地球規模の環境問題

 約46億年前、太陽系の一員として誕生した地球が他の惑星と大きく違うのは、生命が存在する水の惑星である点です。
 誕生以来、地球は大きく変化しました、35億年ほど前に海中で誕生した生命は、やがて光合成を行って酸素を出し始め、25億年くらい前に酸素呼吸をする新しいタイプの生物が登場するころには、地球は十分な酸素で満たされていました、やがて、余剰な酸素がオゾン層を形成した事で生物は焼く40億年前に上陸を果たし、約600万年前に人類が誕生します。
 その後人類は自然とともに歩んできたはずでした、ところがいつからか自然は征服できるものと思い始め、畑や牧場をつくり、より便利で快適な生活を築くために人工物を製造しその代償として森林を破壊し、川や空気まで汚しだしました。気がついた時には森は人間が農耕を始める前の4分の1に減り、オゾン層には穴があき、地球の温暖化も進み、回復が困難な状況にまで自然を追い込んでしまいました。これからこうした地球規模の環境問題をかんがえます。

森林破壊@ 森林の働き

 植物は日光のあたり方や気温・雨量・土壌・など環境の違いによって生長がちがいます。森林について地球全体でみてみると、生育に好条件な赤道付近を中心に熱帯林が、ほぼ東西に広がって分布しており、さらに極地に向けて温帯林・寒帯林が広がって、それぞれが生物の生態系を支えています。
 まず森林は、動物はもとより植物にも生息地の食物を提供します。また多くの生物が酸素を吸って呼吸していますが、その酸素は植物が光合成を行うときに排出するわけですから森林は酸素の供給源にもなっています。さらに降った雨水を葉や根に蓄え、少しずつ放出する巨大なダムの働きもしています。川は山でなく杜から流れ出ます。そして、森も水蒸気を担います、
 森に住む動物の死体や糞、落ち葉や枯れ枝などは微生物が分解し、肥沃な生きた土地を作ります。山すそに広がる平野はこの土地を川が運んで堆積して形成されたものです。

森林破壊A 熱帯林を砂漠に変える伐採問題

 地球の陸地総面積は焼く30億haで、農耕が始まる8000年ほど前までは約半分の61億haが森林だったと推定されています。その後の人間の活動とともに森林は減り続け、1960年ころには8000年前の4分の1となり、21世紀に入った現在は5分の1にまで減っています。今も世界中で、1年間に日本の約半分の面積(千数百ha)の森林が消えていると言われ、特に東南アジアや中南米、西アフリカなど開発途上国の熱帯林に破壊が集中しています。
 熱帯林は100メートルにも達する樹木がうっそうと繁っており、少しくらい破壊されてもビクともしない気がしますが、実は驚くほどひ弱です。気温が高く有機物の分解が速いため土ができにくく土壌が薄いのです。そのため伐採後は雨が降ると表土が流され、固く養分の少ないラテライト(熱帯特有の赤土)が露出して砂漠化を招くことになります。

森林破壊B 森林破壊の原因

 熱帯林破壊の最大の原因は焼畑です、移動耕作とも呼ばれるこの農法は現代も世界で広く(2億ha)行われ、3億人ほどの生活を支えています。人口増加に伴い、焼畑によって地力が衰え不毛となる空間はますます広がる見込みです。他にも森林破壊の原因として、農業のための開墾、燃料のための伐採、畜産のための牧場づくりなどがあります。
 少し前まで、日本の割り箸は森林資源の浪費の象徴としてアメリカのハンバーグ(肉牛の牧場にするために森林を伐る)、ヨーロッパの高級棺おけとならべて環境保護団体がやり玉にあげていました、今は間伐材を使うなどして、必ずしも森林破壊の元凶とはなっていないようですが、それでもかつて最大の元凶といわれた商業伐採は完全になくすることはできません。
 森林破壊は温帯や寒帯でも起きています。酸性雨や凍土が溶けることが主な原因です。

環境汚染@ 地球温暖化

 太陽から地球に届いた日射光は大気や雲(水蒸気)に吸収されながらもかなりの量が地面や海面に届き、吸収されます。一方地球も、同じ量のエネルギーを主に赤外線の形で宇宙空間へ輻射しています。もし地球が太陽から光(熱)を受け、宇宙にエネルギー(熱)を放出しているだけなら、地球の表面温度は約15℃に保たれています。
 大気中で地球を暖める働きをする温室効果ガスの代表的なものは二酸化炭素です。長い間200〜280ppmの濃度を保っていましたが、18世紀の産業革命以後、化石燃料を大量に燃やしたため大気中に増えすぎ(現在380ppm)、温室効果が高まって気温の上昇(地球温暖化)をもたらしました、21世紀中に、日本でも平均温度が1〜1・5℃上がると予想されています。

環境汚染A 海洋や河川の汚染

 雨が降り、川となって海に注ぎ、海水が蒸発して雲ができまた雨が降るという太古から地球上で繰り返されている水の循環は、その過程で膨大な量の物質を溶け込ませ、運んできました。しかし、それはもともと自然界に存在した物質であり、自然が許容していた物でした。
 ところが18世紀の産業革命以後、人間の活動によって余分な物までが排出され、水に溶け込んで循環するようになってしまいました。たとえばDDTやPCB,ダイオキシンといった化学物質ですが、こういった人工物は自然分解しないため河川や湖沼など広範囲を長期間にわたって汚染します。そして、最終処分場の機能性が高い海(海水や海底)に流れ込んで蓄積され、食物連鎖を通して海洋生物に汚染を広げるのです。忘れていけないのは、連鎖の上位の生物ほど汚染物質が高濃度に蓄積され、食卓に並ぶそれを人間が食べるということです。

環境汚染B 酸性雨

 100年以上前、イギリスではすでに煤煙に汚染された強い酸性の雨が降ることが知られ、酸性雨と呼んでいました。けれども酸性雨は1950年代まで忘れ去られ、人々が再び思い出したのは、北欧で多くの湖水が酸性化し魚が消え、カナダで森林が枯れたことによってでした。そこは大工業地帯から汚染大気が吹き寄せる場所でした。
 しかし雨滴は、大気中の二酸化炭素を溶かして降って来るので、きれいな雨でも酸性度(PH)5.6の弱酸性です(ですから5.6以下のPH値を出す雨が酸性雨です)。そのため、なぜ魚が消え森が枯れるのか皆目わかりませんでした。
 酸性雨の犯人は化石燃料(石油や石炭)を燃やすことで発生する硫黄酸化物や窒素酸化物です。これらが大気中で反応して雨滴を硫酸や賞賛に変えてしまいます。そのため植物の葉や農作物に直接被害を出し、土壌を変質させ、いろいろな物を有毒化するのです。

環境汚染C 異常気象

 異常気象とは、普通の状態から著しくはずれて値が出る気象状態をいいます。気象庁では普通状態を過去30年間(現在は1971〜2000年)の平均と定義し、その値を平年値として使用し、10年ごとに更新しています。
 異常気象は、地球全体を取り巻く大気の流れが平年に比べて大きく変動することで起こり、大気を変動させる要因として、偏西風の蛇行などの地形、エルニーニョ現象など海水温の変化、人間活動による二酸化炭素やフロンといった温室効果ガスの増加などが考えられます。異常気象によって2002年春の桜の開花が早かったこと(異常高温)は記憶に新しいところです。
 世界的異常気象の元凶として名高いエルニーニョ現象は、南米ペルー沖の東部太平洋の海水温が2〜3℃高い状態が数年持続する現象です。クリスマス頃発生するのでエルニーニョ(神の子)の名がつきました。

オゾン層の破壊@ 酸素を作る生命

 原始地球の時代の地表面は太陽光線中の有害な紫外線が直接届き、生命の存在を許さない環境でした。ところが隕石の衝突や、原始の海に進入した少量の紫外線などによって海中に生命活動を促進するエネルギーがもたらされ、35億年ほど前に海中で生命が誕生します。やがて約30億年前に発生したらん藻類が光合成を行う様になり、海水中の二酸化炭素を分解して酸素を排出し始めなす。そうして海洋生物が酸素呼吸をするのに十分な酸素がつくられ、次に陸上でも生物が生存するのに十分な量の酸素がつくられて、約4億年前に最初の陸上生物として植物(シダ類)が上陸に成功します。
 酸素は大気の下層では原始が2個のO2、上層では紫外線に分解され遊離したOの形で存在し、中層では両者が混じっています。Oだけでは不安定なためO2にくっついてO3(オゾン)になるものがあり、それが上空25kmを中心に20〜50km(成層圏)の範囲に集中的に溜まってオゾン層を形成しています。

オゾン層の破壊A オゾン層

 オゾン層には強い酸化作用があり、生命にとって有害な物質です。それが成層圏の中ほど(20〜30kmあたり)を中心にたまって層を形成して地球を取り巻いたことで、太陽光線中の有害な紫外線(UV-B)の98%を吸収し、地球生物を保護するフィルターの役割を果たしてくれるようになりました。
 遊離した酸素原子(O)は非常に反応性に富み、すぐに他の分子(O2)に結合してオゾン(O3)をつくります。紫外線はO3をOとO2に分解しますが、再びO3をつくる材料になります。
 このようにオゾン層ではO3の生成と破壊が繰り返されることでO3量(オゾン濃度)が100ppm(全大気の100万分の1)程度で安定しており、その反応(生成と破壊)の過程で生じるエネルギー(一定の温度)もオゾン層の形成を助けています。

オゾン層の破壊B オゾンホールの恐怖

 地球全体のオゾン量は約50億トンで、成層圏では20kmくらいの厚さで層を形成しています。オゾン層を海抜0mまで下げて0℃・1気圧に圧縮すると、厚さは立ったの3mm以下になります。この重要な働きをしている割にわずかな量でしかない貴重なオゾンの減少がわかったのは1970年代の後半のことでした。減少が特に激しいのは何狂句上空で、毎年春(9〜10月)にオゾン層に穴があくオゾンホール(オゾンの特に少ない領域が穴のように見えるのでこうよばれる)が観測されています。
 ホールが出現すると、地表面に直接届く有害紫外線(UV-B)の量が増えます。オゾンが1%減ると有害紫外線は2%増えると言われており、皮膚がんの発生が今より5%増え、他に眼病(白内障など)の増加の危険性が指摘されています。
 今では南北両極や北半球の高緯度地方上空でもオゾンの減少が確認されており、ホール出現の回数や持続時間はますます増す見通しで、より強力で生命の基本的な分子(タンパク質やDNA)を壊すUV-Cまでが、地球上どこにでも届くことが懸念されています。

オゾン層の破壊C オゾン層を消滅させるもの

 オゾンを消滅させ、オゾン層を破壊する犯人はクロロフルオロカーボン(通称フロン)という名前の炭素、塩素、フッ素の化合物です。1928年にかいはつされたこのガスは無毒・無臭で安定性も高く使いやすいので、エアコンやスプレー、半導体の洗浄など幅広く使用されました。
 けれども20世紀最大の発明と賞賛され、現代生活を影で支えてきたフロンも、今や地球生命をおびやかす有害物として製造が規制され、人々の生活から消えてい行く運命にあります。
 フロンは分解せずに大気中をゆっくりと上昇し、15年あまりかかって成層圏に到達します。けれどもそこで紫外線をあびることで簡単に分解してしまい塩素原子をつくります。塩素原子はオゾン(O3)を分解して酸素(O2とO)に戻しますが、自分はなかなか変化しないので作用が繰り返され、一個の塩素原子は50年で10万個ものオゾンを壊すことになります。
 南極よりも大きなオゾンホールができる現在でも、成層圏に届いたフロンは放出量の10%でしかありません。オゾン層破壊の本番はこれからです。