための日常業務を兼務することも少なくない。

 

2.4.2 事務と日常業務の厳密な意味

業務とは、職務の総称である。業務は事務と日常業務に区分される。

事務とは、抽象的な定義を起案して役員へ提案したり、定義の見直しのために執行実績を収集して役員へ報告したりする職務である。

日常業務とは、定義に従って、現場で具体的な作業を執行する職務である。

前述のオックスフォード大学の教育委員会の説明を理解するのにもこの用語法は役立つ。

取締役や執行役員が決裁に専念するために、定義の起案や執行実績把握の部分を配下にまかせたい場合に、役員を助ける事務員や事務部門を利用する。なお、役員が事務に相当する作業をすることもあるし、事務部門が日常業務を兼務することもある。

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