3.建物天井落下事故:非構造物の設計へ

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■笹子トンネル事件と似た天井板落下致死事件は記憶に新しい

震災で死傷者、東京・九段会館を実況見分 警視庁(朝日新聞、2011.6.5)

 東日本大震災で「九段会館」(東京都千代田区)大ホールの天井が崩落し28人が死傷した事故で、警視庁は5日、現場の実況見分を始めた。天井の構造や崩落の原因を詳しく調べるとともに、関係者の聴取や関係資料を分析し、施設側の安全管理に問題がなかったか業務上過失致死傷の疑いもあるとみて捜査を進める。 大ホールでは当時、東京観光専門学校の卒業式が開かれていた。崩落した天井の下敷きになるなどし、ともに同校非常勤講師の金子いづみさん(当時51)と小林桂子さん(同50)が死亡、学生ら26人が重軽傷を負った。 5日は、捜査1課や鑑識課、麹町署の捜査員が専門家とともに、散乱するがれきの大きさや重さを量るなど、震災後初めて本格的に現場で捜査した。足場が組み上がり次第、天井の構造も詳しく調べるという。 2人の遺族らは九段会館側を業務上過失致死傷の疑いで告訴している。

米国なら「死傷させられた」「死亡させられた」「重軽傷を負わされた」と因果関係を表現する。

東日本大震災でこの事故が起きた時に、道路や鉄道のトンネルの当事者は何らかの分析をしなかったのだろうか。

■建築防災協会や地方自治体が設計漏れを報告

◆強度計算が不十分」、ミューザ川崎の天井崩落(ケンプラッツ、2011.9.27)

 川崎市は8月31日、東日本大震災で天井の大半が崩落したミューザ川崎シンフォニーホールについて、日本建築防災協会に委託した被害調査の中間報告を発表した。報告書では「天井下地を構成する部材や接合部について、必要十分な強度計算が行われたとは考えられない」と指摘した。 

 「天井下地を構成する部材」は天井板とともに非構造物である。

■学会や専門誌が非構造物への設計配慮を報告

建築学会/天井落下事故防止で調査中間報告/「人命保護」確保し「機能維持」(日刊建設工業新聞、2012.8.9) 

 日本建築学会は8日、非構造材(天井)の安全性評価・落下事故防止に関する特別調査の中間報告を発表した。「人命保護」を確保した上で、必要に応じて「機能維持」を実現することを基本概念に設定。安全性の評価法や落下防止機構、準構造(天井に要求される機能を構造材で実現する)の概念を提示し、設計や改修、復旧に関する方針を示した。〜年内にもガイドラインをまとめる見通しだ。
 〜安全性評価法については、材質と落下高さによって客観的に評価する方法を確立するよう要請。万が一落下が生じても、利用者レベルに天井材が至らないようにする「フェイルセーフ」の機構・方法を開発することも必要だとした。仕上げ材の延長でなく、構造として設計・施工し機能を実現する準構造についても提案している。川口委員長は「仕上げ材は『硬く・強く・重く』から『軽く・柔らかく』に転換するべきだ」と問題提起した上で、今後の課題として建築家の啓もう、発注者と設計者・施工者の合意形成などを挙げた。
 〜多くの建物で構造は無傷でありながら、非構造材に深刻な被害が生じたことが判明。〜天井落下の発生位置は、天井面の端部が59%、中央部が46%、設備機器との取り合い部が34%。〜建築本体と設備との間の調整不足が大きな原因になっていることが分かった。

 笹子トンネル天井板落下事故の約4か月前に、天井板落下事故防止の中間報告が出ていたわけである。

天頂部の吊り具の劣化よりも、壁と天井板の運動エネルギーが問題であること。

非構造物と構造物を区別して考えると共に、改めて両者の関係も設計者が考えるべきこと。

壁と非構造物との調整不足が大問題だが、それに次いで中央部の非構造物同士の調整不足も問題である。

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