3.設計 

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■分類
 作文工程の分析の次の段階は設計である.

 

 決めた主題に含まれる話題をたくさん洗い出す.数が多いので似たものを集めて分類する.人間が把握しやすい項目数には限界があるからである.

 

 分類の仕方には代案がある.

 

 

3.1 粗筋の原案
 似た話題,近くで説明する方がよい話題をまとめる.

 

乗務員

  パイロット

機体

  操縦桿

  計器

  座席

  座席数

  主翼

  尾翼

  調理室

  コックピット 

推進力

  エンジン

  航続距離

  燃料

  燃費

収益関係

  市場競争

  機体価格

  料金

  乗客数

システム

  ブレーキ

  脚

  車輪

  タイヤ

  舵

作業

  空港

  燃料補給

  整備

  テイクオフ

  航行

  ジェット気流

  飛行時間

  高度

  速度

  着陸

  事故 

 

一つの分類の話題数が七つを超えたら,分類を二つに分割する.

乗務員

  パイロット

  操縦桿

  計器

機体

  座席

  座席数

  主翼

  尾翼

  調理室

  コックピット

推進力

  エンジン

  航続距離

  燃料

  燃費

収益関係

  市場競争

  機体価格

  料金

  乗客数

航行

  ジェット気流

  飛行時間

  高度

  速度

システム

  ブレーキ

  脚

  車輪

  タイヤ

  舵

作業

  空港

  燃料補給

  整備

  テイクオフ

  着陸

  事故 

3.2 重み付け
 次に文章の量を見積もって話題数を調整する.また名前を洗練する.

 一つの話題は5行ぐらいの文段になる.

30行×6ページ=180行 36話題
40行×7ページ=280行 56話題
50行×8ページ=400行 80話題
60行×8ページ=480行 96話題
本の例 30行×160ページ=4800行 960話題

  「旅客機の燃費」の例は文書基準が6ページならぎりぎりであり,書き方によっては超過する可能性がある.(以下は前回の課題説明と重複)

  ◎:山場になる分類名および話題.山場は一つだけであること.
  ○:採用することに決めた話題
  △:当落線上の話題.執筆しながら様子を見て採用するかどうかを決める.
  ×:この段階で削ることに決める話題

 

 教科書の「旅客機の費用」の例では,費用に注目しているので,燃料消費量という話題に山場の◎印を付ける.

操縦手段○

  操縦士○

  操縦桿○

  計器○

機体○

  座席△

  座席数○

  主翼○

  尾翼△

  調理室○

  操縦室

推進力◎

  エンジン○

  航続距離○

  燃料○

  燃料消費量

経営

  市場競争×

  機体価格○

  料金○

  乗客数○

航行○

  ジェット気流○

  飛行時間○

  高度○

  速度○

内部機構△

  ブレーキ△

  脚×

  車輪△

  タイヤ○

  舵△

作業○

  空港○

  燃料補給○

  整備△

  離陸

  着陸○

  事故×

3.3 粗筋の完成
 完成した粗筋を次に示す.ページ割り付けのイメージにしているのは本質ではない.

1.概要

  分野と現状の到達点

  結論と目的

2.機体○

  操縦室○

  調理室○

  タイヤ○

  ブレーキ△

4.推進力◎

  エンジン○

  燃料○

  燃料消費量◎

  航続距離○

  ジェット気流○

  飛行時間○

7.作業○

  空港○

  燃料補給○

  離陸○

  着陸○

  座席△

  座席数○

  主翼○

  尾翼△

3.内部機構△

  舵△

  車輪△

5.操縦手段○

  計器○

  操縦桿○

  操縦士○

6.航行○

  速度○

  高度○

  整備△

8.経営○

  機体価格○

  乗客数△

  料金○

9.おわりに

  結論

 完成した粗筋では,話題を削除し,序章と終章を加え,順序を洗練した.

 文章の最初には序章を置く.序章の見出しは序,概要などである.

 序章などは前置きである.前置きが長いと読者は飽きてしまう.

 文章の最後には終章を置く.終章の見出しは「まとめ」「おわりに」などである.

 終章は後置きである.後置きとしての終章を長くすると,その分だけ本論に使える話題数が犠牲になる.

 関係の深い分野や話題は隣同士にする.

 分類や話題の間には順序関係がないことが多い.

3.4 粗筋の標準
 粗筋にはいくつかの種類がある.

 

 

実務作文(テクニカルライティング)の概要

 この資料は学校作文(アカデミックライティング)を主題にしている.実務作文(テクニカルライティング)について少し触れよう.テクニカルというのはアカデミックに対して実務的なという意味,あるいはマネジリアルに対して第一線という意味である.理工系作文とか執筆者が専門技法を使うという意味ではない.

(1)学校教科書作文

 日本の学校教科書の多くは知識の前提関係に従って設計されている。粗筋標準である国の指導要領がそうなっているのと、教育学部の教育設計法も作業や態度の設計を除外しているからだ.学校教科書の内容はアカデミックだが、その作成作業は実務作文の一種である.

 

(2)作業手引書・指示書の作文 

 産業界・役所・病院などの作業手引書は作業の階層構造と順序構造に沿って設計する.原則として一つの任務を文章の一つの話題・文段として表現する.作業の最小のステップを箇条書きの補足文として表現する.

 指示書(instructions)は任務の手順を1枚程度の紙に書いたものである.ホテルの客室の電話使用法や洗浄式便器使用法を見たことがあるだろう.指示書を書くことがテクニカルライティングの代表である.

 

 作業手引書の設計には,教育システム設計法ISDを適用する.

 作文の最初の分析段階には,作業の体系やスキルの体系を分析する.この例の給仕スキル標準は米国スキル標準局のものである.日本の一流食堂や外国では給仕はできるだけ無言で行動する.

(3)実務教科書の設計

 産業界・役所・病院・職業学校の実務教科書は,作業>スキル>道具・知識・態度の優先順序で設計する.

 

 実務教科書の設計にも教育システム設計法を適用する.作業手引書と違うのはスキルも指導する点である.逆に作業手引書で間に合う部分は教育はしない.

 米国海軍人間能率センター(https://www.spider.hpc.navy.mil/)は教育システム設計の手引書を公開している.

(4)取扱説明書の作文

 取扱説明書はだれもが手にとる実務文章である.商品の機能指向構造になっている機能仕様書を入力にして,利用者の作業指向構造へ設計し直した文章が取扱説明書である.

 

 取扱説明書の作文技法はほかの実務作文と大差ない.しかし,いくつかの特徴がある.例えば標準体系粗筋は入門書,操作説明書,解説書などの分冊の仕方まで,ノウハウとして蓄積したものである.

(5)広告とパンフレットの作成

 広告やパンフレットは作文と美術とを合わせた作品である.市場取引における販売工程・購買工程に合わせて造形(デザイン)する.設計という言葉より造形と言う方が合う.

 

 認知部は商品と初めて出会う部分であり,RFP(提案書要求)の気持ちに瞬間的に働きかける情報にする.理解部は提案書を読むことに相当する.認知部,理解部,判断部,契約部と,派手から地味へ,大きい表現から小さい表現へと変えていく.全体としては派手だが,色や飾りや特殊記号を抑制する.文面も文段構造を持つような複雑なのは落第である.

(6)ウエブの運用

 ウエブページは自在なリンクを持ち,更新された最新版を参照しやすい文章である.直販をしていない製造業のウエブページの運用の例を示す.毎日のように更新するので設計というより運用という言葉が合う.販売機能を含むと相当に違う形になる.

 

 企業ウエブは株式市場,商品・役務市場,取引市場(外注・素材購買),労働市場の利害関係者へ取引条件を提示する.例えば,ニュースは投資家や就職検討者が見る.投資家にとってはニュースの更新が頻繁な方がよい.閲覧されるのを待つだけなので広告とは違う.ただし,閲覧の常連にとっては広告の効果もある.

 消費者は製造業ウエブではなく販売店ウエブを見る.販売店ウエブがメーカのパンフレットを利用しやすいように,リンク用にロゴを複製する許可を明示したりする.

3.5 目次
 目次は章および節の項番,見出し,先頭ページ番号を,ページの順に並べた一覧である.

 論文や報告書はページ数が少ないので目次を書かないのが普通である.項番を付けないことも多い.

 目次と粗筋とは似ているが,いくつかの点が違う.粗筋の方が詳しい.

 粗筋を完成すると同時に目次も完成したことになる.

 アウトラインプロセッサは,目次・粗筋・本文の間の変換を自動的に処理する.

君島浩のISD研究室.2000.10.7. 2005.7.31.[ 戻る ] [ ホーム ] [ 上へ ] [ 進む ]