かけがえのないあなた

永山進牧師

　秋葉原無差別殺傷事件から早や3ケ月｡何ともやるせない気持ちはいまだに残る｡関連の記事を読むと容疑者の孤独感､敗北感などが伺われる｡そして更に驚かされるのは､彼のやったことに対し､賞賛する若者とおぼしき声が沢山インターネットに寄せられていることだ｡ここまで現代人の心はすさみきっているのかと､唖然とさせられ､勝ち組負け組社会の歪みを実感させられる｡

　そんな中､盲目のテノール歌手として知られる新垣勉さんが語っていた言葉を読んだ｡
　「学校でも社会でも､みんな競争しているよね｡他人を押しのけても自分が一番になるんだって｡でも､人生で大切な事は､ナンバーワンになることではなく､自分がオンリーワンなのだと知ることなんだ‥」｡

　彼は米軍兵士を父に日本の女性を母に､沖縄で生まれた｡生後間もなく助産婦のミスで失明｡少年時代は自分を捨てた父母への憎しみを抱き､時には自殺を思いつつ孤独と絶望感のなかに過ごした｡

　そんな彼を救ったのは､キリスト教会のキャンプでの牧師との出会いであった｡その牧師を遣わし､自分がかけがいのない存在として神に生かされていることに気づいた時､親を呪い他人を呪っていた白々に終止符が打たれた｡

　「君はオンリーワン｡世界中でたった一人の存在なんだ｡他人と比赦して生きるんじゃなくて､与えられた君の人生を生きるんだ｣と､彼は少年たちに語る｡

　♪イエスがいるから明日は怖くない
イエスがいるから恐れは消え
イエスがいるから人生は素晴らしい♪

　かつて､父母を捜し出して殺してしまおうとさえ思った増しみの日々｡その暗闇の中に光となって訪れたイエス･キリストの愛を､新垣さんは今も熱い思いを込めて歌い続けている｡

　聖書に「わたしの目には､あなたは高価で尊い｡わたしはあなたを愛している」(イザヤ43章4節)とある｡これは天地万物を創造された神が､私達をありのままで､心底愛してくだきっていることを告げている｡あなたが優秀で性格も良く､可愛いく人気があるから愛する､と言うのではない｡むしろ自分が惨めに思えるような存在であっても､｢わたしの目こはあなたは高価で尊い」、大切な存在なのだと､神様はあなたにおっしゃっている｡