デジタルメディア関連 アナログ音源再生計画
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録音ソフトにより異なる入力レベルメータの表示

この記事はPart2「PCの入力レベルの設定と録音」についての補足内容です。



テープ録音とデジタル録音のレベルメータの違いを認識する
Part2「PCの入力レベルの設定」ではPCのレベルメータは『ピークレベルが赤に一瞬入るか入らないかくらい』と記載しましたが、録音ソフトによってレベルの表示方法が異なる場合があるので、補足として取り上げます。

PC録音ソフトのレベルメータは、いずれもカセットデッキの録音レベルメータに似た外観になっています。中でもレベルメータの色分け表示は録音ソフトの入力設定にとって非常に重要な部分です。

実際は、ピークレベルの設定に関してカセットデッキと異なる工夫がしてあるソフトが多いのですが、中にはカセットデッキと全く同じ設定にしてある場合もあります。
自分が普段使用しているソフトのピークレベルが、本来の出力に対してどのように異なるのか、それとも同じなのかの確認は必ず行ってください。

以下にカセットデッキとPC録音ソフトのピークレベルの色分けの差異について取り上げてみました。

テープ録音(カセットデッキ)のレベルメータの表示
[画像1]のようにカセットデッキのレベルメータは2色〜3色に色分けされているか、モノトーンの場合でも下記の「0db」表示が必ずあります。
 
 この場合のレベル表示は黄と赤の境が0db、赤のピークが+6db程度まで表示されています。細かく音量のdb数字が表記されているものもあります。もちろん古いアナログメータの録音機でも必ず「0db」表示だけはあります。(無くても0dbを超えた部分は赤で表記されている)

[画像1]カセットデッキのレベルメータの表示
黄色部分が無くても必ず0dbの位置は表示されています。

 音量は0dbが飽和点でこれを超えると「一応」歪むからこれ以下のレベルで録音しなさいという意味で赤色になっています。

ところが、アナログ録音時代では0dbを超えると歪むというのは遥か昔の録音機器の話※1で現在では誰もテープ録音で0dbを超えるとすぐ歪むなどと思っている方はいないでしょう。
 むしろ、いかに高い入力レベルで歪ませずダイナミックレンジを稼ぐかが録音テクニックのひとつとして模索されてきたのです。ノーマルカセットでもFMエアチェック程度なら赤のレベル一杯までメータが触れても歪みを感じることは無いと思います。

※1 1960年代半ば位までの録音機ではオープンでも0db以下で歪んでいる録音がありました。恐らく現代で言えば緑の範囲の設定で歪まないレベルだったのかも知れません。マイクの質が悪かった部分も要因としては考えられるが。。。

PC録音ソフトの場合のレベルメータの表示の違い
上記のアナログカセットデッキのレベルメータと同じ外観を持ってきた録音ソフトではどうでしょうか?

デジタル録音では音の大きさを数値に置き換えて分割し16bitといったビットレートで表します。最大音〜最小音までを有限の階調で表現しなくてはならないためピークが0dbに設定されています。
 アナログ音の「あいまいさ」にくらべ「厳密」さが要求されるわけですから0dbを超えれば必ず歪みます。一瞬の超過は耳で聞き分けられませんが厳密には歪んでいます。

そこで考えられたのが、同じ外観のメータを利用しても最大ピークが0dbで収まるようなメータの表示方法です。
[画像2]のメータの上におおよそのレベルを表示してありますが多くの録音ソフトではこのような設定になっている筈です。


[画像2]EasyCD4.0 Spindoctorのレベルメータの表示
※黄色部分の音量設定はソフトによって異なる場合があるので一応の目安

このような設定にしておけば、今までカセットで録音していた方が同じレベル設定の感覚で録音できる訳です。Part2「PCの入力レベルの設定」で『ピークレベルが赤に一瞬入るか入らないかくらい』のレベルは上記のように表示された録音ソフトを使う場合の設定です。

こうした目に見えない工夫には大変感心したのですが、ソフトによっては必ずしもこうした設定になっていない場合があるので注意が必要です。

カセットと同じ音量表示の録音ソフトもある
[画像3]はEasyCD5 Spindoctorの入力レベルメータです。
このソフトでは黄色と赤の境が0dbに設定されています。
すなわち[画像1]のカセットのメータと全く同じ仕様です。したがってレベルが「赤」に入るとオーバーレベルで歪みます。

[画像3]EasyCD5 Spindoctorのレベルメータの表示

このタイプの録音ソフトでは『ときどき黄色にピークが入る程度』にレベルを設定しないとだめです。同じソフトでもバージョンの違いにより、このように設定が異なる場合もあります。
 
もうひとつEasyCDや下記のWinCDRなど焼きソフトに付属するアナログ録音ソフトにはレベル表示が色分けされているだけで実際の音量表示が無いのが気になります。
 オマケ?機能として捉えられているからでしょうが、専用のオーディオキャプチャ機器の付属ソフトでは○○dbといった表示があるものが多いのに残念です。

どちらが設定しやすいか?
ピークレベルを0dbに置き換えたメータとカセットと同一のレベルをそのままデジタル表示したメータと、どちらが使いやすいかは好みや意見が分かれるでしょう。

私はそのままの表示より、ピークを0dbにしたメータを支持します。若い時代をアナログ録音で過ごした世代には初めてのデジタル録音でも違和感がないからです。特に現在でもカセット録音もするし、FMなどから直接HDに録音もするという方には、こちらの方が設定しやすいと思います。この表示を最初に考えた人はエライ(^o^)

生まれた時からCDを聴いてきた世代では、若干考えが異なるかも知れない。現代のJ-POPは0dbを超えるレンジがCDに収められているから、多少のピークオーバーも気にしない?
 むしろハイレベルで歪ませないような「究極の」レベル設定にチャレンジする方もおられるでしょうが、我々の利用する市販の録音ソフトではヤハリ限界があると思います。

メータ表示はストロークが長いほど良い

問題は表示設定以上にメータのストロークです。EasyCD5 Spindoctorのレベルメータのようにあまりにもストロークが短いと、適正な設定をするのが非常に難しい。

[画像4]WinCDR 7.0のアナログ録音用レベルメータ
WinCDRでも3段階の色表示になっていますが赤のピーク部分が0dbに設定されています。
このソフトはストロークが長くレベル設定がしやすいメーターです。横向きのメータが多い中でL・Rをはっきり認識できるのは使いやすさを感じます。
 EasyCD4Spindoctorのレベルメータも長いが表示がモノラルというのはいただけません。

0dbをどの位置に表示するかは、そのソフトを使い慣れれば結局同じですがメータのストロークはある程度長いソフトの方が失敗が少なくレンジを大きくとった録音ができると思います。

(注)画像表示でPC録音ソフトに0dbなどの音量表示がしてあるのは管理人が書き加えたもので実際の表示はありませんのでご注意下さい(録音ソフトにより0dbなど実際の表示があるものもある)。アナログのデッキには表記されているものがほとんどです。

レベルメータは過信しない事
音量レベルの調整はメータを見て行うのは当然の事ですが、このようなデジタルメータのレベルは過信しないように。
 『ピークが赤に一瞬入るか入らないかくらい』というのも、本当に赤のレベルにずっと入っていてもピーク部分が0dbに設定されているソフトでは理論的には歪みは無いのですが、その中で0dbを超える音量部分もマイク録音等では必ずあるからです。

 この場合の反応は一般のPC録音ソフトでは追い切れません。表示上はピーク以下に収まっているようでも実際は、オーバーレベルの録音をしている場合も多い。波形編集ソフトで確認すればわかります。

カセットデッキのメータ表示も同じようにオーバーレベルの録音で表示しきれませんが、テープや録音機器がアナログの場合は許容範囲が広いので、メータが振り切れても歪まない場合もあるのです。

そのため同じ感覚といってもデジタルでは「やや控えめ」のレベルが良い結果を生みます。60〜80年代のアナログメディアを復刻する場合は、同じ時代のCD復刻盤のレベルが参考になると思います。音量比較はPop-Musicの過大音量録音の本当の理由?
に補足掲載してありますので併せて参照ください。



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C)Fukutaro 2002.7