携帯によろしく 第六章 (2)

ラーメン店は一平のマンションがある方向とは反対にあったのです。
ふたりは話しながら、
いつも乗る駅の入り口の反対側から歩いてきたのでした。

「一平ちゃん!?夕飯の材料、スーパーで買ってかなくっちゃあー!??」
と育子が言ったのです。
「外食してもいいけど!!?」
と一平が言うと、
「何言うの!?」
「もったいないわよー!!??」
と育子が言うと、素直にいっしょにスーパーに入った一平でした。

両手にスーパーの袋を持って出て来た一平と、
いつものショルダーバッグを肩にかけて出て来た育子でした。
ふたりはいつもの道を歩き、一平のマンションまで戻ったのです。
エレベーターを使い3階まで上がったのでした。
一平は、入り口に着くと小銭入れから鍵を出し、ドアを開けたのです。

一平は家に上がりスリッパを履くと、テーブルのイスを引き出し、
その上にスーパーの袋を置いたのでした。
育子はドアを閉めロックすると、家にあがりスリッパを履き、
いつものショルダーバッグを、自分が座るイスに掛けたのです。

「ごくろうさま!!?」
「スーパーで買ったものを冷蔵庫に入れちゃうから!?」
「その前に手を洗っちゃうわ!?」
そう育子は言うと、洗面所に行き、手を洗いうがいをしたのでした。
一平もそのあとをついて行き、育子が済むと、手を洗いうがいをしたのです。
振り向くと、育子が目を軽く閉じ、立っていたのでした。

一平は優しく抱きしめると、育子の唇にキスをしたのです。
唇を離すと育子は目を開けたのです。そしてお互いの目を見つめ、
「愛してるよ育ちゃん!!?」と一平が言うと、
「愛してるわ一平ちゃん!!?」と育子も言ったのでした。
そしてしばらくのあいだふたりは抱き合っていたのです。

急に一平の携帯が鳴ったのでした。
「ちょっとごめん!?」
そう一平は言うと、電話に出たのです。
「もしもーし!?」
「あー!?先輩!!?」「なんですかあー??!」
と一平が言ったのでした。

「えっ!!?」「そんなあー??!!」
「ほんとですか!!??わかりました!。」
「すいません!?気を使ってもらって!!?」
「ありがとうございました。」
「はい、じゃあーあした!?」
と一平は言うと、電話を切ったのでした。
顔色が急に悪くなり、血の気が引いたようでした。

「どうしたの一平ちゃん??!」
「なんかあったの!??」
と育子は不安げに訊いたのです。
「詳しいことはわからないんだけど!?」
「お得意さん関係の人が交通事故で入院してるそうなんだ!!?」
「あした詳しいことは会社に行って聞くよ!?」
と一平は顔を曇らせ、言ったのでした。

「そう、それはお気の毒ね!?」
「じゃあーわたし、買った物を冷蔵庫に入れちゃうから!?」
と育子は言うと、買い物袋が置いてあるイスまで行ったのです。
そして中身を見ながら冷蔵庫に入れるものとそうでないものとを分け、
それぞれのところに入れたのでした。

「じゃあー!?先、着替えちゃうから!?」
「そしたら俺、ふろ洗って沸かしちゃうよー!?」
と、少し元気ない言葉で、一平が言ったのです。
「うん!?わかったわ!?。」
と答えた育子でしたが、いつもと様子が違うのを感じたのでした。

一平は着ていた服を脱ぎハンガーに掛けたのです。
それからジャージに着替えると、風呂場に行ったのでした。
そして掃除をはじめたのです。

育子は、スーパーの袋をかたづけると、テレビの部屋に行き、
ボストンバッグからジャージを取り出したのです。
着ていた服をハンガーに掛けると、ジャージに着替えたのでした。
それからボストンバッグの中の物を、
タンスの引き出しに整理してしまったのです。
そして窓を開け、掃除機を掛けたのでした。






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