2.教職員育成の方針を定めて調査する

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 大学教員というのは既に確立した職務分野であり、教員育成も既に米国等では確立した使命分野である。「教員の能力を向上させる教員育成活動を実践する」というのが方針になる。理論を研究する話題ではない。既存の技術をどこかから移転する話題である。文部科学省の文書は研究と実践を正確に区別している。各大学の教員育成の基本的な定義をする時には、文科省の文書を忠実に流用すべきだ。教員育成を研究の話題にすり替えてはいけない。

 教員育成活動は冷静に上品に進めなければならない。「私語や居眠りをする学生が多いので動機付けをしっかりしたい」とか「ひどい授業をする古参教授を何とかしなければならない」と情熱を持つのは最初は良いが、それだけでは優れた大学は作れない。「教員の能力を向上させたい。特に何も知らないで着任する若手講師の能力を向上させたい。真面目に取り組んでいる学生の成績をよくしたい」などと、落ち着いた前向きの方針に戻るべきである。スタンフォード大学の手引書から上品さを学ぶとよい。

 新たに教員育成の方法を調査するのは、研究するリサーチではなくて、既存資料を探し出すリサーチである。我が国の大学教員は教育技術の専門家ではないので、大学教員同士が集合して教員育成の研究会を実施することは、既存の実務技術を無視して白紙から再研究するという徒労に終わる。学者を招待して講演会を開くのも同じだ。大学教員は既存の実務資料を探し出して、自分の大学用の実務資料を作文する技術移転活動については素人である。心して取り組まなければならない。

君島浩のISD研究室 2006.4.9. [ 戻る ] [ ホーム ] [ 上へ ] [ 進む ]