石の攻め方
我々アマチュアは攻めているときは実に楽しい。 つまらない石を攻めたり、取ったりしている間に、すっかり外勢を張られたり、攻めにはやって気が ついたら、地が足りなくなったりした経験はあるでしょう。 相手の石を攻めてつらい生きを強いたり、強力な厚みを作ったり、他のところで地を作って勝利に 繋がる攻めをしてみませんか。 |
第1型 黒番 解説 いま白△とアテたところです。アタリになった黒は上が13子、下が一子です。どちらを助けたらいいでしょうか。 |
第2型 黒番 解説 この局面に限って攻めの目標を考えてください。右を攻めるか、左を攻めるか。 一番厳しい攻めはaですか、それともbでしょうか。 |
第3型 黒番 解説 カカリっ放しになっている白△をどう攻めるかという問題ですが、白△自体はそう重い石ではありません。 |
第4型 黒番 解説 左の白△一子を攻めるのですが、やはり重くすることが第1です。 |
第5型 黒番 解説 上辺白の三子を攻める急所はどこでしょうか? |
第6型 黒番 解説 ツケノビ定石で、良く出てくる形です。黒の一間トビはいのところでも良いのです。この白をどう攻めたらいいでしょうか? 多くの人はろと直接ノゾき白はの時にとコスむか、にと高く一杯にツメる手を考えるでしょう。それは右側星下に白△がない時です。白△がある時はどう攻めたらいいでしょうか? |
白△の三子を攻めたい。
周囲の状況を良く見て、
どこから臨みますか?
1 攻めの目標
まず最初に、どんな石を攻めるべきかを考えなくてはなりません。もちろん相手の石をどんどん攻め、取れる石は皆取ってしまうのがいいに決まっています。しかし、石にはそれぞれ価値があり、取ってもつまらないことがあります。どの石を攻めるかのか、目標を決めるのが第一歩です。 |
1−1図 失敗 黒1とツグ、たしかに二十数目の大きな手です。が、正解ではありません。白2と抜かれると、右下からの大石がいっぺんに治まり、黒1が単なるヨセだけの手になっています。 |
1−2図 正解 問題へ 断固黒1とノビ出し、大石にぬらいを定めるのがよさそうです。白2と抜かれても黒3となれば決定的です。 |
2−1図 失敗 黒1のハサミに白2と右方を安定させるのが正しい態度でしょう。黒3と白△を取りにきても三々に振り替わる余地があります。白12までとなって、なるほど黒は白△を取ることができました。しかし、その結果は左右をすっかり白に打ちまわされ、コリ形になっているのがわかります。白の立場からいえば、白△は取られても、それほどこたえない軽い石です。 |
2−2図 正解 黒1と低く迫っていくのが正解です。白2と一方を安定させれば、黒3とトビ、もう白三子は動けない形です。2−1図と比べてください。ハサまれても振り替わる余地があったのに、本図ではそれができません。 |
2−3図 大利 黒1に白としては逃げざるを得ませんが、、白2と押せば、黒3のハネがきつい。次いで白4のトビなら、黒5と切って、白は打つ手に窮します。白aなら勿論黒bです。 |
2−4図 俗 といって白2とコスミツけてから、4、6と出るのは、いかにも愚形でつらい。封鎖をまぬがれたにすぎません。白4で単に6とコスむのは、黒aとハネて白の形をくずします。 |
2−5図 両睨み 問題へ 結局、白2とコスムくらいのものでしょう。しかしこれに対しても、黒3とツケ、白4には黒5の棒ツギが強い態度です。a、bの断点を両睨みにして白には適切な受けがありません。 |
石を攻める場合は、まず第一に振り替わりの訊かない重い石を目標に、第ニに最強の手段をえらぶのが、基本の心構えです。 |
3−1図 失敗 黒1とハサんでも、白2と隅に振り替わられて、攻めの効果はあがっていません。白2で3とツケるサバキもあります。攻めの効果があがらなかったのは、軽い石を攻めようとしたからで、黒1と攻める前に、白を重くさせる工夫が必要です。 |
3−2図 正解 問題 黒1とコスミツけ、白2と交換してから、黒3とハサむのがよく、これが攻めの常道です。白2とタタせたのは、重くさせるためで、これによって攻めの目標がはっきりするばかりでなく、白に振り替わりやさばきの余地を与えないのが自慢です。といって白2を手抜きして黒2とハネられるのもつらい限りです。 |
4−1図 生き形 黒1といっぱいにツメる。たしかにきびしそうですが、やや物足りません。白3と三々に振り替わることも可能ですし、白2とツケてさばくのも容易です。黒3から白6までとなっては、白が生き形であるのに、中央の黒は厚みが十分に働いていません。 |
4−2図 攻めの効果 問題へ 黒1とコスミツけ、白2をさそって、3と打つのが正解です。黒1によって三々への振り替わりを断たれ、3によって外部への進出を妨げられれば、必然的に白4と活路を求めるよりありません。黒5と手厚く備えて十分です。白6から10と生きようとしても、まだ黒aと置くいじめも残るし、一方、黒bの切りも生じてきました。攻めの効果は歴然としています。 |
重い石にねらいをつける、次に軽い石を重くさせるのが攻めの第一目標です。 |
2 攻めの急所
一発で相手を浮き足立たせる急所があります。攻める目標が決まったら、その欠陥を発見し、急所を衝くことが大切です。 |
5−1図 正解 このような時黒いとケイマに守る人をみかけますが、こういう際は黒1と白の一間トビをノゾき、白2とツイだ時黒3とオクのが筋で、このように打たれますと白は困ります。もし図のように白8までとなれば、そこで黒はいとケイマして自己の弱点を補いながら白に迫るのが良いのです。黒1とノゾいた時白ろと受ければ黒2とつき抜いて白の1目を切断し右方面に地域が出来るので、最初にいと受けるより働いたことになります。また、局面によっては、6の一路左にツケます。 なおいと受けてから1とノゾくのでは白にろと受けられ、いのケイマと重複するので1の効果は少なくなります。 |
5−2図 黒2疑問 白1とオサエた時黒2とソイツケるのは、白3と下がられ、以下白9とワタる手を残して悪い。また黒4は白に5と頭を叩かれて黒が非常に窮屈になります。なぜかというと、黒6白7黒8の時白9と下をキメツケられ、黒10とツグと白11とワタラれて黒七目がダメヅマリとなって悪く、なお10のツギでいと白の1目をキッているのでは、白に10とキラれて下に眼形ができ、その時黒ろとゲタにカケてトリキッておかなくてはならないことになり、黒はいたずらに白の間にもぐり込んだだけで、結局白に完全な眼形を与え、同時に右方を薄くして不利です。 |
5−3図 黒ダメヅマリ 白1までとなっては黒はダメヅマリで悪いと述べましたが、もしその時黒2とキレば、白はどう打ったら良いでしょうか?すなわち黒2の時白はすかさず3と黒の五目をアテて重くし、黒4とツイだ時白は5とオシ、黒6の時白7の一間カケで全部の黒がトレることになります。つまり黒が8と逃げ出しますと白15までとなり、黒はツグことが出来ません。白3とすぐアテを打つのは一見急がないように思う方があるかも知れませんが、左方の戦闘が忙しくなってきてからでは、3とアテた時黒は必ずツグとはきまりませんから、先に利かしておきます。 |
5−4図 黒2とハネても悪い 白1とオシた時黒2とハネると8までの変化となり、白にいとポン抜きされて悪い。黒もし8を打たずにろに1目抜くと白に8と打たれてこの黒はトラレてしまいます。 |
5−5図 黒の作戦成功 黒1とナラんだ時白2と遮れば、黒は3とタケフにならび、この形は黒に無駄がなく有力な手段で、次に白4とオセば黒5と一間にトンで白を両断して攻め、白の地域を荒らすと同時に右方と左方の地域がかたまるので、黒の作戦が成功したことになります。 |
5−6図 黒2疑問 白1とオサえた時黒2と下へツケるのは働きのあるように見えますが、この手は白5までとなって白が強くなります。なお白3と出た時黒4の手で5のところに出るのは、とたんに白に4と出られて黒は打つ手に困ってしまいます。 |
5−7図 正解の変化図 黒1と横にならんだ時白2と出るのは、黒に一本3とでられてから5とワタラれ、これも最初ノゾいた黒の1目がキリ手となって白地を荒らされ、黒地が大きくなって白がつらくなります。 黒5とワタる手で6の所へキリを入れられて白ろ黒5とワタった時、白いとシチョウで抱えることが出来ない場合は大損で、白は2と打つ手が無いことになりますが、逆にシチョウが良い時、黒6とキリ、白にいと抱えられるのは、たとえシチョウの当たりが打てても黒損です。 |
5−8図 黒重い 問題へ 白1とツイだ時黒2とすぐに遮ればどうなるでしょうか。これは白3目の壁に後からぶっつかるわけで、少々重くなります。勿論、その時白も打ち方が悪いと、黒のシマリの二目が近くにあるのでヒドイ目にあう可能性もあります。図のように白9のケイマまでとなり、白の方は地をあらされてもいささかの痛痒も感じられません。それは白も3のサガリができたことによっていのスベリ、ろの打ち込みなどの手段が生じてきたのと、黒が白のワタリを妨げる意味ではとオサエれば白にが加わって直ちにろと打ち込んで連絡が出来る上、6、8と封鎖された白石は軽く、まだ種々の味を残しています。黒は得をしていません。 |
6−1図 正解 黒1とキリをみながらノゾくのが最も有力な手です。つまり2のところへノゾくのは白に4とツガれて、キリにいった一目が壁にぶっつかった姿となって、自分の石が逆に苦しくなります。本図のように1と打つと白4にツガれても、黒の一目はいつまでも白の根拠を脅かしている形であって軽いのです。すなわち白2とカケツギの時黒3とノビ、白4とツイだ時黒5とハネるのが正しい手順です。(この5の手で7へケイマするのはゆるみで悪い。)白8とオシた時黒は9に曲がり、白10にノビれば11とケイマして白を攻めながら模様を張るのがよい打ち方です。また黒9と曲がる手でいとケイマするのもありますが、しかしこの手は白から9と出られ、黒ろとオサエた時白はとキル手が成立しないことを条件とします。なお、黒いのケイマは、次に10のところへツケて白の眼形を奪うねらいです。 |
6−2図 正解変化図 黒3とノビコンだ時、白4とオサエるのは黒に5とキラれ、隅の二目をトラれるばかりか、外側のバラバラになって白は苦しい結果となります。すなわち黒が9、11とオシて白の石を重くした後13とトルのが手順で、白は両方の石を攻められ、これではたまりません。白10の手でいへ一間トベば、黒は単にろとトルのがよいのです。 |
6−3図 正解変化図 白に1とハネラれた時は黒は2と曲がって打つのが良いのです。いと一間にトブのが筋のようですが、この際は図のように2と打ち、以下16までの変化は黒が優勢です。 |
6−4図 正解変化図 白が4とオサエた時、黒は単に5とキリ白の二目を確保しても隅の地が大きくて得です。なお、白6とツグ手でいの方をツゲば、黒は一本ろのアテを打ち白6とツガせてから7と二目を取るのが手順です。 |
6−5図 正解変化図 黒1とかたくツゲば黒2とケイマし、白3とオセば黒4白5の時黒6と星を占めて一連の壁との間に模様が出来ることになります。そしてなお白の攻めが残っています。 |
6−6図 黒1について 問題へ 白△に石がある時は、黒1と打つのはぬるいのです。白2とスベられ、以下白8までと白に地の利を得られ、一方黒の中央の厚みは白△の一目があるためその働きを牽制されて役立つことが少ないのです。 |
3 ボウシ
ボウシにも、相手の模様を軽く消す場合のボウシや、シンを止めて攻めるボウシがありますが、勿論ここでは後者を指します。 弱石の退路を断って攻める手法としてきびしく、まずほとんどの場合、ボウシによる攻めを考えてよいほど、多く用いられます。 |
7−1図 無策 黒1のトピでは攻めになっていません。白2で楽をさせるだけです。 |
7−2図 五十歩百歩 黒1のトビも五十歩百歩です。周囲の黒が強いのに、これでは迫り方が甘い感じです。 |
7−3図 方向が逆 黒1のケイマも今ひとつです。ここに力を入れても上辺には白△が待ち構えています。白2、4と打たれて、攻めの効果も疑問です。 |
7−4図 正解 右辺は圧倒的に黒の勢力が強いところです。ならば弱気は禁物です。白の二間開きを徹底的に攻める、ぐらいの気持ちで臨むところです。厳しさという点なら、黒1のボウシが一番でしょう。 |
7−5図 最強の攻め 白1のコスミ出しには黒2のケイマです。ここでは弱い石から黒2とケイマすると覚えてください。白3、5から7と進出を図りますが・・・・・。 |
7−6図 モタレ攻め あわてず騒がず黒1、3と包むように攻めるのがいい。ついで黒5と白6の愚形を余儀なくし、黒7、9とモタれます。攻めに調子が出てきた感じがするでしょう。黒11まで、ぴったり止めることが出来ました。 |
7−7図 仕上げはハネツギ 白1と進出を図ってきても、黒はあわてません。黒2から4と戻るのが冷静な態度です。自分の傷をなくし、じっくり攻めようというわけです。白5、7とトンでも白地は一目も増えていません。それを横目に黒8、10のハネツギがフィニッシュです。隅から下辺を地にして、黒優勢は明らかです。 |
7−8図 黒厚い 黒▲のハネに白1とノビても苦戦に変わりはありません。黒2から4とオスのが厳しいのです。白5には黒6と「自分の用心」が大切です。白7とつながった時、黒8から10と白を閉じ込めます。白は大変苦しく、黒はますます厚くなりました。 |
7−9図 進出の筋 黒1、3には白4の出をひとつ打って、6から10までと進出するほうがスマートです。実戦でよく見かける手筋です。ただし、これでも白よしとはいきません。続いて、 |
7−10図 黒優勢 黒は1、3から5と戻るのが冷静な一着です。攻め始めるとひたすら先へ先へと進みたくなりますが、ときには自陣に手を戻す余裕を持つことも大切です。今度黒6とオサれてはたまりません。かといって白6、8も黒に一歩一歩先をいかれて不愉快です。黒の優勢は明らかです。 |
7−11図 これも筋 黒▲のボウシに白1と打つのは面白い筋です。黒2なら白3、5と一歩ずつ先行しようというわけです。 |
7−12図 白好調 前図を嫌って黒2、4と力を入れても白5以下を決めてから11と下辺に踏み込まれて、紛らわしいことになります。 |
7−13図 面白し筋 白1の手筋には黒も手筋で応酬します。黒2、4が面白い筋です。白5とダメをつながらせ、黒6、8とハネツグのがうまい。おなじみのフィニッシュですが、この場合は黒11のサシ込みから切断する手をみているのが自慢です。白11を余儀なくさせ、黒は先手で隅を地にした理屈です。 |
7−14図 黒地が多い 黒▲のボウシに白1なら黒2と戻る要領です。白3、7と逃げ惑う間に黒8、10と隅を地にして、これまた黒優勢です。 |