電車待ちに時間を費やして日光に着いたのはお昼も大分過ぎた頃。日光と言えば湯葉とようかんだと下鉢石の店で湯葉が4つも入ったソバを注文した。湯葉なんて薄くてフワフワしていると思ったら、カチカチに巻いてあって思いがけないボリュームである。かみさんはいささか持て余し気味だった。  東照宮など日光の社寺は世界遺産に登録されているので、境内は外国からの観光客で賑わっている。問題は世界遺産と称するに足る景観を常時保てるかということ。この前来た時修理中だった神庫はきれいになっていたが、陽明門や他の主立った建物の修復はまだまだだ。特に唐門の回廊部分の剥落が目立つ。日光は湿気の多い所である。豪華絢爛の色彩美で観光客を圧倒するには、相当な覚悟で維持管理に努めなければなるまい。なにしろ家光が「費用お構いなし」と言って建てた神社なのだ。維持費がかさむのは当然である。
(左)湯葉巻きの入ったソバ (中)修復された神庫 (右)眠猫/td>
 国宝の猫が惰眠を貪る入口から家康の眠る墓所までは結構な数の石段が続く。玉垣に囲まれた中央に建つ家康の墓は高さ5メートル、ちょっと見には青銅の釣り鐘の上にお堂の屋根を乗せたような格好だ。祖父家康を崇敬し併せて諸大名の財力削減を実践した家光の墓にも敬意を表して、今夜の宿神橋小西に入った。  宿はゆったり空いていて、和の代温泉から引いたという湯を独り占めしてのんびり浸かる。牛の陶板焼きをメインに質量十分なごちそうが並んで、湯葉カチカチ巻きがまだ胃の腑にこたえているかみさんを口惜しがらせた。
(左)墓所への道 (中)家康墓所 (右)家光墓所