PC取り込み時のノイズの確認と対策


録音の際のノイズレベルの確認と対策
アナログ音源のPC取り込みの際の独特の問題としてノイズの混入があります。

 この原因はPC・再生機器・ケーブル類のいずれかで発生します。PC側で発生する原因は様々なため確定できませんが、どうも電源とPC内部のパーツの相互干渉によるものが多いようです。これはノートPCの内部ノイズが目立って高い(下記グラフ参照)事からもわかります。

テープへのダビングよりノイズが多かったり音質が落ちたりするようではデジタル化のメリットも半減です。

『どうもノイズが増えたようだ』と聞いてわかるレベルでは対策が必要になるでしょう。どうしてもサウンドカードではノイズが混入する場合は外付けオーディオ用インターフェイスでデジタル化する事になります。

 そこで、ノイズレベルを前もって確認しておく事が必要です。ここでは「必要なソフト」として取り上げた「波形編集ソフト」と「波形測定ソフト」を利用してテストしてみました。
※外付けのUSBオーディオキャプチャによるノイズ対策の話題は別掲してありますのでご覧ください。
POINT
■まず自分の耳で聞いて比較してみる
■テープヒスやトレースノイズを録音して必ず比較する
■波形測定ソフトで確認すると目で認識できるが、あまり低デシベルのノイズに神経質にならない
■サウンドカードが無理な場合、USB接続の外付オーディオ用インターフェイスで取り込む

ノイズ混入の有無の確認方法
1.無音で録音する
前項で紹介したようにサウンドカードとテープデッキなどを接続して、ソースを再生しないでPC側で10秒〜20秒録音してみる。録音レベルは出力側の機器でちょうど良いレベルに設定する。

 このとき、すでにレベルメーターが低い位置で振れている場合は、いずれかでノイズが発生しています。この場合にはサウンドカードのラインが複数オンになっているかもしれません。ラインだけをオンにするよう設定するか他のボリュームを下げておく。

2.テープヒス・トレースノイズ部分を録音する
次にテープまたはレコードの出だしの無音部分を再生し同じ要領で録音する。レコードではトレース音やゴロも気になるかも知れません。
 テープヒスはテープの種類でも異なるので自分で取り込みを予定しているものを利用します。(以下のテープヒス波形はノイズ混入の少ないメインマシンで録音したもの)

3.「波形編集ソフト」で無音部分を増幅する
波形を無音録音のファイルとテープヒス録音のファイルを拡大して比較する。通常は直線になっている筈。これを「増幅」機能で500倍〜1000倍に増幅する。

4.再生して耳で確認する

そのあと増幅部分を再生してみる。「シャー」という高周波ノイズの場合は、振幅がある程度大きくてもテープヒスの方が大きければ大丈夫。「ブーン」というハムノイズ(低周波ノイズ)や異音がする場合は問題あり。

5.波形測定ソフトで目で確認する
さらに波形測定ソフトでそれぞれのWAVEを確認する。以下は「WaveSpectra」で測定。
テープヒス・スクラッチノイズのレベルと比べ、それ以下になっていればOK。それ以上になっていれば、すでに耳で聞こえるレベルなどで対策が必要です。

以下の波形は下の緑が無音部分のノイズレベル。上の赤の波形はピークレベル。(何倍かに増幅した時の波形を表示してある図もある)-140dbまで測定できるが緑部分のレベルが判りやすいように-120dbで表示しました。

図1-1.テープヒスのノイズレベル赤線は無増幅のピークレベル

テープヒスは平均-90db〜-100db程度。ピークは-80db(カセットテープ:MAXELL UD 1975年頃のテープ。ノイズリダクションはOFF)テストしたテープはヒスが多い方かな?

図1-2.EPレコードのスクラッチノイズレベル(赤線は無増幅のピークレベル
図1−2
スクラッチノイズは聞き取れるレベルでテープヒスより高いのでちょっと気になった。アナログディスクの宿命か(1975年頃のEPレコード)


図2メインマシンのノイズレベル(赤は1000倍増幅時
図2
メインマシンでは無音録音時に全く聞き取れるノイズは発生せず、増幅した場合聞き取れるノイズは「シャー」という高周波ノイズで汚れた音では無かった。ハムはまったく聞き取れなかった。
ノイズレベルは-130db程度。

図3.サブマシンのノイズレベル(赤は500倍増幅時
図3
サブマシンでは増幅した場合聞き取れるノイズには若干ハムが混じっていた。波形は増幅しなければ直線で全く聞き取りはできない。ノイズレベルは-110db程度。かなりテープヒスに接近している。

図4.ノートPCのノイズレベル(赤は無増幅のピークレベルを表示
図4
ノート型では無音録音時にすでにレベルメーターが振れてしまう程ノイズを拾った。無音部分は増幅しなくてもハッキリとノイズが聞き取れた。波形を見るまでもなくハムもかなり拾っていた。これではサウンドカード取り込みでは確実に音質が劣化します。

確認後の判定
結果的に判った事は、使用しているマシンによってノイズレベルは異なるという事です。ノイズレベルの最も低かったマシンのサウンドカードはSound Blaster Live! Valueでデジタル出力端子付きのモデルです。Sound Blasterも多くのシリーズがありますが、このモデルは割合ノイズが少ない設計になっているといわれています。

あえて他のマシンのパーツ構成は記さないが、現在使用しているメインマシンはショップメイド品で拡張を考えて電源に余裕のあるものにしました。他の2台は国産メーカー品です。

上記のような確認をしなくても、まず耳で聞いて気にならないレベルなら問題なしといって良いと思います。測定して○○デシベルノイズがある、といくら気にしてもしょうがないのでは?

アナログ音源の取り込みではテープヒスやトレースノイズはつきものです。元音源のノイズレベル以下であればマスキング効果により問題無いという事になります。

例えばオーディオ用インターフェイスを買ってまで取り込むほどソースが無いけど貴重なテープがくたびれてる場合を考えてみましょう。

方法として別テープへのダビングする事を考えるなら、再ダビングによるテープヒスの増加、周波数特性やDレンジなど全てが犠牲になることと比較すれば迷わずデジタル録音を選択する方が良いのではないでしょうか。

対策は?
オーディオ機器を使われている方ならノイズの原因が電源だったりコード類の質だったり接触部分の不良だったりという事は容易にわかると思います。

こうした問題はアナログ音源の取り込みだけではなくPCでの再生やCD-Rを焼く場合にも影響が出るので、あらゆる接触部分をまずチェックすることをオススメします。

ただしPCはオーディオ専用機ではないので多種の拡張カードを挿していたりモーター類を使うドライブも多いし、サウンドカードだけでなくMB自体の質、CPUの影響も当然受けるでしょうから原因の特定は難しいし、判ったから解決するとは限りません。

 以下は簡単にできるチェック方法なので確認してみたらいかがでしょうか?

原因を再生機器・ケーブル・PC本体に区分して特定する

@何も接続しないでラインの入力ボリュームを最大に上げて、サウンドカードからの録音をしてみればわかる。無接続、無音録音でノイズが出ていればPC側に問題があります。

PC電源のチェック
PCのコンセントは元から取っているか、タコ足ではないか確認して、できるだけ元のコンセントから取る。ハムが出る場合はアースする。

接続機器の取り外し
プリンタやLANケーブル、USBケーブルなどを全てはずしてみる。特にスピーカーは外してヘッドフォンでモニタする。

周囲の確認
PCの近くにノイズ発生の原因になるもの(モーター類)が無いか?

ノートPCは使わない
もし、PCを2台以上保有している方で、ノートPCの方が新しく高機能であった場合でも、アナログ音源の取り込みはデスクトップで。元々ノートPCではアナログ入力はマイク端子しかついていないものが多い事、小さな筐体に色々なパーツを搭載してノイズが発生しやすい。

APC側に問題がなければ次にテープデッキにつなげて、テープを再生せずにサウンドカードから録音をしてみる。これでノイズが発生していれば接続部分かデッキのアンプ系統の疑いがあります。

接続ピンジャックの交換
再生機器とサウンドカードを接続するピンジャックを交換してみる。あるいは挿し直してみる。これは意外に効果があります。特にサウンドカード側は接触面積が少ないので重要な録音をする場合は必ず挿し直してみることをすすめます。

再生デッキ側に問題がないか
オープンリールデッキや古いカセットデッキでは回路の経年劣化でハムが出ることがあります。

A上記@Aで問題がなければ次に磁気面以外の部分(リーダーテープ部分など)を再生してサウンドカードから録音をしてみる。これでノイズが発生していれば再生ヘッドとアンプ部分の疑いがあります。

アースなど対策をしてもハムや高周波ノイズが聞き取れる場合はPC取り込みでは無く直接再生してもわかるはず。カセットデッキは新しい機種に変える、オープンではメンテナンスが可能であれば修理に出すなどの対策が必要。

オーディオ用インターフェイスとサウンドカード
上記を確認や対策をしてもPC側が原因でノイズが耳で確認できるレベルで低減しない方、大量のアナログソースのPCデジタル化を考えている方は外付けオーディオ用インターフェイスを使うのも手でしょう。

これらの機器は結構高いので、それならサウンドカードをアップグレードすれば?という考えも出てくるでしょう。この場合にはノイズ低減効果はサウンドカードより外付けのデジタル変換機器。音楽再生も主にPCだという向きはサウンドカードの高級品と考えたがどうでしょうか?

USBオーディオキャプチャーによるノイズ対策についてはこちらの頁をご覧下さい。
どうですか?ノイズが気にならないレベルで取り込みできたでしょうか?
テスト録音で問題なければ本録音をしてみましょう。すでにうまく取り込みできた方はファイル編集をご覧下さい。

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■機器の接続とデジタル変換  ■サウンドファイルの編集
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