6.事故第4日・非構造物の設計不備か

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天井板連結のため広範囲崩落か 中央道笹子トンネル事故(共同通信、2012.12.5 05:33)

 9人が死亡、2人が重軽傷を負った山梨県の中央自動車道笹子トンネル崩落事故で、落下した天井板は鉄筋で溶接され、隣接する天井板とつながっていたことが5日、中央道を管理する中日本高速道路への取材で分かった。
 崩落は長さ約130メートルにわたって起きており、中日本高速はつながっていたことが要因となった可能性を認めている。県警は、現場検証に同行した専門家らの意見を聴き、押収資料を分析するなどして崩落が広範囲にわたった原因を調べる。

ようやく連鎖崩落の原因が分かった。引き金は劣化だが、連鎖落下の主な原因が設計漏れであることが濃厚だ。前述のスポーツニッポンの記事と比べて、中日本高速道路の証言を詳しく載せていないのもバランスがよい。重要なのは警察の捜査や国土交通省の情報だからである。

天井板同士を接続する設計にしていなければ、被害自動車は3台ではなくて1台で済んだはずであった。また、1台だけであれば救援作業も容易だったはずだった。

この記事は設計不備の可能性を取り上げたが、後日のどういう結論になったのかのフォロー記事が見当たらない。

ただし、溶接されていた問題は、後日の事故調査・検討委員会ではあまり議論されなかった。天井板をなしにするという結論だったからだろうが、連結しないことを設計原則として残すべきだったと思う。

■専門家は「非構造物」の「構造」に注目

◆連結構造が大事故を誘因か 笹子トンネル天井板崩落(日経コンストラクション、2012.12.7)
 中日本高速道路会社によると、中央自動車道の笹子トンネルの事故では、天井板が100m以上にわたって約270枚が崩落した。連続して崩落したのは、天井部の連結構造に起因するとみる専門家は多い
 国土交通省の「トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会」(委員長:今田徹・東京都立大学名誉教授)で配布された図面からは、天井部の構造がほぼ一体化していたことが分かる。
◆天井板や隔壁はCT鋼と連結
 上部CT鋼(カットティー。断面がT形の鋼材)は0.6m間隔に2列の接着系のアンカーで覆工コンクリートに固定。下にある隔壁や天井板を支えている。
 隔壁は上部CT鋼と下部CT鋼に締結ボルトで、天井板は下部CT鋼に径12mmのスタッドボルトでそれぞれ一体化されている。さらに長さ6mのCT鋼同士をわたすように天井板が設置してある。
 図面からは、縁切りの構造は読み取れない。1枚で1t以上ある天井板や隔壁がトンネル方向に延々と連結していたわけだ。トンネル側壁の受け台と0.6m間隔で2列に連なるアンカーボルトが、それらの連結した構造物を支持していた。
 アンカーボルトの一部でも破損すれば、それが引き金となって、周辺のアンカーが徐々に重みに耐えきれなくなり、一連の大崩落につながった可能性が考えられる。崩壊の引き金となった箇所はまだ明らかになっていない
(日経コンストラクション 真鍋政彦)

全国一般紙ではないが、専門誌が今まで述べた疑問の大半を解消してくれた。非構造物が構造物のようになっていたこと、地震被害の類似例で勧告された縁切りがあれば被害が軽減されたことなどである。

ただし、最後の文段は疑問である。静止エネルギーを意味する「重み」ではなく、速度が影響する「運動エネルギー」で引き抜かれたと考えるのが妥当だ。

「崩壊の引き金になった箇所はまだ明らかになっていない」とのことだが、後日明らかになった。

 次の図は私が描いた図である。

ボストントンネル天井落下致死事件

ポストントンネルでは、大きな天井板が一つずつ吊り具で吊られていた。数枚の天井板が落下して、GMの大きなビュイックが潰されて、助手席の婦人を殺した。非構造物同士の「縁切り」をしていたので、それ以外の自動車は潰されずに済んだ。

笹子トンネル天井落下致死事件

笹子トンネルでは、小さな天井板がきめ細かく吊り具で吊られ、隣同士が連結されていた。非構造物を構造物のようにしたのである。構造物が力学的に支えるのとは異なり、何も支える力のない非構造物同士が頼り合っていたのだ。

走行車線の車の時速80kmだとすれば、追い抜き車線を走行して脱出できたNHK甲府局の後藤記者の車は時速100kmだったと推測される。後藤記者の証言では「天井板が巨大な蛇の蛇腹がうねるように連鎖落下して、車を追い越していった」とのことである。このことから静止エネルギーとは考えることができず、速度が影響する運動エネルギーで引っ張り降ろしたと推測すべきだ。

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