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■米国連邦政府の人材開発研究
1997年に米国連邦政府は「学習を通して成果を得る(Getting Results Through Learning)」という人材開発手引書を発行した。主な著者の所属は国防総省、海軍省、運輸省、人事局、農業省である。その中で次のような文を引用している。
ほとんど例外なく、連邦政府のほとんどの訓練は自発性にまかせ、個人的なものであり、〜省庁の主要な目標や使命との関係がほとんど見出せない。 省庁は彼らがどのぐらいの期間(短期か長期か)訓練すべきか、だれが資源の配分を得るべきか(初任者か上級者か)、職員はどのぐらいの頻度で追加の教育を必要とするか(年に1回かもっとか)、経歴の中間での教育に価値があるかどうか、はっきりさせていない。〜 職員も大統領レベルも訓練はあまりにもしばしば場当たり的であり、個人が思い立つものである。〜 (1993年の報告書) |
連邦政府の従業員はいろいろな理由で、必ずしも実務のニーズに関係しない訓練へ送り込まれる。 多くの従業員は彼らの仕事を遂行するのに必要な訓練を受けていないと報告している。 資金の制約はこれらの問題の一部でしかない。もっと深刻なのは訓練ニーズ査定手続きがしばしば不適切であることが発見されていること、及び訓練は組織の戦略計画にめったにリンクしていないことである。 人材開発専門家の中には組織のニーズに合う管理を支える技能を持っていない者がいる。 |
要するに人材開発担当の人材の能率(業績)が良くないことが根本問題なのである。紺屋の白袴である。物を製造したり会計の事務をしたりする場合、人材の能率が悪ければ悪影響が露顕しやすい。しかし、人材を開発する人材の能率不足は露顕しにくいから、客観的な批評が必要である。
■高橋秀俊の「人間の欠点」
物理学者・情報科学者の高橋秀俊は、機械やコンピュータの操作性設計の指針として、利用者である人間の欠点を八つ列挙した。
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これはこのまま人材開発すべき従業員にも当てはまる。一流の学校を卒業した一流の組織の職員だからといって、自発的な教育の受講や放任型OJTに頼った成長は当てにならない。人材開発専門家は自分自身のことだと考えるべきだ。論理的な根拠に基づいて、根気よく人材開発を担当しているだろうか。
■流行を追わず、職務を追求しなさい
3年ごとに人材開発制度やキャッチフレーズを変えることよりも、当たり前のことを愚直に遂行しなさい。人材開発の職務分掌、規則、規定、規程、手引書、教科書などに基づいて、当たり前の仕事を納得のいくように遂行しよう。それらの資料がないなら原案を作って試行する。あるのに前述の連邦政府のような問題が起きているなら、なぜ役に立っていないのか分析して改定する。多くの場合は規則類に前向きな作業行動が定義されていないことが問題である。
人材開発課の職務分掌は例えば次のようなものである。
教育規則の制定・改定 |
既存の規則を尊重・継承する。既存の規則をよく読んで修行する。 規則を適切に制定・改定する。 規則と実態の差異を把握し、直すべき方を直す。 |
全社の全課程の教育分析 |
各現場の実務と全社の戦略計画から、職員の職務に沿うニーズを把握する。 課程一覧を教育規則に記載・改定するのは人材開発課が一手に引き受ける。一番大切。 人材開発課・教育課・経営企画室・現場が課程を決める分析方法論を維持・改善する。 |
全社の教育評価 |
全社の人材の継続的な成績向上を目的として、各教育課や現場から成績を収集する。 評価して現場実務や戦略計画のニーズとずれていないか、結果として確認する。 各教育課に成績向上のための目標設定、試験、教育改善に取り組ませる。 |
全社の教育事務 |
前項に関わる事務に加えて、教育の資源管理の事務をする。 人事課、教育課、現場の職務分掌の境界に注意しつつ、連携を改善する。 |
■教育の計画・企画という言葉に注意
課程や課目の
課程・課目の企画と課目実施日程(計画)は区別必要
開発計画の本質は開発作業の計画なので「作業計画」と呼ぶ。
program(番組、式次第)は計画ではなくて、順序構造の上位階層の定義であると考える。
課程(カリキュラム)とは計画ではなくて、課目群の構造の上位階層を定義した結果である。
企画とは時間的な工程段階ではなくて、静的な定義を側面から新設・改定する臨時の行為と考える。
PDCAが主役ではなく、課程群・課目群の静的な定義が主役。人材開発課は計画という行為ではなく、課程群・課目群の全社構造に責任を持つ。
学校教育の法規の読破の難しさ
文部科学大臣を含める壮大な分業制度なので、全体工程が分かりにくい。
本来、学習指導要領は課目ごとの細部規程のはずであり、課目群の単位の教育課程とは階層が違う。種々の理由でこうしたのであろうが、ISDや教育工程という作業の流れを想像しにくい。
教育課程や学習指導要領や教科書を制定・改定する作業に関する条項は、文部科学省組織規則や教育課程審議会令などの中にあるが、作業行動を想像しにくい。
法規類は行動の断片を定義している。「教職入門」課目などで、一連の前向き教育関係者の行動を解説するのが望ましい。
人材開発課自身が見本を示す
規則体系の一員として人材開発の規則類も充実させる
全社規則、部門規程、細部手引書
作業・行動を規則・規程・手引で明文化
人材開発の職務・業務・職級ごとに課程・課目を開設
例:初級教育評価課程、幹部教育分析課程
職級ごと(4年に1回程度)に教育受講を義務付ける
課員全員の教育修了成績・学協会活動履歴を把握
人材開発課とほかの部門との違い
全部門との人事異動により部長・課長級を主体にする。
人材開発の規則類・課程・課目・教材は模範的であること。
本社機構の中で学協会活動、他社交流を率先垂範。
本社機構の配員の方式
生え抜き型
類似の部門間で異動
新入社員から生え抜き
等級と地位は合わせる
特徴
○初級の作業は若手に
○異動時の転換教育不要
○専攻者を活用しやすい
×現場のことを理解困難
×若手は現場交渉が困難
異動型
全部門から均等に異動
管理職主体で構成する
現場のスタッフ部門も上位等級者を配置する
特徴
○現場のことを理解容易
○管理職ポスト不足軽減
○現場管理職と対等交渉
×異動時の転換教育大変
×旧世代の専攻者が担当
本社の位置付けに関する規則を定める
課程とその課目構成・時間数は社長が定める教育規則に規定
したがって、課程・課目構成の新設・改定は社長決裁
人材開発課又は課程・課目を担当する部門教育課が起案
人材開発課・受講部門の合意を得て、人材開発課名で稟議手続
次の事項は部長が定める部の規程に規定する。部長承認事項
課目内の指導項目(シラバス)の構成
課程の中の部長裁量時間の課目
教育規則で規定しない教育(「講習会」と称する)
長期間又は重要な課程の入学式・卒業式は社長か代理人が挨拶
他の課程の始業式・修業式は人事部長か代理人が挨拶
各部が主催する講習会は部長又は教育課長が挨拶
法律・規則・規定・規程・手引
野球規則は、禁則ではなく、野球というものを白紙の状態から定義したものである。
法規類の本質は、禁則ではなく、基本的な行動の定義である。
法律作文の上手下手が表れる。
法規で扱われない行為は正式の行為とは認められない。
登記しなければ会社として存在を認められない。
野球規則がなければ野球というものは存在しないのと同じ。
人材開発及び教育の行動も根拠となる法規類を説明できなければならない。