1.導入 

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 作文とは文章を作成する行動である.作文技法は効果的な文章を効率的に作成する技法の集合である.

 

 作文や読書の目的は費用対効果が良いことである.この目的は分かりやすいと言うこととは少し違う.例えば,分かりやすくするために新聞記事を長くしたり,水準を低くしたりすれば,記者にとっても読者にとっても効率や費用対効果が落ちる.

  作文の中核技法は話題を絞り込むこと,ストーリーの呪縛(じゅばく)から逃れて,単純な分類構造にすることである.芸術的な物語でさえも時間の順序を変えることは定石である.例えば,作曲家ベートーベンを主題にした映画(「不滅の恋 ベートーベン」だと思う)はベートーベンが逝去した時点から始まる.そして関係者の思い出話しの形で,しばしば時間の逆の順に進む.例えば,交響曲第9番の作曲のシーンに,昔を思い出すショットが入るなどである.映画の2時間という枠に合わせて話題を絞り込むことも必要である.

 

 このように映画と学校作文とに関係があるということは,作文を取り巻く大きな視点を与えてくれる.日本の伝達技巧の教育は,読む,書く,話す,聞くという主題を切り離し,実用技法と芸術技法とを切り離してきた.芸術の中でさえも,美術は芸術系大学で創作方法を教え,演劇は学校ではなく私塾や劇団で教える.文学は一般の大学で卒業創作がないというばらばらの状態である.

 作文は多彩な伝達手段のごく一部であり,しかもほかの手段といろいろな関係がある.哲学者のアリストテレスは対話を重んじた.しかも,アリストテレスは詩学(詩作学)も研究した.古代ギリシャ演劇には法律を教育するという役割も与えられていた.現在の外国の大学では実用作文,芸術作文,演劇などが教育されている.この話題に関する参考文献の林達夫・久野収「思想のドラマトゥルギー」(平凡社)は,二人の哲学者の対談の記録である.この文献は行き当たりばったりで話題を選ぶという会話の見本である.

フォートワース市の野外演劇

 私は地球標準の教育設計の定石を使ってこの資料を設計したり,再設計したりしてきた.生物の教科書が生物学の研究の歴史などに触れない淡々とした内容であるように,この資料も淡々とした内容である.歴史に触れないということは,話題を絞り込むことであり,時間の呪縛から離れることでもある.

カリフォルニア州ノバト高校で作品集を見せる英語の先生

君島浩のISD研究室.2000.9.24, 2002.6.1.[ ホーム ] [ 上へ ] [ 進む ]