本資料「教育委員会制度の構造的教育行政への改革」で提案する結論は、次のとおりである。
第1段階の施策 実施報告書の承認 |
■提案1−1 県教育委員会の議案として、年度ごとに教育課程実施報告書を承認する。 ■提案1−2 県教育委員会の議案として、年度ごとに職員研修実施報告書を承認する。 ■提案1−3 県教育委員会の議案として、年度ごとに人事報告書を承認する。 ■提案1−4 市教育委員会の議案として、年度ごとの教育課程実施報告書を承認する。 |
第2段階の施策 規則の制定 |
■提案2−1 県教育委員会が教育課程標準を制定し、毎年議案として取り上げる。 ■提案2−2 市教育委員会が標準指導要領を制定し、毎年議案として取り上げる。 ■提案2−3 県教育委員会が教職員研修規則を制定し、毎年議案として取り上げる。 ■提案2−4 県教育委員会が教員免許規則を制定し、毎年議案として取り上げる。 |
第3段階の施策 規則・細則・研修科目の見直し |
■提案3−1 市教育委員会による指導要領改善講習会 ■提案3−2 市教育委員会による指導要領事例集の発行 |
第4段階の施策 根本的な規則の改正 |
■提案4−1 教育委員会を教育庁役員会へ変更 ■提案4−2 市立学校と県立学校の区別をやめて公立学校に統一する |
図で表すと次のような構造的教育行政に改善される。これは教育体系開発(instructional systems development;ISD)という国際標準の枠組に沿っている。分析(analyze)、設計(design)、開発(develop)、実施(implement)、評価(evaluate)の英語の頭文字をとって、ADDIE(アディー)プロセスともいう。
現行 |
今後
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1.1 第1段階の施策 実施報告書の承認
経営責任とは、規則を定めることと実施監督をすることである。現在の教育委員会制度に欠けているのは、実施監督の部分である。この部分の制度を強化しても、若干の負担が増えるだけで、大きな変化ではない。働きかける前に、眺めるのである。下記の改善をすることにより、実施監督責任を果たすとともに、統治の重点を教育課程や学習指導へ移すべきだ。また、県教育委員会と市教育委員会の職務の重複を避ける。
■提案1−1 県教育委員会の議案として、年度ごとに教育課程実施報告書を承認する。
教育課程を定めることは教育委員会の最高の職務であり、それが実際に執行されたことを確認するのである。30分程度で議決できるように簡潔な報告書をまとめる作業が事務局に必要になるが、それ以外は現状に何も変化を与えないので、始めやすいはずである。当面は教育課程に多様性のある高等学校に限ってもよい。
■提案1−2 県教育委員会の議案として、年度ごとに職員研修実施報告書を承認する。
教育研修は教育委員会の重要な職務であり、それが実際に執行されたことを確認するのである。職員教育課程ごとの受講人数やできれば成績を簡潔な報告書にまとめる。
■提案1−3 県教育委員会の議案として、年度ごとに人事報告書を承認する。
年度末の人事実態の統計を短時間で説明・承認できるように要約する。ある職級への滞留年数も何らかの形で明らかにする。それを元にして、人事部ではそれがノンキャリア指向なのか、優秀なのに昇級を忌避しているのか、昇級したいのに実力が認められていないのかを分析する。
■提案1−4 市教育委員会の議案として、年度ごとの教育課程実施報告書を承認する。
県教育委員会と異なり、市教育委員会は生徒・児童の成績に重点を置いた報告書とする。当面は県立の少ない小学校・中学校に限ってもよい。