アクビの呼吸は理想的と書きましたが、楽器演奏とは明らかに異なるポイントが吸気から呼気に移る段階にあります。管楽器を吹く場合には吸気が終わって呼気に移る段階で、楽器を吹奏するために必要な全ての筋肉群が待機状態になっていなければならない。しかしそこに注意を向けると、自然なアクビからどんどん離れていってしまうというジレンマに陥ります。
吸気から呼気の間にいったん息を止めるべきか否かについては議論のあるところです。私の経験からいうと吸息後、息を止めることなく呼気に移るやり方が上手く出来るようになると、非常にスムーズなアーティキュレーションが出来るようになります。音の頭に付帯物がつきにくく、出だしからフリーブローイングな良い音が出しやすくなります。
金管楽器奏者には、息を一度止める人が多いのですが(アンブッシャーセットのためか?)、歌手は歌い始めには息を止めていません。しかし休符で始まるパッセージなどの場合には止めずに吹くことは極めて難しいことから、一度止めて呼気に移るというテクニックも絶対に必要なものです。
吸い終わったときに楽器演奏ためのブレスコントロールが出来る体勢を作りながらも自然な深い呼吸から大きく逸脱しないために、たとえば
など自分の吸気からセットアップまでの段階確認チェックリストを作り、演奏がうまくいかないときにチェックすることが出来るようにしてゆくのです。
他にも瞬間的なブレスの場合にはスタカート、フォルテシモ、アクセントで「マッ!」という発音そのままの形で、発声する変わりに吸気するなんてティップスもあります。これも基本はアクビから外していない。
つまり、「すべての吸息は呼息のために」ということですね。私も同意見です。また、細かなテクニックをいくつもご紹介いただき、ありがとうございました。
「呼吸の折り返し点」「止息」などは、呼吸法にとってたいへん重要なポイントですので、後日あらためてふれたいと思います。
吐くときお腹の筋肉は意識して使います。でも、金管楽器演奏時に意識して使うお腹の部分は、実は呼吸上大切な丹田ではなく、皆が指差す「おへそより上」です。この部分は、非常に誤解されていることが多い部分で、日本の指導者の9割以上が今でも「ヘソの下」指導をしているはずです。
関西Y氏との議論で、上腹部を膨らませる呼吸法を「不完全な腹式呼吸」であると申し上げた私としては、このあたりは、つっこんだ議論をしたいところです。ひとまず、私の考え方を以下に整理しておきます(高岡英夫氏の運動科学理論を参考にしています)。
こういう観点からTK氏の
> 楽器演奏時に意識して使うお腹の部分は、実は呼吸上
> 大切な丹田ではなく、皆が指差す「おへそより上」
という表現を拝見すると、少し曖昧に感じられます。実際に働く「お腹の部分」は、たしかに丹田そのものではなくてまわりの筋肉なのですが、「演奏時に意識して使う」のは、やっぱり丹田だと思うからです。
TK氏のおっしゃる「おへそより上」を含みつつ、丹田を取り囲む上・下・前・後すべての筋肉が連係しながら呼気を作り出すというのが、よりマクロな認識ではないでしょうか。