■笹子トンネル崩落事故9人死亡 つり下げ式天井板全国に49本(スポーツニッポン、2012.12.4 06:00)
夜を徹した必死の救助作業も実を結ばなかった。天井板が崩落した中央自動車道笹子トンネル事故は3日、9人が遺体で見つかる大惨事に。中日本高速道路はこの日、事故の原因が老朽化にあると認めた。また国土交通省は、笹子トンネルと同じつり下げ式天井板のトンネルが全国の有料道路と国道に計49本あり、築30年以上のトンネルが359本あることを明らかにした。
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見出しは「つり下げ天井板全国に49本」となっているが、「トンネル」が抜けている。 | |
遺体や死亡という言葉では、天井板が落下したことによって不法の死に至ったという意味が通じない。 | |
後日の事故調査・検討委員会の報告では、ポルトのさびの問題はなく、コンクリート部も問題はなかった。 | |
複数の天井板同士を連結したという設計についても、だれの発言なのかを明記すべきである。設計不備の疑いがある。 | |
第5文段の県警の「〜の疑いもある」は、警察の発言を忠実に引用しているとは思えない。もっと広い疑いを持っていたのではないか。 | |
天井板が隔壁と鋼板で固定されていたことや運動エネルギーの可能性を指摘したのは鋭い。ただし、落ちたのは10枚分ではなく、約130メートル分であることが判明している。この点についての言及が欠けている。 |
■ケンセツ的視点:二次部材で人が死んだ、重い天井板崩落(ケンプラッツ、2012.12.4)
中央自動車道の笹子トンネルで天井板が落下して9人が亡くなった。土木技術者にとってこの事故は非常に重い。指摘される「老朽化」の問題に加え、天井板という二次部材(非構造部材)が「凶器」になったからだ。 ◆設計思想に問題はなかったか |
これは建設専門家のミニコミである。マスコミやマスコミに出る有名人と違って的を射ている。警察もこのような捜査方針を出して欲しい。事実報道ではなくて社説に相当するが、本稿で紹介する中で最も頼りになる文章だ。 | |
第一文段は、死亡への責任を認識し、技術者(単なる施工労働者ではないというニュアンス)の責任を認識している。 | |
財源の確保は、プロジェクト計画や日本高速道路保有・債務返済機構や行政が明らかにできた問題である。なお、米国の高速道路の多くが無料道路である理由は地価が安いからだ、と誤解されている。米国の地価が安いのは人口密度が小さいからであり、面積当たりの税収が限られるので、米国の方が道路の建設・維持の収支が楽というわけではない。 | |
連鎖崩壊の原因は、非構造部材(二次部材)への設計の配慮漏れであるということを、事故の第3日に明確に指摘している。 | |
前例のない事故と言われているが、別の建物の分野では前例がある。 | |
首都高の事例は、連鎖崩落ではない。落下事故でも死者が出るとは限らないのだ。「二次部材の安全性に結びつける議論にはならなかった」という指摘は、技術論を超えて業界の体質や価値観に問題があることを明らかにしている。 | |
見出しの「死んだ」も、死者への責任を第一義にしていることも、パラグラフの重要順にしても、全国一般紙よりも優れているぐらいの作文技術である。 | |
専門ミニコミだから的確な報道記事が書けた、と考えてよいとは思えない。一般マスコミは、警察や国土交通省の発言の引用に重点を置き、記者の考えを書くのを抑制することによって、専門ミニコミに対抗できる記事を書けるはずではないか。専門家でない記者は、素人考えで原因や責任者を絞り込むのではなく、原因の幅を広げて取材すべきである。 |
■第1回トンネル天井の落下事故に関する調査・検討委員会の公表資料(2012.12.4)
議事要旨 1)トンネルの概要 ・天井板、隔壁板・吊金具などの構造に関する議論がなされた |
国交省では、事故現場からの通報書だけ「崩落事故」と表現していたが、それ以外の文書では「天井板(の)落下」と統一している。トンネル本体が崩れたような崩落よりも、天井板落下の方が適切な表現だと思う。 | |
「建設時の天井部の設計の確認が必要との指摘がなされた」という表現は、議論がなされたというまでには至っていない意味である。この指摘によって、後日の会議で設計時の資料が提出され、単に設計を理解するだけではなく、設計・施工の不備が議論されることになった。重要な指摘だった。 |