携帯によろしく 第十一章 (2)

「どうなさいました?!」
と看護師の声が聞こえたのです。
「娘の優に家族の声を録音してを聞かせたら、涙を流していたのです!!?」
と菊枝が言ったのでした。

「わかりました!今行きますので!?」
「そのまま何もせずにいてください!!?」
「先生に連絡いたしますのでちょっとお待ちください!!?」
と、看護師が答えたのでした。
そしてすぐにふたりの看護師が、病室に入って来たのです。
「すいませんが、ちょっとさがっていただけますか?!」
と看護師が入って来てすぐに言ったのでした。

三人は立ち上がると、自分の座っていたイスを折りたたみ、
それを持って、ベッドから遠く離れたのでした。
看護師はりょうてに別れ優の顔を覗き込んだのでした。

「涙を流したのは、何分ぐらい前かわかるでしょうか?!」
と看護師が言うと、
「声を録音したものとCDを交換してからだと思いますが?!」
「15分か20分前に交換しましたが?!」
「はっきりした時間はわかりませんわ!?」
と菊枝が答えたのでした。

「そうですか?!」
と看護師は言うと、
機械に接続されているノートパソコンのキーボードを、叩いたのでした。
そしてしばらくすると、医師が病室に入って来たのです。
「どうも!?」
と言って軽く会釈をしたのでした。
すぐに三人は、一斉にお辞儀をしたのです。
すると看護師が、医師に説明をしたのでした。

しばらく看護師の説明を聞いていた医師は、三人に向かって、
「どなたが最初に気が付かれたのですか?!」
と、言ったのです。
「はい私ですが!?」
と菊枝が答えたのでした。

「CDを交換されたあと、涙を流したのは間違いありませんね!!?」
と医師が言うと、
「はい!それまではいつもとかわりがありませんでした!!?」
と菊枝は答えたのです。

「1回の反応だけではなんともいえませんので!?」
「CDを交換する時は、看護師に必ず声をかけて!?」
「立ち合わせて、交換してください!!?」
と医師は言うと、
ふたりの看護師に少し話をしたあと、
三人に軽く会釈をし、病室から出て行ったのでした。
一緒に看護師ひとりも出て行ったのです。

医師といっしょに出て行った看護師はすぐに戻ってくると、
スポイトのようなものを使い、
優が出した涙を吸い取ったようでした。
そしてそれを、すぐに小さな試験管のような物に入れたのでした。

するとひとりの看護師が、
「先生が言ったとおり、必ずCD交換の時は声を掛けてください!?」
「すぐに、こちらにまいりますので!?」
「よろしくお願いいたします!!?」
と言い軽く会釈すると、看護師ふたりは病室から出て行ったのでした。

「よい方向に向かってくれればいいんですけど!?」
と菊枝が言うと、
「優に気持ちが通じたのかもしれません!?」
「よい方向に向かうように祈りましょう!?」
と一平が言ったのでした。

「ありがとうございます!一平さん!!?」
と言うと涙を流した菊枝でした。
「お母さま!?優に笑われてしまいますわよ!?」
「このぐらいのことで涙を流していては!!?」
と言って小百合は、涙をいっぱい溜めそう言ったのでした。

「確かに、このぐらいのことで涙を流していたら!?」
「優に笑われてしまいますね!!?」
と言って一平も涙をいっぱい溜め、上を向いたのです。
そして三人は、ハンカチで涙を拭いたのでした。
それからまた優のベッドのところにイスを持ってくると、三人は座ったのです。

優の顔を見ながら、
「夢でも見ているのかしらねえー!??」
と小百合が言うと、
「そうだね!!?」
「夢を見ているんだよー!?きっと!!?」
と一平がうれしそうに言ったのでした。

それから三人はポツリポツリと会話をしたのです。
日はすっかり落ち、
面会時間終了のBGMが流れてきたのでした。






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