4.竜巻のライフサイクル

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 竜巻は、寒気団と暖気団がそれぞれ別の場所で生れ、暖気団の場所で遭遇し、それから竜巻の形になって大気を短時間で混合させるというライフクサイクルを構成する。よく知られている竜巻は、最後の混交期か、せいぜい遭遇期の部分までだが、その前の生育期を知ることは、被災しやすい場所を知ったり、防災対策を立てたりするのに大切である。この区分や用語は私の独自のものであり、定説ではない。

 

生育ステージ

遭遇ステージ

混交ステージ

寒帯・亜寒帯・山岳で大気冷却

寒気が偏西風などによって移動

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暖気団が成長しつつ待ち受ける

寒気の噴流などでの下降 ↓

偏西風などによって移動 →

暖気が渦流になって上昇 ↑

温帯の平坦地が日照で暖まる

竜巻のライフライクルを台風に照らして理解する
 竜巻のライフサイクルはあまり究明されていないが、台風のライフサイクルを参考にしながら、理解してみよう。

熱帯収束帯〜熱帯低気圧〜台風〜熱帯低気圧というライフサイクルが究明済みである。

台風が海で生れて発達するという、海洋学との関係が究明済みである。

台風は上陸後に衰えるなど、陸地学との関係が究明済みである。

海は凹凸や質の違いが少ないので、シミュレーションや一般則化がしやすい。

 竜巻と台風は、次のように正反対の部分を持つ対称的な現象である。

台風は低圧の暖気団が移動して、高圧の寒気団が待ち受ける場所へ移動する。

    台風は長い日数にわたって、広い範囲で被害を与えるマクロ気象である。

竜巻は高圧の寒気団が移動して、低圧の暖気団が待ち受ける場所へ移動する。

    竜巻は短い時間で、狭い範囲で、局所的に被害を与えるミクロ気象である。

第1期 生育ステージ

 生育ステージ(breeding stages)の現象は、はるか遠くの二つの場所のそれぞれの現象である。

台風の生育ステージ

竜巻の生育ステージ

赤道ステージ: 夏に鉛直方向の日射を受けて、海面近くに低圧の暖気団が生れる。大気が上下に対流するが、自転の頂点なので移動できずにひたすら成長する。この現象の地域を熱帯収束帯という。

温帯低地ステージ: 春の延長方向の日射を受けて、広大な低地に低圧の暖気団が生れる。地勢や気象の異なる周辺から遠いので、対流できずにひたすら成長する。日本は夏や秋にも似た状況が起きやすい。

温帯ステージ: 斜めの日射を受けるのと、陸地は夜に冷めやすいことにより、相対的には高圧の寒気地域である。

寒帯・亜寒帯・高地ステージ: 年中、斜めの日射や標高により、春には冬の名残りの、秋には冬の先触れの、高圧の寒気団が生れる。

第2期 遭遇ステージ
 遭遇ステージ(encounter srage)の時期は、温帯ステージ側は第1期の続きである。もう一方が移動してその場所に到達する段階である。

台風の遭遇ステージ

竜巻の遭遇ステージ

熱帯〜温帯ステージ: 何らかの契機で、熱帯収束帯からはみ出した低圧の暖気団が、地球の自転の性質によって、北又は南へ移動しながら、熱帯低気圧になって反時計回りに回転しながら成長し、台風になり、温帯の海洋や陸地に風雨をもたらす。

↓↓↓到達↓↓↓

温帯ステージ: 斜めの日射を受けるのと、陸地は夜に冷めやすいことにより、相対的には高圧の低音地域である。

温帯低地ステージ: 広大な低地で生れた低圧の暖気団が、周辺と対流することができないまま、その場でひたすら成長し続ける。

↑↑↑到達↑↑↑

寒帯・亜寒帯・高地〜温帯低地ステージ: 高圧の寒気団が近くの低気圧を探す。偏西風によって移動しつつ、低気圧の反時計回りの回転に振り回されるように、寒気団が急速に移動して温帯低地ステージへ入る。

 竜巻が発生しやすい状態は「大気が不安定な状態」と表現される。これは激しく荒れているような状態ではない。重量挙げの選手がバーベルを挙げて静止している状態のイメージである。

第3期 混交ステージ

 混交ステージ(intermixture stage)という段階は、気圧や温度が異なる大気団が、混じり合って均質になる段階である。

台風の混交ステージ 竜巻の混交ステージ

 温帯の陸地へ上陸した台風は、高圧の寒気団と大気を交換する。熱を発散する過程で、渦巻きの横風や雨により、市街地や農地へ被害を与える。熱帯の海に比べて温帯の陸地は熱や水分が少ない。台風は放熱するだけになり、進むにつれて力の弱い熱帯低気圧へ戻る。

 台風の渦巻きの直径は800kmと巨大である。遭遇ステージの時に台風と認識されてから、熱帯低気圧へ戻るまでの寿命は5日間程度である。 

 上空の高圧の寒気団は、地表近くの低圧の暖気団と、力学的作用によって気圧や温度の差を解消しようとする。地表から渦巻きが上昇して雲まで達する。上空の寒気団からの下降気流は時には噴流(ダウンバースト)になる。

 竜巻は主に東へ進行する。渦巻きの直径は500m程度である。竜巻の寿命は12分程度であるが、米国の竜巻通りは低圧暖気団の面積が広いので、極めて寿命の長い竜巻もある。 

 

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