これがボビー・シュー(註2)の教える「ヨーガ完全呼吸 Yoga Complete Breath」です。ボビーはこの呼吸法を、メイナード・ファーガソン(註3)から習ったそうです。メイナードは、インドでヨーガ行者から完全呼吸を学び、それを管楽器演奏用にアレンジしたとか。
この呼吸法の第4ステップでは、へこませた腹を「アイソメトリックに」ロックする。つまり表面的な動きはないけれども、ギュッと固定するということです。
「この呼吸法を、1日に60回ずつ練習し、最低でも21日間(3週間)続けること。はじめは6つのステップに分けて、鏡で動きを確認しながら練習する。だんだんステップ間のすき間をなくし、なめらかな一連の動きとする。
最初のうちはゆっくりと行ない、徐々にスピードを上げていく」と、ボビーは指導します。
本来のヨーガでいう「完全呼吸」とは、
の3つの部分を全部使ってする呼吸のこと。名前は「完全呼吸」と大げさですが、ヨーガの呼吸法の中では基本的なものです。もっとも、基本的というのは一番易しいということではなくて、一番最初に練習するべきという意味ではありますが。
ヨーガ完全呼吸のやり方は以下の通り(成瀬雅春著「呼吸法の極意」を参考にしました)。
ファーガソン呼吸を腹部の動きに着目して表現すると、「ふく・へこ・へこーへこ」となります(前三段は吸息で後段が呼息。止息時の状態は省略)。第1ステップ以外は、ほとんど腹をへこませた状態をキープするのが特徴です。
これに対して本来のヨーガ完全呼吸は、「ふく・ふく・ふくーへこ」である(前三段が吸息で後段が呼息。止息時は省略)。吸息の間じゅう、ずっと腹はふくらんだ状態で、呼息にともなって次第にへこんでいきます。
これが何を意味するかは、あとでまとめて分析するとして、次回はクラウド・ゴードンの「チェストアップ」について観察しましょう。
(註1)アイソメトリックス(isometrics)
静的筋力トレーニングのこと。動かないものを動かそうとする抵抗運動を一定時間持続させ、それを繰り返すことで筋力を発達させる。腕ずもう、綱ひきなどもその一種。特殊な道具を用いずにどこでもだれにでも簡単にできる。【戻る】
(註2)ボビー・シュー(Bobby Shew)
トシコ・タバキン・ビッグバンドやバディ・リッチ楽団で活躍した名トランペット奏者。【戻る】
(註3)メイナード・ファーガソン(Maynard Ferguson)
「ロッキーのテーマ」「バードランド」などで有名なスター・トランペット奏者。【戻る】