2.分析  

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調査と作文
 作文は主に調査の成果を文章にする作業である.調査は作文工程には含まれないが,関係が深いので概要を述べる.
 調査・研究の参考にする既存の文章を文献と言う.

 

2.1 調査
 調査には情報の取得の観点で次のような種類がある.
  観察:    既存の実態を見る方式.生態観察,発掘調査,街頭観察など.
  体験:    自分で発案・作成・論証実験などをする方式.発明はこれに属する.
  文献調査: 既存の文章を読む方式.観察・体験の補助手段にすることもある.
 なお考古学者シュリーマンがトロイア遺跡を発見するのに参考にしたのは,長年伝承されてきたホメーロスの歌である.
 以下,特許調査などで行われている複数の文献の分析方法のいくつかを紹介する.これらは論文の表題部などの役割を理解するのに役立ち,作文の時にそれらの役割を理解しつつ執筆することになる.

 第一に似た文献をまとめて分類する方法がある.

 

 複数の文献を人間や団体で分類する方法もある.

 

 複数の文献を出版年で分類する方法がある.複数の文献を時期順に流れ図で表す方法もある.

 

 参考文献一覧をもとに参照の関係を流れ図で表す方法がある.矢印は参照の方向を示す.
    

 一つの文献が複数の文献に参考にされると,順序関係は分流になる.

 

 文章に含めるべき要素をまとめると,表題,日付,著者,所属,抄録,キーワード,本文,参考文献一覧などである.

 作文すると文献の全体集合の中へ自分が作った文章を追加することになる.人類の歴史が蓄積した膨大な文献の集合の中から,限られた人生の中で勉強や娯楽のために何を読むか読まないか,そして何を書いて残すかという選択問題がある.
 

作文帳(ポートフォリオ)
 作文を進める時には,生産物である設計書や原稿を紙バインダ,ビニールフォルダなどにはさむとよい.
2.2 文書標準
 作文を始める時には,文書量と文法を確かめる.
 同じ日本語の文章でも書き方は一通りではない.
  ・内閣告示(全国の標準)

    ・各官庁の標準

    ・各学会の標準(論文投稿規程)

    ・各業界の標準(日本工業規格など)

      ・各メーカの標準

      ・各出版社の標準

      ・各サービス会社の標準

 量の基準は出版社,学会の事務局,報告書課題を出す教官などから指定される.
 作文を始める時に確かめることの第一は量の基準である.

 文法上の指定がある場合もある.
 ・表題や抄録に英語も添えるかどうか.
 ・ 常体「である」調か敬体「です」調か.
 ・句点はマルかピリオドか.読点はテンかコンマか.
 ・章見出しは「1.〜」か「1 〜」か「第1章 〜」か.
 ・日付は西暦か和暦かなどである.
 このほかに用語や仮名遣いの標準がある.これは言葉の数が多いので大変である.
 ・用語の例としては保守と保全,インタフェースとインターフェイスがある.
 ・仮名遣いの例には「全て」と「すべて」,「行う」と「行なう」がある.
 指定のない事項については,新聞を参考にするとよい.

 文書標準に慣れることは作文の効率にも関係する.
2.3 複製権
作文と市場
 文章には書く側と読む側,売る側と買う側の二つの面がある.
 文章を複製して多くの人へ配るのは,費用や手間の面で個人では難しい.
 市販の本の流通経路は次の図のとおりである.

 

 本が売れると売上の10%程度が印税として出版社から著者へ支払われる.

■法律と契約
 学会も出版社も簡単には文章を複製してくれない.
 著作権と複製権とはしばしば混同される.
 著作権法と複製権契約とは少し性質が違う.

■作文と倫理
 作文することは義務の場合もあるし,倫理による場合もある.
 学会員は積極的に論文を発表することが倫理綱領で求められる.

 倫理とは人生の経路を自発的に選ぶための手引になる論理である.倫理はマナーよりもはるかに広い.人生は一度限りの演劇に例えられる.自分や社会にとって有意義な経路を意識して選ぶ。

生存する(Live) エネルギー,衣食住

愛する(Love)  人,社会,地球

学ぶ(Learn)   触る,観る,聴く  → ここに調査が関係する

残す(Leave a legacy) 産む,財産,作品  → ここに作文が関係する

2.4 話題の分析
■分析と設計
 作文工程の最初の段階は分析である.
 設計とは粗筋を決めることである.
 粗筋は一度に完成するのではなく,次のように改訂していく.
  分析の結果:話題をおおざっぱに洗い出した状態.分類まですることもある.
  分類した粗筋:分析の結果を粗筋形式にして重み付けした状態
  完成した粗筋:形式の調整と量の調整をした状態.執筆を開始できる.
  完成文章の粗筋:執筆が完了して,完成した原稿に合わせて直した状態.
 洗い出しや改訂を簡単にするために,粗筋を作るのに次のような手段を使う.
  ・話題ごとの表現 カード,付せん紙
  ・粗筋全体の表現 白板,A4判程度の紙,模造紙,手帳の白紙ページ
  ・電子道具 アウトラインプロセッサ,テキストエディタ,電子手帳
          スプレッドシート(集合論図を描く)

付箋紙を用いた教材設計(シアトルのベルビューカレッジ)

■話題の洗い出し
 既に資料や頭の中にある素材を書き出す.

  自分のページ数と行数を選ぶ.30行〜60行,6〜8ページ.

 ページ数=話題数×5÷行数

 序章・終章の話題が3

 話題数を計算しなさい 36〜96話題

 それより1割ぐらい多めに洗い出す.後で削ることがあるため余裕を持たせる.

 例: 「旅客機の費用」という主題の調査結果の話題の洗い出し

      テイクオフ ブレーキ エンジン 操縦士 空港 市場競争 高度 計器
   航続距離 座席 着陸 車輪 主翼 尾翼 燃料 座席数 舵
   ジェット気流 速度 調理室 コクピット 機体価格 整備 事故

 分析と設計の作業には半日以上の時間をかける.
 最初の洗い出しが行き詰まったら次のような問いかけで洗い出しを徹底する.

当たり前のことを洗い出す.     例: テイクオフ,着陸 → 航行

専門的に調べた山場は何か.  例: 燃費

既存の話題を見て連想する.   例: 座席数 → 乗客数

部分や上位概念を連想する. 例: 車輪 → タイヤ(部分),脚(上位)

知識から行動へと連想する.  例: 燃料 → 燃料補給

失敗から上手さへ連想する.    例: 事故 → 操縦桿

うんちくから実用情報へ.        例: ジェット気流 → 飛行時間

前置きから本論を連想する.     例: 市場競争 → 料金

 前置きばかり洗い出してはいけない.結論・成果を多く拾いだす。

 

 話題を2階層の分類体系にして,集合論図または粗筋形式で表す.手段はいくつかある.

 ・粗筋形式  ワードプロセッサのアウトライン機能で作成して印刷.

          発表ソフトウエアのアウトライン機能で作成して印刷.

           テキストエディタや電子メールソフトウエアで自分で字下げして作成.

 ・集合論図  スプレッドシートの表を方眼ブロック紙代わりに使える.

          発表ソフトウエアで図形を描いてもよい.手書きでもよい.

                       図形ソフトウエアでもよい.

 分類が済んだら話題および分類に重みを付けて,話題名や分類名の右脇に次のような記号を付ける.

  ◎: 山場は一つにすること.複数の分類の中の一つの分類とその分類の中の一つの話題だけ◎にする.

  ○: 採用する話題

  △: 執筆しながら採用・不採用を決める.量の調整に使う.

  ×: 分析の段階で不採用に決めた話題.

君島浩のISD研究室.2000.9.29, 2004.3.6. [ 戻る ] [ ホーム ] [ 上へ ] [ 進む ]